MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは。3つの違いと、矛盾したときの決め方

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは。3つの違いと、矛盾したときの決め方

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは。3つの違いと、矛盾したときの決め方

MVVとは、ミッション・ビジョン・バリューの頭文字です。会社が何を果たすのか(ミッション)、どこへ向かうのか(ビジョン)、迷ったときに何を選ぶのか(バリュー)。この3つを分けて言葉にしたものを指します。

意味の違いまでは、調べればすぐに出てきます。この記事では、そこから先を扱います。どれから決めるのか、3つがぶつかったときに何を優先するのか。決めたあとに必要になることまでをお伝えします。

なぜ3つに分けるのか

3つとも、会社の考えを言葉にしたものです。それなら一つにまとめてもよさそうですが、まとめると使えなくなります。

理由は、3つで時間の扱いが違うからです。

ミッションには終わりがありません。果たし続けるものなので、達成して次に進むという性質を持っていません。ビジョンには期限があります。いつまでにどこへ、という形で書くので、到達したら更新することになります。バリューは今日使います。目の前の案件をどう進めるか、二つの案のどちらを選ぶか。その場で参照するものです。

私たちは、この3つを時間軸で分けて見ています。業界で定まった見方ではありませんが、こう置くと扱いが決まります。

3つをまとめて一つの文にすると、この時間差が消えます。「私たちは◯◯を通じて社会に貢献し、△△な会社を目指し、□□を大切にします」。文としては読めます。ただ、明日の判断には使えません。終わらないものと、期限のあるものと、今日使うものが、同じ重さで並んでいるからです。

分けているのは、体裁のためではありません。使う場面が違うものを、場面ごとに取り出せるようにするためです。

実際、3つのうち社員が日々目にしているのはバリューだけ、という会社があります。ミッションとビジョンは額に入って会議室にあり、バリューだけが仕事の話のなかに出てくる。望ましくない状態に見えますが、時間軸で考えれば筋の通った偏りです。問題になるのは、偏っていること自体ではなく、上の二つを使う場面が来たときに取り出せないことのほうです。

3つの違いはどこにあるか

違いは、意味そのものよりも、扱い方に出ます。

ミッション ビジョン バリュー
問い 何を果たすのか どこへ向かうのか 何を選ぶのか
時間 終わらない 期限がある 今日
変わるか 変えない 到達したら更新する 増えることも減ることもある
使う場面 事業を増やすとき 人と予算を配るとき その場で決めるとき

表の4行目について

上の3行は、意味を並べれば書ける内容です。4行目の「使う場面」が、決めたあとに効いてきます。

ミッションを使うのは、事業を増やすかどうかを決めるときです。新しい領域に手を出すか、声のかかった案件を受けるか。果たすと決めた役割の内側かどうかで判断します。

ビジョンを使うのは、人と予算を配るときです。到達点が決まっていれば、そこから逆算して今期どこに寄せるかが決まります。逆に、配分でいつも揉めるなら、到達点が共有されていない可能性があります。

バリューを使うのは、その場です。会議で意見が割れたとき、見積もりの出し方を決めるとき、断るかどうかを決めるとき。上の二つと違って、日々のなかで参照するものです。

3つが揃っていなくても進む

3つとも揃えないといけない、というものではありません。会社の段階によって、要るものが違います。

事業が一つで、判断する人が数人なら、バリューだけで回ります。判断の基準さえ共有されていれば、日々は進みます。人が増えて、判断する人が離れた場所にいるようになると、ビジョンが要るようになります。同じ方向を向いているかを、会話以外で確かめる必要が出るからです。

ミッションが要るようになるのは、事業が増えたときです。事業が一つのうちは、何を果たす会社かという答えが、事業の説明と重なります。別に書き起こす必要がありません。二つめ、三つめが増えてくると、事業の説明では会社の説明にならなくなります。「うちは何の会社なのか」という問いが社内から出てきたら、そこが合図です。

採用の場面でも同じことが起きます。事業ごとに募集をかけると、入ってきた人は事業の単位で会社を理解します。会社として何を果たすのかが言葉になっていないと、部署が増えるほど、別々の会社が同居している状態に近づきます。

3つを同時に埋めることが目的になると、埋めるための言葉が出てきます。要るものから順に決めるほうが、使われる形になります。

パーパス・経営理念との関係

同じあたりを指す言葉が、いくつも流通しています。パーパス、経営理念、企業理念、社是、クレド、行動指針。並び順を変えたPMVVやVMVという書き方も見かけます。

私たちは、次のように使い分けています。まずパーパスは、なぜ存在するのかを指します。社会に対する存在理由です。ミッション(何を果たすのか)と近い位置にありますが、同じではありません。ミッションは会社が引き受ける役割で、パーパスはその手前にある理由です。

経営理念・企業理念は、総称です。ここまでに出た言葉のいくつかをまとめて呼んでいるもので、何を含むかは会社によって違います。理念という言葉が出てきたら、その会社が何を指しているのかを先に確かめないと、話が噛み合いません。社是やクレドも同じで、指す範囲は会社ごとに決まっています。

