ブランドパーソナリティとは。アーカーの5次元と、形容詞で終わらせない決め方

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ブランドパーソナリティとは。アーカーの5次元と、形容詞で終わらせない決め方

ブランドパーソナリティとは、人に例えたときのブランドの性格のことです。誠実そう、頼りになりそう、といった、人に対して持つのと同じ種類の印象を、会社や商品に対しても持つことがあります。

人に例えるのは、決めごとに書いていない場面でも「この人ならどうするか」を考えられるようにするためです。だから人格は、形容詞を選んで終わりにせず、場面での振る舞いで書きます。

この記事では、研究で使われている5つの次元から入ります。そのうえで、バリューやトーンアンドマナーとの違い、人に例える理由、書き方を扱います。

ブランドパーソナリティとは何か

ブランドパーソナリティは、受け手の側で結びつくものです。

1997年に発表されたジェニファー・アーカーの論文では、「ブランドに結びつけられた人間的特徴の集合」と定義されています(訳は私たちによるものです)。結びつけるのは、ブランドを見る人の側です。会社が名乗った性格が、そのまま人格になるわけではありません。

この点で、ブランドイメージと近い位置にあります。イメージは、受け手が持っている印象の全体です。パーソナリティは、そのうち人に例えて語られる部分にあたります。イメージをどう扱うかは、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法に書きました。

では、会社の側には何ができるのか。名乗った性格と、読まれた性格は別のものですが、読まれる材料は会社の側から出ています。その材料を揃えることはできます。この記事の後半は、その話です。

パーソナリティという語は、人の性格を指す言葉です。ブランドに当てはめると、ブランドがもし人だったら、どんな人に見えるか、という意味になります。

似た言葉に、パーソナルブランドがあります。こちらは、個人が自分自身を一つのブランドとして扱う考え方で、この記事の対象とは別のものです。

アーカーの5次元

アーカーの論文は、ブランドの人格を5つの次元に整理しました。

次元 この記事での訳
Sincerity 誠実さ
Excitement 刺激
Competence 有能さ
Sophistication 洗練
Ruggedness たくましさ

日本語は、この記事で当てた訳です。論文では、5つの次元の下に15の側面と、42の特性語が置かれています。631人が37のブランドを分担して、114の語で評価した結果から導かれました。

書誌は次のとおりです。Jennifer L. Aaker, “Dimensions of Brand Personality,” Journal of Marketing Research, Vol. 34, No. 3 (1997), pp. 347–356.(DOI)

この論文を読むときに押さえておきたいのは、何のために作られたかです。

著者が実務での使い道として挙げているのは、ブランドの人格を測って、ほかのブランドと比べることです。商品の分野が違うブランドどうしでも、同じ物差しで比べられるようにする。そのための尺度です。広告やパッケージといった要素が、人格にどれだけ効くのかについては、まだ確かめられていないと論文の中で書かれています。作り方の手順を示した論文ではありません。

もう一つは、どこで作られたかです。回答者は、アメリカの人口構成に沿って選ばれています。著者自身も、別の文化圏ではこの尺度が合わない可能性があると書いています。

その後、アーカーらが日本とスペインで調べた研究があります。日本とアメリカに共通する次元として Sincerity、Excitement、Competence、Sophistication の4つが見つかり、日本に固有の次元として Peacefulness(穏やかさ)、アメリカに固有の次元として Ruggedness が見つかったと、論文の要旨で報告されています。書誌は、Jennifer L. Aaker, Verónica Benet-Martínez, Jordi Garolera, “Consumption Symbols as Carriers of Culture: A Study of Japanese and Spanish Brand Personality Constructs,” Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 81, No. 3 (2001), pp. 492–508.(DOI)

5つの次元は、借りて当てはめる一覧ではなく、測るための物差しです。しかも、使う場所によって目盛りが変わる物差しです。

5つの次元を示して、自社に近いものを選んでもらう、という進め方をすると、測るための物差しを、決めるための一覧として使うことになります。選んだ次元が自社にも他社にも当てはまりそうに見えるのは、ブランドを問わず当てはめて比べられるように作られた語だからです。持ち込む側は、選んでもらう前に、これが何のために作られた物差しかを伝えておく必要があります。

バリュー・トンマナとの違い

バリューとトーンアンドマナーは、パーソナリティと同じ場面で持ち出される言葉です。三つとも、会社らしさを揃えるために使われるからです。

バリュー パーソナリティ トーンアンドマナー
問い 何を選ぶか どう振る舞うか どう見せ、どう言うか
出る場所 判断の中身 判断の出し方 見た目と言葉
例 断るかどうか どう断るか 断りの文面をどう書くか

