ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するか

Studio INTERPLAY

ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するか

ブランドプロミスとは、そのブランドが相手に対して何を守るかを、相手に向けて言った約束です。会社紹介や商品の説明、注文や契約の前の案内に書かれます。

社内の決めごとと違うのは、守られたかを確かめるのが相手だという点です。破れたときは外から見え、破れたことを相手が知っています。だから、どこまで具体に言うかは、守る側の都合より、確かめる相手の側から決めます。

この記事は、コンセプトやステートメントとの違いを先に整理し、そのあとで、相手が確かめられる約束とは何か、どこまで具体に言うか、守れない場面の数え方、守れなかったときに相手に何を伝えるか、そして約束をどこに置き、誰が持つかまでを扱います。

ブランドプロミスとは何か

プロミスは、相手がいてはじめて成り立つ約束です。

英語の brand promise をそのまま使った言葉で、ブランドが相手に対して守ることを指します。相手は、買う人、使う人、取引先です。相手を決めないまま書くと、自社の目標を並べた文になります。

何を守るかは、ブランドによって違います。届く速さ、品質の基準、困ったときの対応、値段の考え方。どれを約束にするかで、そのブランドが選ばれる理由が変わります。

言葉にしていなくても、相手は何かを期待して選んでいます。前に頼んだときの経験、人から聞いた話、サイトの印象。期待は、会社が何も言わなくても相手の側にできあがります。

プロミスを言葉にすると、その期待のうち、何を引き受けるかを会社の側から示せます。引き受けないことまで書く必要はありませんが、引き受けると書いたことは、相手が照らす基準になります。

掲げられているプロミスのなかには、抽象的な言葉で書かれたものもあります。大きな方向を示す言葉として置かれていて、それ自体が間違いというわけではありません。

私たちは、プロミスを、守られたかを相手が確かめられる形で言った約束として扱っています。呼び方や範囲に定まった決まりはなく、同じものを別の名前で呼ぶ会社もあります。この記事では、この意味で使います。

コンセプトやステートメントとの違い

プロミスの周りには、約束を扱う言葉がいくつもあります。

ブランドコンセプト ブランドプロミス タグライン ブランドステートメント
形 一言で決めた約束 相手が確かめられる具体さで言った約束 社名の隣の一文 数文から数段落の文章
何で測るか 判断に使われたか 守られたか 覚えられたか つながって読めるか

表の分け方は、私たちのものです。

ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方では、コンセプトを、約束の中身を一言に絞ったものとして書きました。一言なので、会議の途中でも思い出せます。その代わり、一言のままでは、相手が守られたかを判断するには粗いことがあります。

プロミスは、同じ約束を、相手が確かめられる具体さで言い直したものです。一つのコンセプトから、プロミスはいくつか出てきます。速さを約束するコンセプトなら、注文の受け付け、発送の連絡、問い合わせへの返事、それぞれに具体的な約束が立ちます。

タグラインは、社名と並べて置く短い一文です。相手が中身を読む前に見る場所に置かれます。覚えてもらうための一文なので、確かめられるほど具体である必要はありません。作り方はタグラインとは。キャッチコピーとの違いと、短くならないときの原因に書きました。

ステートメントの別名として、プロミスという言葉が使われることもあります。ブランドステートメントとは。企業理念・タグラインとの違いと、書き方で扱ったステートメントは、約束とその理由を、つないで読ませる文章です。プロミスは、その文章の中に書かれる約束そのものにあたります。

文章全体をプロミスと呼ぶ会社もあります。私たちは、「ブランドプロミスを作りたい」という相談を受けたとき、最初にどれを指しているかを確かめています。名前のまま受けて進めると、約束を具体にしたかったのに、整った文章が納まる、という行き違いが起きるからです。

企業理念とも混ざります。企業理念とは。経営理念との違いと、作り直すときの判断では、理念を「会社が何を大事にし、何のために事業を続けるのかを言葉にしたもの」と書きました。プロミスとの違いは、照らすのが誰かです。理念は、社内の人が自分たちの判断を照らすときに使います。プロミスは、相手が自分の受け取ったものを照らすときに使います。

確かめられる約束と、そうでない約束

約束は、相手が守られたかを判断できるかどうかで、二つに分かれます。

「品質にこだわります」は、相手が守られたかを判断できません。何をもってこだわったと言えるのかが、相手の側からは見えないからです。だから破られることもありません。破られない代わりに、選ぶ理由にもなりません。