行動指針という呼び方も見かけます。私たちが見てきた範囲では、中身はバリューと重なります。呼び方が違うだけということがあるので、ここも社内で確かめる対象になります。

ここで一つ、断っておきます。この使い分けは、業界で決まっているものではありません。ミッションとパーパスを同じ意味で使う整理もありますし、パーパスを最上位に置いて、その下にミッションを並べる書き方もあります。どれが正しいという話ではありません。

大事なのは、社内で一つに決まっていることのほうです。呼び方をどれにするかで悩むより、その言葉が何を指しているのかを揃えるほうが先になります。言葉が増えているのは、扱う対象が増えたからではありません。同じものを、違う入口から呼んでいることがあります。

どれから決めるのか

ミッションを決めて、ビジョンを描いて、バリューに落とす。作り方としては、この順で説明されます。

順序としては筋が通っていますし、その順でも進みます。ただ、途中で止まったときは、手元を見ると早いことがあります。

というのも、バリューは、決める前からすでに社内にあるからです。

これまで断ってきた仕事、続けてきたやり方、価格を下げてでも守ったこと、揉めたときに最後に通した判断。そこに、何を選ぶ会社なのかが出ています。言葉になっていないだけで、基準そのものは動いています。

ミッションから始めて止まるのは、手元に材料がない状態で始めているからです。「何を果たす会社か」を白紙から考えると、出てくるのは、どこの会社でも書けそうな文になります。社会貢献、価値提供、顧客第一。書けますが、判断には使えません。

先に、すでにしてきた判断を集める。集めたものを見ると、果たしてきた役割の輪郭が出てきます。そこからミッションを書くと、書ける言葉が変わります。

ビジョンは、この二つとは出どころが違います。過去を集めても出てきません。どこへ向かうかは、これから決めることだからです。

ただ、白紙から出るわけでもありません。ミッションで引き受けた役割の内側で、どこまで行くかを決める形になります。役割が定まっていない状態で到達点だけを描くと、期限が来たときに、達成したのかどうかを判断できません。何を果たすと決めたかがなければ、到達したことの意味を測れないためです。

この「すでにあるものを見つける」という進め方は、リブランディングとは。意味・進め方・費用・判断のタイミングの工程2でも扱っています。会社の見え方を作り直すときも、内側の言葉を決めるときも、探しに行く先は変わりません。

順番を変えたほうがいい、という話ではありません。決まった順で進んで、止まらなければそれでいきます。止まったときに、白紙で考え続けるのではなく手元を見る。選択肢が増えるという意味で書いています。

3つが矛盾したときにどうするか

3つに分けた時点で、矛盾は起きます。欠陥ではありません。性質の違うものを別々に言葉にしたのだから、ぶつかる場面が出るのは筋が通っています。

矛盾が起きる場所

ぶつかりやすいのは、ビジョンの期限とバリューの手順です。

ビジョンには期限があります。いつまでにここへ、と決めた以上、期日が近づけば急ぎます。一方でバリューには、こういうときはこうする、という手順が書かれています。丁寧に確かめる、相手の状況を聞いてから決める、納得しない案は出さない。

期限に間に合わせようとすると、この手順のほうが先に折れます。確かめる工程を飛ばす、聞かずに決める、間に合う案を出す。私たちが相談を受けるなかで見かけるのは、この形です。

理由ははっきりしています。バリューは具体的で、今日その場で使うものだからです。抽象度の高いミッションと違って、破ったことがその場で分かる形になっています。破れるものから破られます。

ぶつかり方は、これだけではありません。事業を広げていくと、ビジョンに書いた到達点が、ミッションで引き受けた役割の外側に出ることがあります。逆に、役割のほうが広すぎて、到達点が役割の一部しか埋めていないこともあります。

ミッションとバリューが合わなくなることもあります。果たすと決めた役割のために引き受けるべき仕事が、日々の判断基準では受けない形になっている場合です。このときは、どちらかが実態と合っていません。決め直す対象は、優先順位ではなく言葉のほうになります。

決めるのは順位ではない

では、どれを優先すればいいのか。

ここで「ミッションが最上位です」と書くこともできますが、会社によって違います。期限を守ることを引き受けている会社もあれば、期限を延ばしてでも手順を守る会社もあります。どちらも成立します。

問題は、決まっていないことのほうです。

決まっていないと、その場にいる人の立場で決まります。納期を持っている人がいれば期限が通り、現場を見ている人がいれば手順が通る。同じ会社のなかで、日によって違う答えが出ます。これが続くと、社員は3つとも参照しなくなります。参照しても答えが出ないからです。

決めておくのは、順位そのものというより、ぶつかったときにどう決めるかです。誰が判断するのか。どの場に持っていくのか。判断した結果を、次から何に反映するのか。

そして、ここは発注側だけの仕事ではありません。3つを言葉にして納品し、ぶつかったときにどうするかを決めずに終わっているなら、それは引き受けた側が仕上げていないということでもあります。言葉を3つ揃えるところまでが成果物だと考えているなら、そこが抜けます。