バリューが扱うのは、迷ったときに何を選ぶかです。依頼を受けるか断るか、どちらの案を取るか。選ぶ中身を決めます。扱い方はMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは。3つの違いと、矛盾したときの決め方に書きました。

パーソナリティは、その判断をどう出すかに出ます。断ると決めたあとで、すぐに断るのか、理由を添えて断るのか、代わりの相手を紹介するのか。同じ「断る」でも、断り方で、相手が受け取る人柄が変わります。

トーンアンドマナーは、見え方と言い方です。誰に何を約束するかから翻訳して決めます。その考え方はトーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳するに書きました。

パーソナリティとトーンアンドマナーの違いは、範囲です。アーカーの論文は、人格の印象が、広告や見た目だけでなく、社員や経営者、価格、売っている場所など、ブランドとのあらゆる接点から形づくられると書いています。トーンアンドマナーが扱うのは、そのうちの見た目と言葉です。返事の速さや、間違えたときの対応は、言葉の調子だけでは決まりません。そこにも人格は出ます。

三つは、並べて決めるものです。どれか一つがほかの二つを代わりに決めてくれるわけではありません。

なぜ人に例えるのか

場面ごとに書いた決めごとは、書いた場面にしか効きません。

この場面ではこうする、と書いてあれば、その場面では揃います。書いていない場面が来ると、担当者がその場で判断します。

書いていない場面は、来ます。新しい媒体を始めたとき、想定していなかった問い合わせが来たとき、初めての種類の失敗をしたとき。決めごとを増やしても、場面を書き尽くすことはできません。

書いていない場面をどうするかには、トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳するの「揃わないのは決まっていないから」の章で、一つ答えを出しています。約束が共有されていれば、書いていない場面でも判断できる、というものです。「うちは何を約束しているから、ここではこうする」と考えられれば、決めごとを読んでいない人でも近いところに着く、とも書いています。

人の像は、その約束を、場面で思い出せる形にしたものです。約束は、何を目指すかを示します。人の像は、そこへどう振る舞って向かうかの見当を与えます。長く付き合っている人なら、初めて見る場面でも「あの人ならこう言う」と考えられます。規則の一覧を覚えていなくても、その人がどういう人かを知っていれば、振る舞いの見当がつきます。

私たちは、ブランドパーソナリティを、約束を場面に持ち出すための像として扱っています。研究で確かめられた考え方というより、使う側の立場からの捉え方です。

受け手の側も、ブランドを人のように見ています。アーカーの論文も、消費者がブランドに人の性格を重ねて見る、という議論を出発点にしています。受け手が人として見ているなら、会社の側も人として揃えておくほうが、読まれ方と噛み合います。規則の一覧だけで揃えた振る舞いは、受け手から見ると、場面ごとに別の人が出てくるように映ることがあります。

たとえば、新しく動画での発信を始めることになったとします。トーンアンドマナーの決めごとは紙とサイトを前提に書かれていて、話す速さや間の取り方までは決めていません。人の像があれば、担当者は「この人がカメラの前で話すなら、どう話すか」から考え始められます。答えは一つに決まりませんが、考え始める場所は揃います。

揃うのは、答えではなく、考え始める場所です。人の像に期待できるのは、そこまでです。答えまで揃えたいなら、その場面の決めごとを書き足すことになります。

同じ記事では、デザインの案を見ているうちに「うちはこういう感じだ」という合意ができても、その合意は形に紐づいているので、次の媒体に持ち出せないとも書きました。形に紐づいた「感じ」は持ち出せません。人として書いた像なら、形が変わっても持ち出せます。

ただし、持ち出せるのは、像がはっきりしている場合だけです。「親しみやすい人」という一語では、初めての場面でどう振る舞うかの見当はつきません。どういう場面で、どう振る舞う人なのか。そこまで書いてあって、はじめて持ち出せる像になります。

形容詞で止めると何が起きるか

人格を言葉にしようとすると、まず形容詞の候補が並ぶことがあります。誠実、温かい、挑戦的。

形容詞を選ぶと、決まったように見えます。ただ、同じ語から、別々の振る舞いが出てきます。誠実な謝り方は、人によって違います。すぐに謝ることを誠実と考える人もいれば、原因を確かめてから謝ることを誠実と考える人もいます。形容詞は同じでも、二人の振る舞いは逆になります。

もう一つ、形容詞は、ほかの会社も同じように選べます。誠実でありたいのは、自社だけではありません。アーカーの5次元の特性語は、もともとブランドを問わず当てはめて比べるために集められた語です。論文には、特性語は主に好ましい意味の語から選んだとも書かれています。そこから選べば、他社と同じ語になるのは自然なことです。

形容詞で話がまとまるのには、理由があります。誠実や信頼には、反対する理由が見つからないからです。反対が出ない語は、すぐに合意できます。ただ、すぐに合意できたのは、その語が、社内の誰の振る舞いも変えないからでもあります。

形容詞に使い道がないわけではありません。形容詞は、振る舞いをまとめて呼ぶ見出しとしては便利です。問題は、見出しだけがあって、中身の振る舞いが書かれていない状態です。

すでに形容詞を決めてある場合も、そのまま使えます。決めた語が、どういう場面でどう振る舞うことを指しているのかを書き足していけば、次の章の形になります。書き足すときに、社内で思い浮かべている振る舞いが人によって違うと分かることがあります。それが分かること自体が、形容詞で止めていたときには見えなかった材料です。

場面と振る舞いで書く

人格は、場面を先に選んで書きます。

  1. 場面を選ぶ。返事をする、断る、謝る、間違いを指摘される、褒められる
  2. その場面で「この人ならどうするか」を一文で書く
  3. 二つの良い性質がぶつかる場面で、どちらに寄るかを書く
  4. 最後に、書いた振る舞いをまとめる形容詞を見出しとして付ける

形容詞を最後に置くのが、この順番の要です。先に形容詞を決めると、振る舞いを形容詞に合わせて書くことになり、一語から出てくる振る舞いが人によって割れる問題がそのまま残ります。

二つめの一文は、たとえば、ある会社が断る場面を書くなら、こうなります。「その日のうちに断る。理由は一つだけ添える。代わりに頼める先を知っていれば、名前を出す」。形容詞は一つも入っていませんが、読んだ人は、どういう人柄かを思い浮かべられます。

場面は、最初から揃えようとしなくて構いません。書いてある場面で足りなかったことが出てきたら、そこから足していきます。

三つめの「どちらに寄るか」は、書く価値が高いところです。率直さと気遣いは、どちらも良い性質です。ただ、言いにくいことを伝える場面では、先に結論を言うのか、先に相手の事情を聞くのか、どちらかから始めるしかありません。始める順番が、その会社の人柄として読まれます。

ここで書いているのは、伝えるかどうかではありません。伝えると決めたあとの、振る舞いの順番です。伝えるかどうかはバリューの話で、何から始めるかがパーソナリティの話です。言い回しの調子は、トーンアンドマナーで揃えます。この線を守っておくと、三つの文書が同じことを言い換えただけのものになりません。

場面を選ぶときは、誰に何を約束するかから始めます。約束が決まっていないと、人格は「こう見られたい」という願望になります。約束の決め方は、ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に書きました。

書き上がったものを、形容詞の一覧だけにして渡すと、受け取った側は、書いていない場面が来たときに、その語をどう振る舞いに直すかを自分で考えることになります。人格を決める作業の続きを、使う人に渡しているのと同じです。

読まれているかを確かめる

人格は、読まれて決まるものです。

書いた人格が、そのとおりに読まれているかは、確かめないと分かりません。アーカーの尺度は、本来ここで使う道具です。決めたあとで、受け手に測ってもらい、書いたものと比べる。

ただ、尺度は、まとまった数の回答を集める調査に向いた道具です。規模が小さければ、測るより聞くほうが早く済みます。

聞き方は、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法に書いたものと同じです。こちらから形容詞を出さず、相手の言葉で説明してもらいます。変えるのは問いだけです。うちを人に例えると、どんな人ですか。返ってきた語を、書いた人格と並べます。

ずれていたときに見るのは、書いた振る舞いが、実際に取れる段取りになっているかです。間違えたときにすぐ認めて直す人として書いても、訂正を出すまでに承認の手続きがいくつも挟まるなら、そのとおりには振る舞えません。書いた人格どおりに振る舞えない仕組みのままでは、言葉だけを直しても読まれ方は変わりません。

人の像は、持ち出せる

ブランドパーソナリティは、受け手がブランドに結びつける人間的な特徴です。1997年の論文は、5つの次元で測る物差しを作りましたが、その物差しは比べるために作られたもので、場所によって目盛りも変わります。

会社の側でできるのは、読まれる材料を揃えることです。場面ごとの決めごとは、書いた場面にしか効きません。書いていない場面のために、約束を思い出せる形として、人の像を持っておく。その像を、場面での振る舞いで書きます。

長く付き合っている人のことは、一緒にいたことのない場面でも想像できます。ブランドの人格も、そこまで書いておけば、まだ書かれていない場面で役に立ちます。

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