「〔場面〕のときは、〔行動〕します」という形にすると、相手は確かめられるようになります。注文した人、問い合わせた人、修理を頼んだ人が、自分の経験と照らして、守られたかどうかを言えます。

修理店を例にすると、違いが見えます。「丁寧に直します」は、受け取った人が守られたかを判断できません。「直したところと、直さなかったところを、お渡しするときに説明します」なら、受け取った人は、説明があったかどうかで確かめられます。後者のほうが、約束としては小さく見えます。それでも、相手の側に照らすものが残るのは後者です。

見分け方は単純です。その約束が守られなかった場面を、相手が一つ挙げられるかどうか。挙げられないなら、それは確かめられない約束です。

確かめられるかどうかは、言葉の長さとは関係がありません。短くても確かめられる約束はありますし、長く書いても確かめられない文はあります。決め手は、相手の経験と照らせる具体さが入っているかどうかです。

確かめられない約束にも、置き場所はあります。会社が目指す方向を示す言葉として、理念やステートメントの中に置けば役に立ちます。ただ、それをプロミスとして掲げると、相手の側には照らすものが残りません。

具体にするほど、守る範囲は狭くなる

確かめられる形にすると、破れたときに相手から見えるようになります。

通信販売を例にすると分かります。「ご注文は早めに発送します」と「平日〔 〕時までのご注文は、翌日に発送します」を比べると、後者のほうが、相手ははっきり確かめられます。その分、担当者が休む日や、注文が重なった週にも同じように出せるかが問われます。

具体にするほど、守れる場面は限られていきます。確かめられることと、守り切れることは、同じ方向には伸びません。片方を強めると、もう片方が弱まります。

確かめられる約束には、守れたときにも違いが出ます。相手は、約束と自分の経験を照らして、守られたことを確かめられます。確かめられない約束では、守っていても、相手の側に照らす材料がありません。破れたときに見えるのと同じ仕組みで、守れたときも見えるようになります。

社内の決めごとにも、同じ引っぱり合いがあります。ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかには、細かく決めるほど守られるとは限らない、と書きました。プロミスで違うのは、守られたかを確かめるのが相手だということです。社内の決めごとは、破れても社内で気づいて直せます。相手に向けた約束は、破れたことを相手が知っています。言い直しても、前の約束を読んだ人がいます。

だから、プロミスの具体さは、社内で守れるかどうかだけでは決まりません。相手が何を確かめたいかから決めます。届く速さを確かめたい相手に、品質の基準をいくら具体に約束しても、照らしてもらえません。逆に、相手が気にしている点だけは、具体に言わないと約束になりません。

折り合いのつけ方は、二通りあります。一つは、言い切る範囲を狭めることです。「平日のご注文は」「この商品については」と条件を付けて、その範囲では守り切れる約束にする。もう一つは、守れる体制を先に作ってから言うことです。担当を二人にする、注文が重なる時期の受け方を決めておく。体制が整う前に言い切ると、最初に破れるのはその約束です。

どちらを選ぶかは、相手が確かめたい点の重さで決めます。相手が強く気にしている点なら、体制を作ってでも言い切る価値があります。それほど気にしていない点なら、範囲を狭めて言うか、プロミスに入れずにおく選択もあります。どの点も同じ具体さで約束しようとすると、守る側の負担だけが増えます。

どちらも取らずに、抽象的な言葉に戻す道もあります。そうすると、前の章の、破られないが選ばれない約束に戻ります。折り合いをどこでつけたかが、そのブランドのプロミスになります。

守れない場面を先に数える

どこまで具体に言うかを決めるには、守れない場面を先に数えます。

順番はこうなります。

  1. 約束を一文で書く。コンセプトから、相手が確かめられる形に言い直す
  2. その約束が守れなくなる場面を挙げる。注文や依頼が重なる時期、担当が替わるとき、外に頼んでいる工程、ふだんと違う注文
  3. 挙げた場面を、約束の範囲から外して言い切るか、場面ごとに体制を作るかを決める
  4. 書いた約束を、実際に守る人に読んでもらう

三で範囲を狭めると決めたら、その条件も約束の文面に書きます。「平日の」「在庫のある商品は」。条件が書いてあれば、相手は条件も含めて確かめられます。条件を社内にだけ持っていると、相手の側からは、守られなかったように見えます。