誰が決めると自分の言葉になるか

経営が決めるのか、全社で決めるのか。この二択で語られる場面がありますが、どちらを選んでも同じところで詰まります。

分けるのは、決める人と、材料を出す人です。

決めるのは経営です。会社が何を果たし、どこへ向かうかは、責任を持つ人が決めます。ここを全社の合議にすると、角の取れた文になります。誰も反対しない言葉は、誰の判断も変えません。

材料を出すのは現場です。前の章で書いたとおり、判断の基準はすでに動いています。それを持っているのは、日々決めている人たちです。ここを経営だけで埋めると、外から持ってきた言葉になります。

この二つを混ぜると、決まらないか、誰の言葉でもないものが出ます。全員で決めようとすれば決まりませんし、経営だけで決めて配れば、配られた側にとっては他人の言葉です。

材料を出す場に誰を入れるか。人数の問題ではなく、どの判断をしている人かで選びます。断る判断をしている人、価格を決めている人、採用の合否を出している人。基準が出るのは、決めている場所です。役職で選ぶと、決めていない人が入ります。

この人選を設計するのは、引き受けた側の仕事です。参加者を発注側に任せて、出てきた顔ぶれでそのまま進めているなら、進め方を決めていないということになります。誰が入るかで出てくる材料が変わる以上、そこは提案の一部です。

もう一つ、経営がどこまで書くのかという分かれ目があります。文言まで決めるのか、方向だけを決めて、言葉は別の人が磨くのか。

どちらでも進みます。ただ、文言を経営が一人で書き上げると、その人にしか使えない言い回しが残ることがあります。逆に、方向だけ渡して丸ごと任せると、整った文が返ってきて、誰も反対しないかわりに誰も使いません。決めるのは方向と、外してはいけない言葉。磨くのはそのあと。この分け方だと、両方を避けられます。

決めた過程を残しておくかどうかでも、あとから差が出ます。言葉だけを渡された人には、どう決まったのかが分かりません。なぜその言葉になったのか、何と何を天秤にかけたのか。過程が残っていれば、あとから入った人も、その言葉を自分の判断に使えるようになります。

決めたあとに何が起きるか

決めた直後は、何も変わりません。ここで失敗したと感じる場合がありますが、順当な状態です。

言葉ができると、次に手が伸びるのは見た目のほうです。ロゴを整える、サイトを作り直す、会社案内を刷り直す。どれも要る作業ですが、それで判断が変わるわけではありません。リブランディングが失敗するとき、デザインは悪くないで書いたのは、この順番のことです。見えるものを変えても、決め方が変わらなければ、元の状態に戻ります。

3つの言葉が使われるようになるかどうかは、決め方ではなく、決めたあとの扱いで決まります。どの場面で参照するのか。誰が持ち出すのか。新しく入った人にどう渡すのか。

決めた直後にやることを一つだけ挙げるなら、次にこの言葉を持ち出す場面を決めておくことです。次の役員会でも、来期の予算を決める場でもかまいません。使う場面が先に決まっていないと、掲示したところで作業が終わります。

社外に出すのは、そのあとで足ります。採用サイトや会社案内に載せた言葉を、面接で担当者が別の言い方で説明する。そうなると、載せる前より状態が悪くなります。候補者から見れば、書いてあることと目の前の人が食い違っている、という情報が増えただけになるからです。

ここから先は、社内で言葉が使われる状態をつくる作業になります。インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方で、進め方と、何を見れば効いたと分かるのかを書いています。この記事では入口までにします。

一つだけ、こちら側から書いておきます。決めたあとに何をするかまでを含めて提案していないなら、言葉を納品して終わりにしているのは受注側です。3つの言葉を納めた時点で成果物が完成していると考えるなら、使われるかどうかは発注側の努力の問題になります。そういう分け方をしている限り、同じ状態が繰り返されます。

作った時点では、まだ何も変わらない

MVVは、3つに分けたところに意味があります。終わらないもの、期限のあるもの、今日使うもの。性質の違うものを別々に置いたのは、場面ごとに取り出して判断に使うためです。

だとすれば、決めたあとに参照されていないなら、分けた意味がまだ出ていないことになります。3つ揃っているかどうかではなく、どこかの場面で持ち出されているかどうかが、できているかの目安になります。

3つがぶつかる場面は、遅かれ早かれ来ます。そのときに何を優先するかを決めてあれば、言葉は判断の材料になります。決めていなければ、その場にいる人の立場で決まり、3つは参照されないまま残ります。

3つ揃えることを目標に置くと、揃った日が終わりになります。使う場面を決めることを目標に置けば、そこから始まります。同じ作業をしていても、どちらを目標に置いたかで、決めたあとの扱いが変わります。

言葉ができた日は、始まりの日です。その日に変わるものはありません。変わるとしたら、その言葉を持ち出して何かを決めた、最初の一回からです。

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