二で挙げる場面は、想像より実際の記録から拾うほうが確かです。去年、遅れが出た週。問い合わせに返せなかった日。そこに、約束が守れなくなる条件がそのまま出ています。

通信販売の例に戻すと、注文が重なる時期があるなら、その時期にも翌日に出せるかを先に確かめます。出せるなら、条件を付けずに言い切れます。出せないなら、その時期の約束を別に書きます。「〔時期〕は、ご注文から〔 〕日以内に発送します」。約束が二つに分かれても、どちらも相手が確かめられる形なら、破れる約束を一つ掲げるより相手の側に残るものがはっきりします。

四で読んでもらうのは、その約束を毎日守ることになる人です。受付、営業、制作、配送。その人が読んで、守れないと感じる箇所があるなら、そこはまだ守れる形になっていません。

ブランド戦略とは。マーケティング戦略との違いと、事業戦略との関係では、何を約束しないかを決める作業を書きました。速さを取るなら、時間のかかる丁寧さは取れない、という選び方の話です。ここで数えるのは、それとは別のものです。選んだ約束が、どの場面で守れなくなるか。選んだあとに、どこまで言い切れるかを決める作業です。

私たちは、約束の言葉を整えて渡す前に、守れない場面を一緒に数えています。言葉だけを整えて渡すと、読んだときは前向きに見える約束が、そのまま外に出ます。破れるのは、外に出たあとです。

守れなかったときの扱いを決めておく

守れない場面を数えても、数えた場面を残らず範囲から外すことはできません。例外は来ます。

例外が来たときに、その場で対応を決めると、相手から見た約束が人によって変わります。ある担当は先に連絡し、別の担当は黙って遅れる。相手の側では、同じ会社の約束が場面ごとに違って見えます。

先に決めておくのは、相手に何を伝えるかです。

  • 守れないと分かった時点で、いつ伝えるか
  • 代わりに何を出すか
  • その言葉を、接点にいる人がその場で言えるか

代わりに出すものは、相手が次に動けるものにします。新しい日程、別の手段、途中まで進んだ分。お詫びの言葉だけでは、相手は予定を立て直せません。

三つめが決まっていないと、接点にいる人は確認に戻ることになり、そのあいだ相手は待ちます。相手にとっては、その待ち時間も約束の一部です。約束した日の前に連絡が来ることと、約束した日を過ぎても連絡がないことは、相手の側では別の出来事です。前者では、相手は予定を組み直せます。後者では、約束が破れたことを、自分で気づくことになります。

伝える順番も決めておきます。相手が次の判断をするのに要るのは、まず、いつどうなるかです。理由はそのあとで足ります。理由から話し始めると、相手は、自分の側で何を変えればいいのかを最後まで待つことになります。

守れないことを先に伝えた場合と、相手が気づいてから伝えた場合では、同じ遅れでも、相手が知っていることが違います。先に伝えた場合、相手は約束が破れたことと同時に、それを言いに来たことも知っています。

守れなかったあとに、約束と実態のどちらを直すかの見分け方は、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法の「ずれていたら、どちらを直すか」の章に書きました。

どこに書き、誰が持つか

プロミスは、相手が照らせる場所に置きます。

会社紹介のページ、商品やサービスの説明、注文や契約の前の案内。相手が約束を受け取り、あとで読み返せる場所です。ステートメントがあるなら、その文章の中に置くと、約束とその理由が一緒に読まれます。

置く場所と同じくらい大事なのが、誰が持つかです。約束を守るのは、書いた人とは限りません。電話を取る人、注文を受ける人、商品を届ける人。相手が約束を確かめるのは、その人たちと接したときです。

だから、プロミスを知っているべきなのは、接点にいる人です。掲げてあるのを見たことがある、では足りません。その約束を守るために、自分が何をするのかを知っている状態にしておきます。社員が会社の言葉を日々の仕事に結びつける進め方は、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方にまとめています。

約束を変えるときも、順番があります。外に出す前に、接点にいる人に先に渡します。相手は前の約束を読んでいるので、変わったことを聞かれる場面が来ます。そのときに答えられる人が接点にいなければ、変えた理由が伝わる前に、約束が破れたように見えます。

確かめるのは、相手のほう

ブランドプロミスは、相手に向けて言った約束です。社内の決めごとと違って、守られたかを確かめるのは相手で、破れたときはそれを相手が知っています。

だから、どこまで具体に言うかは、相手の側から決めます。確かめたい点は具体に言い、守り切れない場面は先に数えて、範囲から外すか、体制を作ってから言う。

そして、守るのは書いた人とは限らないので、約束は接点にいる人に渡しておきます。

約束が働き始めるのは、相手が一度確かめて、守られていたと知ったときです。

Tags: