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クリエイティブエージェンシーとは。媒体と分けて呼ぶ名前と、広告代理店との違い

クリエイティブエージェンシーとは。媒体と分けて呼ぶ名前と、広告代理店との違い

会社のサイトで「クリエイティブエージェンシー」という名乗りを見かけても、何を頼める会社なのかは、名前だけでは分かりません。広告代理店や制作会社とは、何が違うのか。この記事は、仕事を頼む側から見た説明です。 この記事で書くのは、クリエイティブエージェンシーという言葉の意味から、広告代理店・制作会社・デザイン事務所との違い、最初の打ち合わせで分かること、私たちがこの名前で指していることまでです。 クリエイティブエージェンシーとは クリエイティブエージェンシーは、広告やブランドの中身をつくる会社の呼び名です。 中身とは、人の目や耳に届く部分のことです。言葉、絵、写真、映像。それらを組み合わせた表現。広告の世界では、この中身を「クリエイティブ」と呼ぶことがあります。エージェンシーは、依頼する会社に代わって仕事を引き受ける会社、という意味で使われています。 大きな広告会社のグループの中の一社のこともあれば、少人数で独立した会社のこともあります。会社の大きさで決まる呼び名ではありません。 この呼び名を理解するには、何と分けて呼ばれているかを見るのが早道です。分けられている相手は、媒体の仕事です。 媒体の仕事と、分けて呼ぶ名前 広告の仕事は、大きく二つに分けて考えることができます。 一つは、中身をつくる仕事です。何を言うか、どう見せるかを考え、言葉や絵や映像にします。 もう一つは、出す場所を計画して買う仕事です。テレビ、新聞、雑誌、Web の広告枠。どの媒体に、いつ、どのくらいの量を出すかを計画し、その場所を買います。広告を載せる場所は、媒体と呼ばれます。 この二つを、一社にまとめて頼む形と、別々の会社に頼む形があります。広告の仕事をこの二つに分けたうえで、企業がどちらの頼み方を選ぶかを調べた研究もあります(Horsky, S.「The Changing Architecture of Advertising Agencies」Marketing Science, 2006)。 別々に頼むとき、中身の側を引き受ける会社がクリエイティブエージェンシー、出す場所の側を引き受ける会社がメディアエージェンシーと呼ばれることがあります。この呼び名がはっきり言っているのは、媒体の仕事は別だ、ということです。 図をタップすると、拡大して見られます 頼む側にとっての意味は、ここにあります。広告として世に出すところまでが目的なら、出す場所の計画と買い付けを誰が持つかを、別に決める必要があります。中身を頼んだ会社が、その手配までするとは限りません。 別々に頼む場合は、二社のあいだを誰がつなぐかも決めておきます。中身をつくる側は、出す場所の条件が分からないと作れません。紙面の大きさ、映像の秒数、出す時期、見る人がどんな場面でそれを目にするか。出す場所を決める側は、中身ができないと、どこに出すのがよいかを詰めきれません。 二社が直接やりとりできる形にしておく方法もあります。そうでなければ、頼む側の担当者が、二社のあいだで条件を運ぶことになります。どちらにするかを決めておかないと、中身ができてから、出す場所の条件に合わないと分かることがあります。 自社が媒体の仕事を持たないなら、そのことを最初に伝えておくのは、引き受ける側の仕事です。頼む側が、途中で出す場所の手配が抜けていると気づくのでは遅いからです。 広告代理店との違い 日本で広告代理店と呼ばれる会社には、媒体の仕事と中身の仕事を、両方引き受ける会社があります。社内にクリエイティブの部門を持ち、そこが中身をつくる形です。 その場合、頼む側から見ると、出す場所も中身も、窓口が一つで済みます。中身をつくる人と、出す場所を決める人が同じ会社にいるので、両方を合わせて計画できます。 クリエイティブエージェンシーに中身を頼む場合は、出す場所の側を、別の会社か自社で持つことになります。中身の相談は、どこに出すかの手配とは切り離して進みます。 どちらが合うかは、頼む側が何を必要としているかで決まります。広告代理店の仕事の中心がどこにあり、どんなときに向くかは、ブランディング会社の選び方。4つの型と、自社に必要な型の見分け方に書きました。 制作会社・デザイン事務所との違い 中身をつくる会社には、ほかの呼び名もあります。制作会社と、デザイン事務所です。 制作会社は、作るものを形にする会社の呼び名です。Webサイト、パンフレット、映像。さきほどの「ブランディング会社の選び方」では、制作会社型について「決めることは、基本的に発注側が持っている前提」と書きました。 デザイン事務所は、デザイナーが主宰する事務所を、こう呼ぶことがあります。 どちらも、中身をつくる点では、クリエイティブエージェンシーと重なります。違うのは、呼び名が何を言っているかです。制作会社とデザイン事務所は、何を作るか、誰が作るかを言う呼び名です。クリエイティブエージェンシーは、媒体の仕事と分けたときの、中身の側を言う呼び名です。 図をタップすると、拡大して見られます 最初の打ち合わせで分かること 同じ言葉を使う会社でも、引き受ける範囲が違うことは、「ブランディング会社の選び方」でも触れました。クリエイティブエージェンシーという呼び名も同じです。では、範囲はどこで分かるのか。 手がかりになるのは、最初の打ち合わせで、何を聞かれるかです。 作るものの仕様と期限から聞かれるなら、その会社は、作るものが決まったところから引き受けるつもりです。大きさ、本数、使う場所、納期。 作る目的と事業から聞かれるなら、何を作るかを決めるところから引き受けるつもりです。何のために作るのか、誰に届けたいのか、いま何が止まっているのか。 どちらが良い、悪いではありません。何を作るかがすでに決まっているなら、仕様から聞かれるほうが、話は早く進みます。まだ決まっていないのに仕様から聞かれると、何を作るかを決める場がないまま、作り始めることになります。 図をタップすると、拡大して見られます 聞かれたことが、自社がいま決めたいことと合っているか。それを見れば、呼び名よりも確かに、その会社がどこから引き受けるかが分かります。本来は、引き受ける側が、打ち合わせの前に伝えておくことでもあります。 私たちがこの名前で指していること 私たちも、クリエイティブエージェンシーと名乗っています。ただ、私たちがこの名前で指しているのは、媒体と分けるという意味よりも、目的から何を作るかを決めるところから引き受ける、という意味です。 サイトでは、私たちのことを「横断的に課題解決を行い、新しい価値を作るクリエイティブエージェンシー」と説明しています。並んでいるスキルは、ブランド立ち上げ、マーケティング、商品開発、Webサイト、グラフィック、コンテンツ、SNS、空間デザイン、映像制作、撮影です。 引き受け方については、「手段の実行ではなく、目的からの設計」をお引き受けしている、と書いています。そして「設計が決まったら、そこから先は領域をまたいでも同じチームが持ちます」。「極めて高度な専門性が求められる部分では、その道のプロフェッショナルと組みます」とも書いています。 なぜそうしているのかは、なぜ私たちは、ブランディングも空間も映像も分けないのかに書きました。この引き受け方が、どの依頼にも合うとは考えていません。作るものがすでに決まっている依頼なら、仕様から引き受ける会社のほうが早く進むこともあります。 どこから頼むかを、先に決める クリエイティブエージェンシーは、広告の仕事を中身と媒体に分けたときの、中身の側を引き受ける会社の呼び名です。呼び名がはっきり言っているのは、媒体の仕事は別だということです。 だから、頼む前に決めておきたいことがあります。出す場所まで要るのか。要るなら、その仕事を誰が持つのか。そして、中身のどこから頼みたいのか。何を作るかがもう決まっているのか、それとも、そこから一緒に決めたいのか。 自社にどんな会社が合うかは、ブランディング会社の選び方。4つの型と、自社に必要な型の見分け方で、問いの形にまとめています。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランディングとは。何をすることで、どこから手をつけるのか 企業ブランディングとは。何本の仕事に分かれ、どこから手をつけるか ロゴ制作の依頼。何が納品されるかで、見積もりは変わる 記事一覧を見る

会社案内の作り方。刷った日から古くなる冊子に、何を載せるか

会社案内の作り方。刷った日から古くなる冊子に、何を載せるか

会社案内を作ることになったとき、最初に探すのは、載せる項目の一覧かもしれません。会社概要、代表のあいさつ、理念、事業の紹介、沿革、社員の紹介。一覧は、探せばすぐに見つかります。 ただ、一覧を全部埋めた冊子ほど、早く古くなります。刷った日から、冊子の中身と会社の実際が、少しずつずれていくからです。 この記事で書くのは、会社案内とは何かから、何年使うかを決め、載せるものを古くなる速さで分け、誰に渡すかで順番を決め、紙の上で決めごとを揃えて、刷る前に確かめるところまでです。 会社案内とは 会社案内は、会社の概要や事業、考え方をまとめて、人に手渡すための冊子です。会社のパンフレットと呼ばれることもあります。 渡す相手は、さまざまです。商談で会った取引先の担当者。説明会に来た学生。新しく付き合いの始まる仕入れ先や金融機関。展示会で立ち寄った人。冊子を刷らずに、同じ中身を PDF にして送ることもあります。 会社の説明は、会社のサイトにも載っています。それでも冊子を作るのは、サイトにはない性質があるからです。 一つは、相手の手元に残ることです。サイトは、相手が見に来なければ読まれません。冊子は、机の上や棚に置かれ、あとからまた手に取られます。 もう一つは、刷ったら直せないことです。サイトの文章は、明日にでも書き換えられます。冊子は、刷った時点の中身のまま配られていきます。 この二つは、裏表の関係にあります。手元に残るから、刷った時点の中身が、長く読まれ続けます。会社案内を作るときに最初に考えたいのは、この裏表のほうです。 刷った日から、古くなる 会社は、冊子を刷ったあとも動き続けます。人が入り、人が替わり、拠点が増え、扱うサービスが変わります。冊子のほうは、刷った日のままです。 古くなりやすいものを、例としていくつか挙げます。どれが先に古くなるかは、会社によって違います。 数字。社員の人数、拠点の数、取引先の数、実績の件数 人。役員の顔ぶれ、窓口になる担当者の名前、社員紹介の顔写真と肩書き 事業とサービスの中身。新しく始めたこと、やめたこと、名前を変えたもの 沿革の最後の行。刷ったあとに起きたことは、載っていません 一方で、何年も同じでいられるものもあります。何をしている会社か。何を大事にして仕事をしているか。ロゴと色。こうしたものは、会社が変えると決めない限り、刷ったときのまま通用します。 古くなった冊子は、回収できません。配った冊子は、相手の手元で、刷った日の会社を説明し続けます。手元に残るという性質が、ここでは裏目に出ます。 社内に残っている在庫も同じです。刷り直すまでは、古いと分かっている冊子を配り続けることになります。担当者が手書きで直した冊子を渡す場面は、作る前の段階で避けておきたいところです。 何年使うかを先に決める 古くなることは避けられません。だから、何年使うつもりで作るかを、先に決めます。 年数を決めると、部数とページ数の考え方が決まります。この三つは、互いにつながっています。 部数は、その年数のあいだに配る冊数から考えます。まとめて刷りたくなる場面もありますが、部数を増やすほど、使い切るまでの期間は延びます。期間が延びるほど、古くなった中身を配る期間も延びます。部数から先に決めると、この順番が逆になります。 ページ数は、その年数のあいだ同じでいられる中身の量で決まります。長く使う冊子ほど、載せられるものは絞られます。古くなりやすいものを外していくと、残るものは思ったより少なくなるはずです。それで構いません。少ないぶん、長く使えます。 年数は、会社の予定から考えます。事業の計画が切り替わる時期、移転や組織の変更の予定、周年。次に大きく変わると分かっている時期までを、ひとまずの年数にします。 何年使う前提かは、作る側が、作り始める前に聞いておくことです。仕様や部数の相談より先に来る話だからです。 図をタップすると、拡大して見られます 古くなる速さで、置き場所を分ける 製本すると直せなくなること、そのため変わる部分を冊子とは別に置く方法があることは、ブランドブックとは。ガイドラインとの違いと、どちらが要るかの決め方に書きました。会社案内では、その置き場所を、古くなる速さに合わせて三段に分けて考えます。 冊子の本体には、決めた年数のあいだ同じでいられるものを載せます。何をしている会社か、考え方、事業の柱、ロゴと色。 差し込みには、年に一度ほど変わるものを載せます。差し込みは、冊子に挟む別の紙や、表紙の内側のポケットに入れる紙のことです。会社概要の数字、拠点の一覧、役員の顔ぶれ、サービスの一覧。変わったら、その紙だけを刷り直せます。 サイトには、いつ変わってもおかしくないものを置きます。新しい実績、お知らせ、採用の募集、担当者の連絡先。冊子には、サイトのどこを見ればよいかを書いておきます。アドレスや QR コードを載せておけば、冊子から最新の情報へ渡れます。 図をタップすると、拡大して見られます 三段に分けると、刷り直す範囲が小さくなります。会社の数字が変わっても、差し込みを刷り直せば済みます。冊子の本体は、決めた年数のあいだ、そのまま配り続けられます。 サイトの側を作り直すかどうかの決め方は、コーポレートサイトのリニューアル。作り直す前に、何が変わったかを見るで扱っています。 置き場所の分け方は、仕様を決める段階で、作る側から示してほしいことでもあります。差し込みにするか、本体に刷り込むかは、紙や綴じ方を決めたあとでは変えにくいからです。 誰に渡すかで、順番を決める 会社案内を渡す相手は、大きく分けると、仕事の相手と、入社を考えている人です。営業用と採用用を一冊で兼ねるか、分けて作るかは、作る前に決めておきます。 兼ねれば、作るのは一冊で済みます。ただ、読む人が知りたいことは違います。仕事の相手は、何を頼めるのか、頼んで大丈夫な会社かを知りたい。入社を考えている人は、どんな人と、どんなふうに働くのかを知りたい。一冊に両方を入れると、どちらの読み手にも、知りたいことが半分ずつしか届きません。 分けるかどうかは、それぞれをどれだけ配るかで決めます。説明会で毎年配るなら、採用用を別にしておけば、年ごとに変わる募集の情報を、採用用の差し込みだけで入れ替えられます。 渡す相手が決まったら、最初の見開きに何を置くかを決めます。冊子を開いて最初に目に入るところには、その相手が最初に知りたいことを置きます。会社の歴史から始めるのは、歴史を知りたい相手に渡すときです。 図をタップすると、拡大して見られます 渡した冊子は、受け取った人の手元で終わるとは限りません。仕事の相手なら、社内の別の人に回すことがあります。会った人が、その場にいない人に説明するときに何が残るかは、BtoBブランディングとは。会っていない人に、どう伝わるかに書きました。 決めごとを、紙の上で揃える 会社案内は、会社の決めごとが、紙の上で一度に試される場所です。ロゴ、色、書体、写真、言葉。それぞれ別の場面で決めたものが、同じ見開きに並びます。 色は、画面で決めたとおりには刷れないことがあります。画面と印刷では、出せる色の範囲が違うからです。印刷で使う値と、どこまでの差を同じ色とみなすかは、コーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていないに書きました。 言葉は、すでに決めた会社の言葉から書き始めます。代表のあいさつも、事業の紹介も、会社が何を約束しているかを書いた文と、向きが揃っている必要があります。会社の言葉の書き方は、ブランドステートメントとは。企業理念・タグラインとの違いと、書き方にあります。 写真と書体は、決まりがあるならそれに従います。写真の選び方や書体の使い方がガイドラインにまとまっていれば、冊子はそれを当てはめるだけで済みます。 まとまっていないなら、冊子を作る中で決めたことを、書き残しておきます。どんな写真を選び、どの書体をどこに使ったか。書き残したものがあれば、次の冊子やサイトで同じものを使えます。作る側が、決めたことを一枚にまとめて渡してくれれば、それがそのまま決めごとの下書きになります。ガイドラインに何を書くかは、ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかで扱っています。 刷る前に確かめること 数字には、いつの時点の数字かを書き添えます。社員の人数や拠点の数の横に、何年何月現在と入れておけば、冊子が古くなったとき、読む人がそれに気づけます。古いと分かる数字は、古いと分からない数字より、相手を迷わせません。 色は、本番に近い条件で試し刷りをして確かめます。試し刷りを用意して見せるのは、刷る側の役目です。見るときの考え方は、さきほどのコーポレートカラーの記事にあります。 最後に全体を見る人を、一人決めます。原稿は、事業の担当、人事、広報、経営と、社内のいろいろな人が書きます。全員が自分の段落だけを見て終わると、冊子全体の言い方が揃っているかを見る人がいなくなります。 原稿と写真は、社内にしかないものです。外に頼んでも、ここは社内で用意することになり、進行はここで止まりやすくなります。サイトを作り直すときにも同じことが起きる、という話は、さきほどのコーポレートサイトのリニューアルの記事に書きました。 項目より先に、年数を決める 会社案内を、載せる項目の一覧から作り始めると、全部を載せた冊子になります。全部を載せた冊子は、早く古くなります。 先に決めるのは、何年使うかです。年数が決まれば部数が決まり、冊子の本体に載せるものが決まり、差し込みとサイトに置くものが決まります。 刷った日から古くなることは、避けられません。避けられないなら、古くなる部分を、最初から冊子の外に置いておきます。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランド体験とは。接点のあいだで割れないように、順番で考える コーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないもの トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳する 記事一覧を見る

周年スローガンの決め方。周年が終わったあとも、その言葉を使うか

周年スローガンの決め方。周年が終わったあとも、その言葉を使うか

周年スローガンとは、会社が創業や設立から節目の年を迎えるときに、その周年に掲げる短い言葉です。 言葉を考える前に、周年が終わったあとも使うのか、周年で終わらせるのかを決めます。どちらにするかで、決める人も、入れる言葉も、置く場所も変わります。 会社が変えずに掲げる一文はタグラインとは。キャッチコピーとの違いと、短くならないときの原因に、数段落で書く文章はブランドステートメントとは。企業理念・タグラインとの違いと、書き方にまとめました。この記事では、周年という終わりのある機会に作る言葉を扱います。周年スローガンとは何かから、周年のあとどうするかの決め方、外せない場所に入れるかどうか、残すときのいまの言葉との関係、入れられる言葉、周年ロゴ、誰がいつまでに決めるかまでを書きます。 周年スローガンとは 周年スローガンは、周年の取り組みのあいだ、会社が掲げる短い言葉です。記念の式典、特設のページ、記念誌、記念品、周年ロゴ。周年に合わせて作るものと一緒に使われます。 呼び方は、会社によって違います。スローガンと呼ぶところもあれば、キャッチコピーやメッセージと呼ぶところもあります。タグラインの記事にも、スローガンという語が指す範囲は会社によって違う、と書きました。 その記事では、タグラインとキャッチコピーを、寿命で分けました。見分け方は、「その一文を、来年も使うつもりがあるか」です。あるならタグライン、ないならキャッチコピーです。 周年スローガンは、この見分けのあいだにあります。掲げる時点では、周年の期間のための言葉です。期間ごとに入れ替えるキャッチコピーに近いところにいます。ところが、周年が終わっても使い続けると、会社の約束を表す一文として読まれ始めます。タグラインの役を持つようになります。 どちらになるかを決めないまま作られることがあるのが、周年スローガンの難しいところです。周年という終わりのある機会に作るのに、終わったあとの扱いが決まっていない。外すのか使い続けるのかを、周年が過ぎてから初めて考えます。 先に決めるのは、周年のあとどうするか 周年スローガンの行き先は、二つです。 一つは、周年で終わらせることです。周年の期間だけ掲げて、終わったら外します。 もう一つは、残すことです。周年が終わったあとも、会社の言葉として使い続けます。 タグラインとキャッチコピーを分けた表を、周年の言葉に当てると、次のようになります。 周年で終わらせる 残す 決める人周年の取り組みを進める担当でも決められる経営 数字(◯周年)入れてよい外しても意味が通る形にする 置く場所周年の期間に出るもの(式典、特設のページ、期間中の署名など)名刺、サイト、看板など、ずっと出るもの いまの言葉との関係いまのタグラインはそのまま。周年の期間だけ並ぶ置き換える、並べる、ステートメントに入れる、から選ぶ 終わり方外す日を決める見直すきっかけを決める この表は、私たちの整理です。会社によって、決める人や置く場所の範囲は変わります。 図をタップすると、拡大して見られます どちらにするかは、周年の言葉で言いたいことが、その年だけのことか、会社がこれからも約束することかで決まります。お礼や節目の報告なら、周年で終わらせる言葉です。会社がこの先も守ることを言うなら、残す言葉になります。ただ、言いたい約束を、いまのタグラインがすでに言えているなら、新しい一文は要らないこともあります。その場合、周年の言葉はその年だけのことに絞れます。 違いが大きいのは、決める人です。周年で終わらせる言葉なら、周年の取り組みを進める担当の中で決められます。残す言葉は、会社の約束を表す一文になるので、決めるのは経営です。タグラインの記事でも決める人の違いを挙げ、会社の約束に関わる一文は経営が決める、と書きました。 数字の扱いも分かれます。周年で終わらせるなら、「◯周年」の数字を入れて構いません。その年のための言葉だからです。残すなら、数字を外しても意味が通る形にしておきます。 残す言葉の見直しは、何年経ったかより、事業が変わったときのような出来事をきっかけにします。この決め方も、タグラインの記事に書いたものと同じです。 途中で行き先を変えることもあります。周年で終わらせるつもりだった言葉が社内で口にされるようになり、残したくなることがあります。そのときは、残す側の決め方をやり直します。決める人が経営に移り、入れる言葉も見直すことになります。 どちらが良いという話ではありません。周年のあとどうするかを確かめずに案を出すと、周年が終わったときに、扱いの決まっていない言葉が残ります。 外せない場所に入れるかを、先に決める 周年で終わらせるなら、外す日も決めます。 終わらせると決めたものは、終わる日まで決めておく。この話は、これまでにも書いてきました。名前をやめるときの話はブランドアーキテクチャとは。ブランド体系を、後から並べ直すに、サイトを閉じるときの話はブランドサイトとは。コーポレートサイトとの違いと、分けるかどうかの決め方にあります。 周年の言葉が違うのは、終わる日が、最初から分かっていることです。周年の年度が終わる日、式典から一年、といった区切りは、周年の計画と一緒に決まります。外す日そのものを決めるのに、手間はかかりません。 考えておきたいのは、外す日より、外せない場所のほうです。 周年の言葉を置く場所には、あとから外せる場所と、外せない場所があります。 外せる場所:サイト、メールの署名、社内の掲示、刷り直せる名刺 外せない場所:配った記念品、取引先に送った挨拶状、刷り終えた記念誌 外せない場所に入れた言葉は、周年が終わっても残ります。記念誌のように、その年を残すために作るものなら、それで構いません。言葉が残ることも、記念誌の役目のうちです。 図をタップすると、拡大して見られます 迷うのは、記念品です。配った記念品は、相手の手元で使われ続けます。周年で終わらせるつもりの言葉を記念品に入れると、周年が過ぎても、その言葉は相手のところで目に触れ続けます。それで構わないのか、入れずにおくのかを、置く前に決めます。入れるなら、その場所では言葉が残ると分かったうえで入れます。 外せる場所にも、外し忘れがあります。周年が終わったあとも、サイトの隅やメールの署名に残っていると、時期を過ぎた言葉に見えます。どこに置いたかの一覧を作っておくと、外す日に探さずに済みます。 周年の期間だけ、いまのタグラインと並べていたなら、外したあとは、いまのタグラインだけに戻ります。 残すなら、いまの言葉との関係を決める 残すと決めたら、いまある言葉とどう並べるかを決めます。 いまタグラインがない会社なら、周年の言葉が、そのまま会社のタグラインになります。最初からそのつもりで選びます。決めるのは経営で、入れる言葉も長く使う前提で選びます。 いまタグラインがある会社には、三つの選び方があります。 置き換える。周年の言葉を新しいタグラインにして、いまのものを外します。タグラインを変えることになるので、タグラインの記事で「決めたあとに変えるか」として書いた判断が、そのまま要ります。変えれば、覚えてもらった分を一からやり直すことになります。 並べる。名刺やサイトに、短い一文が二つ並ぶことになります。読む側には、どちらが会社の約束なのかが分かりません。並べるなら、役割を分けます。いまのタグラインを会社の約束としてロゴの隣に置き、周年の言葉は別の場所で使う、という分け方です。 ステートメントの中に入れる。周年の言葉を、会社の考えを書いた文章の一文として残します。ロゴの隣には置かず、会社のことを知ろうとしてページを開いた人の目に入る形です。ステートメントの役割は、先に挙げたステートメントの記事に書きました。 いまのタグラインやロゴのうち、外の人がすでに目印にしている部分があるなら、周年の言葉で消さないようにします。何が目印になっているかの見つけ方は、ロゴを変更するとき。リニューアルで失うのは、見た目ではなく手がかりに書きました。 残すかどうかで、入れられる言葉が変わる 周年で終わらせるなら、その年だから言えることを入れられます。続いてきた年数、その年の出来事、支えてくれた人へのお礼。周年が終われば外すので、時間が経って古びる心配は要りません。 残すなら、時間が経っても指すところがずれない言葉にします。 年数を入れると、翌年から数字が合わなくなります。数字を外して読んでも意味が通るかを、確かめます。 「次の10年へ」のような言い方は、10年が過ぎると使えなくなります。 「これから」「新たな」のように、周年の時点から見た言い方も、時間が経つと指している時点がずれていきます。周年から何年か経って読むと、いつから見た「これから」なのかが分かりません。 タグラインの記事には、形の選び方として「ただ、動詞には期間の含みが出ます。」と書きました。名詞で止めると、時間の含みが消える、という話です。残す言葉は、この見方で形を選べます。 残す言葉をどう作るかは、タグラインの作り方そのものになります。何を約束するのかを先に決め、それから短くする。スローガンをうまく作る方法を聞かれたら、残す言葉については、タグラインの記事の順番で作る、というのが答えです。 周年スローガンの例を並べた記事や画像は、探せば見つかります。ただ、例から選ぶと、残すか終わらせるかが決まっていない言葉を選ぶことになります。行き先を決めてから例を見るほうが、選ぶ基準がはっきりします。 周年ロゴも、同じ問いで決める 周年の言葉と一緒に、周年ロゴを作ることがあります。周年ロゴにも、言葉と同じ二つの行き先があります。 周年で外すなら、周年の期間だけ、いまのロゴの隣に置きます。終わったら、いまのロゴだけに戻ります。 残す、あるいはいまのロゴに組み込むなら、それはロゴを変えることになります。ロゴを変える前に、いまのロゴの何が外の人の手がかりになっているかを確かめる話は、ロゴを変更するときの記事に書きました。周年の印を足したことで、その手がかりが見えにくくならないかを見ます。 言葉とロゴの行き先は、そろえておきます。言葉は周年で外したのに、周年ロゴだけが残っていると、何の印なのかが分からなくなることがあります。 周年ロゴを考えるときに最初に決めるのも、形より行き先です。周年で外すのか、いまのロゴに組み込むのか。そこが決まると、いまのロゴにどこまで手を入れてよいかが決まります。 誰が、いつまでに決めるか 周年は、期限が外から決まる機会です。ブランディング会社の選び方。4つの型と、自社に必要な型の見分け方でも、周年を、上場や大型の催事と並べて、「動かせない期限が外にある場合」の例に挙げました。 残すなら、決めるのは経営です。経営で決める話には、時間がかかります。周年ロゴ、記念誌、特設のページ、記念品は、言葉が決まってから作るので、言葉はそれより前に決めておきます。言葉が遅れると、それに合わせて作るものが、順に遅れます。 周年で終わらせるなら、担当の中で決められます。外す日と、外せない場所に入れるかどうかは、周年の計画と一緒に決めます。 決めた理由も残しておきます。なぜ残すことにしたのか、なぜ周年で終わらせたのか。次の周年が来たとき、同じ問いがまた出ます。そのとき、前の周年で何を考えたかが分かれば、話が早く進みます。タグラインの記事にも、変えないと決めたときの記録を残す話を書きました。周年の言葉でも、考え方は同じです。 言葉の前に、行き先を決める 周年スローガンは、言葉を考える前に、周年が終わったあとも使うのか、周年で終わらせるのかを決めます。 残すなら、いまのタグラインやステートメントとの関係を決め、決めるのは経営です。周年で終わらせるなら、外す日と、外せない場所に入れるかどうかまで決めます。 行き先が決まれば、決める人も、入れる言葉も、置く場所も決まります。言葉を選ぶのは、そのあとです。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ロゴガイドラインの作り方。データを渡す前に、相手の判断を済ませておく ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法 ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのか 記事一覧を見る

映像制作を依頼する前に。尺より先に、見られる場面を決める

映像制作を依頼する前に。尺より先に、見られる場面を決める

映像制作を依頼するとは、自社で使う映像の企画・撮影・編集の一部、またはまとめてを、外の会社や個人に任せることです。 映像制作を依頼する前に決めるのは、尺や本数より、その映像が見られる場面です。どこで、誰が、どんな状態で、どれだけのあいだ見るのか。場面が決まれば、尺も、音を入れるかどうかも、縦か横かも決まります。どの工程から先を頼めばいいかも見えてきます。 ブランディングを頼む会社を型から選ぶ話は、ブランディング会社の選び方。4つの型と、自社に必要な型の見分け方に書きました。この記事では映像に絞ります。見られる場面の決め方、「会社紹介の映像を1本」という頼み方で起きること、場面から決まること、尺と本数の決め方、頼む相手の種類、社内で用意しておくもの、小さく始めること、頼んだあとに判断する場面を書きます。 映像制作を頼むとき、最初に決めること 最初に決めるのは、その映像が見られる場面です。 場面は、四つのことで決まります。どこで見られるか。誰が見るか。見る人がどんな状態にいるか。どれだけのあいだ見ていられるか。 たとえば、次のような場面があります。 展示会のブースの前を、歩きながら通りすぎる人が、横目で見る 採用の説明会で、席に座った学生が、前の画面を見る SNS で、指で画面を流しながら、目に留まったものを見る 店の会計の列に並んだ人が、待つあいだにモニターを見る 商談の席で、営業が向けた画面を、相手が見る どれも「会社を知ってもらう映像」と呼べます。ただ、見る人の状態がまるで違います。歩いている人と、座っている人と、指で流している人とでは、同じ映像を同じようには見てくれません。 頼むときに、「動画」と言うか「映像」と言うかで迷うことがあります。頼む中身は変わらないので、頼むときには区別しなくて構いません。この記事では「映像」と書きます。 場面を決めるのは、頼む側です。使うつもりの場所は、社内の人にしか分からないからです。 「会社紹介の映像を1本」では決まらない 映像を頼むときに出てくる言い方の一つに、「会社紹介の映像を1本」があります。 会社紹介は、中身の名前です。どこで見せるかは、まだ入っていません。 場面が決まらないまま作ると、1本をあちこちで使うことになります。展示会のモニターで流すと、通りすぎる人には長すぎて、最初のほうしか目に入らないことがあります。説明会で流すと、今度は説明が足りないと感じられることがあります。SNS に載せると、最初の短いあいだに何の映像か分からず、流されてしまうことがあります。 どの場面でも、映像そのものの出来は悪くありません。合っていないのは、場面のほうです。見られる場面を聞かずに作り始めると、尺と本数だけが決まった映像になります。 映像は、見る人がその場を離れれば終わります。展示会なら、映像を見て足を止めた人に、ブースの誰かが話しかけます。説明会なら、映像のあとに質疑があります。映像は、そのあとに続く場面の手前に置かれるものです。前の場面と次の場面がつながっているかどうかは、ブランド体験とは。接点のあいだで割れないように、順番で考えるで書いた、場面と場面のあいだの話と同じです。 場面が決まると、決まること 場面が決まると、映像の形がいくつも決まります。 図をタップすると、拡大して見られます 展示会のブース 採用説明会の画面 SNS の投稿 店頭のモニター 見る人の状態歩きながら、立ち止まるかを決める座って、終わるまで見る指で流しながら見る待つあいだ、ときどき目を向ける 音周りの音で聞こえないことがある音を聞いてもらえる音を消して見られることがある音を出せないことがある 長さの考え方通りすぎるまでに伝わる長さ説明会の流れの中で決める最初の短いあいだで、何の映像か分かる繰り返し流す。どこから見ても分かる 縦横会場のモニターに合わせる会場の画面に合わせる載せる先の形に合わせる(縦のことがある)置くモニターに合わせる この表は、場面ごとの違いを示す例で、私たちの整理です。同じ展示会でも、会場の広さやモニターを置く位置で変わります。 音は、場面で決まるものの一つです。展示会の会場では、周りの話し声で音が届かないことがあります。SNS では、音を消したまま見る人がいます。音が届かない場面で使うなら、音を消しても分かる作りにして、字幕や画面の文字で伝えます。 長さも、場面から決まります。座って見る説明会なら、説明会の流れのどこに置くかで決められます。通りすぎる人に見せるなら、通りすぎるまでのあいだに伝わる長さにします。店頭のように繰り返し流すなら、どこから見始めても分かることが要ります。 縦か横かは、映す画面で決まります。会場のモニターには会場の事情があり、SNS には載せる先の形があります。 画面に入れる文字の大きさも、見る距離で変わります。離れたモニターで流すなら、遠くからでも読める大きさが要ります。手元のスマートフォンで見るなら、そこまで大きくしなくても読めます。同じ文字でも、場面が違えば、読めるかどうかが変わります。 最初に何を映すかも、場面で変わります。座って見る人には、話の入り口から順に見せられます。流して見る人には、最初の短いあいだに、何の映像かが伝わる必要があります。 使う場所から決める考え方は、ロゴについてロゴ制作の依頼。何が納品されるかで、見積もりは変わるに、「使う場所の一覧が、そのまま納品物の一覧になります」と書きました。色やロゴの置き方の記事でも、使う場所を先に並べてきました。映像でも、場面の一覧が、何を何本作るかの一覧になります。 違うのは、使い回せる幅です。ロゴは、縦組みや横組み、1色の版をそろえておけば、形を変えて置けます。映像は、長さや見せる順番まで場面に合わせて作るので、1本を別の場面に回すと、合わないところが出てきます。 場面が二つ以上あるなら、どれを主にするかを決めておきます。主の場面に合わせて作り、ほかの場面では短く切って使う、という分け方もあります。 尺と本数は、場面のあとに決める 尺と本数から先に決めると、場面に合わない映像になることがあります。 「◯分の映像を1本」と決めてから場面を考えると、その長さが合う場面を探すことになります。場面を先に決めれば、尺は場面から出てきます。場面が二つなら、長さも二つ要るかもしれません。 場面ごとに作れば、本数は増えます。ただ、本数が増えても、撮る日が同じだけ増えるとは限りません。撮影は、出る人と場所と日程をそろえる仕事です。一度にまとめて撮っておき、場面ごとに編集し分ければ、撮る日は増やさずに済むことがあります。 そのためには、撮る前に場面の一覧ができている必要があります。撮ったあとで別の場面を思いつくと、縦の画面に収まらない構図で撮っていた、話し声をきれいに拾っていなかった、と分かることがあります。 撮ることと編集することを分けて考えると、本数の決め方が変わります。撮る日を一つにまとめて、編集で場面ごとの形にする。この分け方は、頼む相手を選ぶときにもつながります。 どの工程から先を頼むかで、相手が決まる 映像を作る工程は、大きく四つに分かれます。企画(場面と伝えることを決めて、構成を作る)、撮影、編集、出す(広告の枠などに載せる)です。 頼む相手は、どの工程から先を頼むかで決まります。社内で決まっているところまでを持っていき、その先を頼む、という考え方です。 図をタップすると、拡大して見られます どこから先を頼むか 社内で決まっていること 向く相手 編集から場面と構成が決まり、撮った素材がある編集を受ける個人や会社 撮影から場面と構成が決まっている撮影と編集を受ける個人や、映像制作会社 企画から場面だけが決まっている。または、映像が要ることだけが決まっている企画から受ける映像制作会社や、企画から一緒に考える会社 出すところまで広告の枠に載せることが決まっている広告代理店 この表も、私たちの整理です。一つの相手が、いくつもの工程を受けることもあります。 何が決まっているかで頼む相手を選ぶ考え方は、ブランディング会社の選び方の記事に、会社の型として書きました。映像では、同じことが、企画・撮影・編集・出すという工程の単位で起きます。 場面と構成が決まっていて、撮った素材も手元にあるなら、編集から頼めます。編集を受ける個人に頼むのが速いこともあります。頼む先に、クラウドソーシングのサービスを使うこともできます。向いているのは、何を、どの長さで、どの形に仕上げるかがはっきりしている仕事です。範囲がはっきりしているほど、受ける側も迷わずに済みます。 場面だけが決まっていて、構成がまだなら、企画から受ける相手に頼みます。映像が要ることだけが決まっている段階なら、なおさらです。 企画から頼むところで、編集だけを受ける相手を選ぶと、決まっていないところを受けた側が埋めることになります。そこで噛み合わないのは範囲のほうで、相手の腕の問題とは限りません。 広告の枠に載せるところまで頼むなら、広告代理店が向きます。どの枠に、いつ、どれだけ出すかの設計と、一緒に頼めるからです。 私たちは、映像を、ブランドの決めごとやサイト、空間と分けずに引き受けることもあります。なぜ分けないのかは、なぜ私たちは、ブランディングも空間も映像も分けないのかに書きました。ただ、分けずに頼むのが合う場面ばかりではありません。範囲がはっきりしていれば、工程ごとに頼むほうが速く進みます。 どこから頼む場合も、撮った素材の扱いは頼む前に確かめておきます。撮った元のデータをもらえるか、別の場面に使ってよいか、映っている人の扱いをどうするか。あとで別の場面に使おうとしたときに、ここで困ることがあります。法律の細かい扱いには、ここでは踏み込みません。 社内で用意しておくもの 頼む前に、社内で用意しておくと話が早く進むものがあります。 一つめは、場面の一覧です。どこで、誰が、どんな状態で、どれだけのあいだ見るか。使うつもりの場面ごとに書きます。 二つめは、出る人と、その人が話す中身です。社員が話す映像では、何人かが話すことがあります。話す中身がそろっていないと、撮り終えてから食い違いに気づいて、撮り直しになります。採用の映像について同じことを、採用ブランディングとは。採用広報との違いと、手をつける順番に書きました。 三つめは、映してはいけないものです。取引先の名前、設備の配置、机の上の書類。映してはいけないものが分かるのは、社内の人です。撮る前に一覧にしておく話は、製造業のブランディング。製品に名前が載らない会社は、何を伝えるかに書きました。 四つめは、判断する人です。打ち合わせに出る人と、最後に決める人が同じかどうか。違うなら、最後に決める人がどの段階で見るかを決めておきます。 揃っていなくても、始められます。場面を一緒に決めるところから始める相手を選べば足ります。 短い映像1本から始める 映像を頼むのは、大きな1本からでなくても構いません。 私たちも、SNS 用の短い映像1本のような仕事から引き受けています。 頼む側は、1本目でその場面に合っているかを確かめてから、次の場面に広げられます。SNS での見られ方が分かれば、同じ撮り方で展示会用を作るか、別に撮るかを決める材料になります。 小さく始めるときも、場面は決めておきます。1本だけだからこそ、どこで誰が見るかがはっきりしていれば、合っていたかどうかを確かめられます。 1本目で撮った素材を、次の場面で使えるかどうかは、頼む前に確かめた素材の扱いで変わります。受け取れるようにしておけば、次の1本で使える部分が出てきます。 頼んだあと、こちらが判断する場面 頼んだあとにも、頼む側が判断する場面があります。 企画の段階では、場面と伝えることが、こちらの意図と合っているかを見ます。構成を見るときは、場面の一覧と並べて見ます。 撮影の前には、構成、出る人、場所、日程を決めます。映してはいけないものの一覧も、ここで渡します。 仮の編集では、見られる場面と同じ条件で見ます。展示会で流すなら、モニターから離れて立って見る。SNS に載せるなら、スマートフォンで、音を消して見る。会議室の大きな画面で、座って見ると、見られる場面とは条件が変わります。 リブランディングが失敗するとき、デザインは悪くないでは、パッケージについて「画面の中と、売り場では距離が違う」と書きました。映像も同じで、作った画面の前で見ているかぎり、見る人のいる場面とは違う見方をしています。 納品の形では、場面ごとに、縦横、字幕のあるなし、長さの違う版がそろっているかを確かめます。 どの段階で何を判断してもらうかは、引き受けた側が最初に示しておくものです。 場面が決まれば、頼み方が決まる 映像を頼む前に決めるのは、尺や本数より、その映像が見られる場面です。 どこで、誰が、どんな状態で、どれだけのあいだ見るのか。そこが決まれば、尺も、音も、縦横も決まります。社内で決まっている範囲が分かれば、どの工程から先を頼めばいいかも決まります。 場面の一覧を1枚持って相談に行けば、最初の打ち合わせで、何を何本、どの形で作るかまで話を進められます。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 コーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていない 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製造業のブランディング。製品に名前が載らない会社は、何を伝えるか

製造業のブランディング。製品に名前が載らない会社は、何を伝えるか

製造業のブランディングとは、ものを作る会社が、取引先や働く人から選ばれる理由をはっきりさせ、揃えて伝えていく取り組みです。 製造業には、作ったものに自社の名前が載らない仕事があります。部品、素材、受託製造。名前が載らない仕事で伝えるのは、製品の良さより、取引先がなぜ頼み続けているかという理由です。 会社と会社のあいだで取引する事業に共通する伝わり方は、BtoBブランディングとは。会っていない人に、どう伝わるかに書きました。この記事では、製造業に固有の、名前が載るかどうかという点から入ります。そのうえで、誰に伝えるか、頼み続けられている理由の言葉にし方、受託と自社ブランドを両方持つとき、現場を見せるとき、採用までを書きます。 製造業のブランディングとは 製造業のブランディングでは、作るものが話の中心にあります。 店舗や接客で選ばれる仕事と違って、選ばれる理由が、品質、納期、工程の確かさといった、外からは見えにくいところにあります。手に取った人が気づくのは、そのうちの一部です。 製造業と一口に言っても、作るものの幅は広くあります。機械の部品、建物に使う素材、食品、日用品、産業用の装置。売る相手も、別の会社であることもあれば、店に並べて一般の人に売ることもあります。 製造業の会社がブランディングを考え始めるきっかけは、いくつかあります。代替わりで、先代が持っていた取引先との関係を、言葉で引き継ぐ必要が出たとき。新しい取引先を探し始めたとき。働く人が集まらなくなったとき。自社の名前の製品を出そうとしたとき。どのきっかけでも、まず確かめるのは、いま何で選ばれているかです。 ただ、作るものが違っても、共通して伝え方を分けるものがあります。作ったものに、自社の名前が載るかどうかです。次の章で、その違いを並べます。 私たちも、食品の製造をしている会社と仕事をしたことがあります。業種によって作るものは違っても、選ばれる理由が外から見えにくいという点は、ものを作る会社に共通していると考えています。 名前が載る仕事、載らない仕事 製造業の仕事は、作ったものに誰の名前が載るかで、三つの型に分けて見ることができます。 自社ブランドの製品 部品・素材 受託製造 最後に手に取る人に見える名前自社の名前取引先の製品の名前依頼主の名前 選ぶ人買う人取引先の設計や購買の担当依頼主 伝える場所売り場、パッケージ、サイト商談、展示会、技術資料商談、紹介 表の分け方は、私たちの整理です。 図をタップすると、拡大して見られます 自社ブランドの製品は、名前が載ります。自社の名前の付いた道具や食品が、店に並びます。この型では、買う人に向けたブランディングが、ほかの業種と同じように効きます。 部品や素材は、名前が載りません。自動車や家電の中に入る部品、建物に使われる建材、ほかの会社の製品の材料。最後にそれを手に取る人は、取引先の製品の名前で覚えます。 受託製造も、名前が載りません。食品、化粧品、日用品など、依頼主の名前で売られる製品を作る仕事です。作ったのが誰かは、表に出ないことが前提になっています。 一つの会社の中に、型が混ざっていることもあります。部品を作りながら自社の製品も持っている、受託で作りながら自社の名前でも売っている。混ざっているときの考え方は、あとの「受託と自社ブランドを両方持つとき」で書きます。 どの型に当たるかで、最初にやることが変わります。自社ブランドの製品なら、買う人に何を約束するかから始められます。部品や素材、受託製造なら、取引先がなぜ自社を選んでいるかから始めます。名前が載らない仕事で、買う人向けの手順をそのまま使うと、伝える相手を取り違えます。 名前が載らないとき、誰に伝えるか 名前が載らない仕事では、伝える相手が二つになります。 一つは、頼む側です。取引先の設計の担当、購買の担当、品質を確かめる担当。部品や素材の仕入れ先を決める人たちです。 もう一つは、働く人です。いま働いている人と、これから来る人。名前が製品に載らない会社は、働く人にとっても、自分の仕事が世の中のどこに出ているかが見えにくくなります。 最後に製品を手に取る人に、自社の名前を知ってもらう必要は、かならずしもありません。名前を知ってもらうための広告から始めると、頼む側にも働く人にも届かないまま、費用だけが出ていくことがあります。 頼む側の社内で、話がどう伝わっていくかは、BtoBブランディングの記事に書きました。商談に出た人が決める人とは限らず、話は社内で何度か要約されてから決める人に届く、という話です。この記事では、その要約される前の、そもそも何を伝えるかを扱います。 頼む側には、もう一つ事情があります。担当者が替わることです。部品や素材の取引は長く続くことがあり、そのあいだに、取引先の設計や購買の担当者は入れ替わります。前の担当者が知っていた頼む理由は、言葉になっていなければ、次の担当者には引き継がれません。引き継がれないと、新しい担当者は、価格や納期といった、数字で比べられる項目で、取引を見直すことがあります。 頼み続けられている理由を言葉にする 名前が載らない仕事で、取引が続いているなら、そこには頼む理由があります。 その理由は、製品の性能とは限りません。納期を守り続けていること。品質のばらつきが小さいこと。急ぎの相談にも応じること。少ない量でも引き受けること。図面に書いていない部分について、作る側から提案すること。どれも、性能表には載りません。 この理由を、社内で考えるより先に、取引先と現場から拾います。長く続いている取引先に、なぜ続けているかを聞く。現場の人に、取引先からどんなことを頼まれるかを聞く。 続いている取引先からは、選ばれている理由が出てきます。うまくいっていない点は、続いている相手からは出にくいので、そちらを知りたいときは、取引が途切れた相手に聞きます。ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法には、契約が続いている相手に聞いても、ずれは出てこないと書きました。聞く目的が違うので、聞く相手も変わります。 技術の話は、この理由の根拠として下に置きます。技術ブランディングという言葉もありますが、技術そのものを名前にして前に出すより、その技術で取引先の何が解決しているかを先に言うほうが、頼む側には伝わります。決める人は技術の中身を評価できない、という点は、BtoBブランディングの記事で書いたとおりです。 図をタップすると、拡大して見られます 拾った理由は、そのままの言葉で並べます。取引先が言った言葉には、取引先の側から見た理由が出ています。社内の言葉に置き換えると、作る側の見方に戻ってしまいます。並べたあとで、同じことを言っているものをまとめ、一つか二つに絞ります。絞るときは、ほかの会社でも言えることを外します。 言葉にしておくと、先に書いた担当者の交代のときに効きます。新しい担当者に、なぜ自社に頼んでいるのかを、前の担当者の記憶に頼らずに渡せるからです。 拾った理由は、社内で何人が言えるかを見ます。営業の担当は言えるのに、工場見学で案内をする人や、取引先に呼ばれて説明に行く技術者が言えない、ということがあります。製造業では、営業以外の人が取引先と話す場面があります。工場の見学、品質の確認、試作の打ち合わせ。そこで話す人が同じ理由を言えるかどうかで、取引先に残るものが変わります。 見た目から作り始める進め方もあります。ロゴを新しくする、パンフレットを作り直す、サイトを整える。どれも要る作業です。ただ、頼み続けられている理由が言葉になっていないまま見た目を整えると、整ったけれど何を頼める会社かが分からない、という仕上がりになります。理由を先に言葉にしておくと、見た目を決めるときの基準になります。 受託と自社ブランドを両方持つとき 受託で作りながら、自社の名前の製品も出している会社があります。 このとき、依頼主の製品と、自社の製品が、同じ売り場に並ぶことがあります。依頼主から見ると、頼んでいる相手が、自分の製品の隣で売っていることになります。自社ブランドを前に出すほど、依頼主からは競合に見えてきます。 だから、何を自社ブランドで出し、何を受託に残すかの線を決めておきます。売る場所で分ける、扱う品目で分ける、価格の帯で分ける。どこで線を引くかは、会社によって違います。線が決まっていないと、営業の担当ごとに説明が変わり、依頼主に不安を残します。 図をタップすると、拡大して見られます 自社の名前の製品を出すときは、社名と製品名をどう並べるかも決めます。社名を前に出すのか、製品名だけで立てるのか。その決め方は、ブランドアーキテクチャとは。ブランド体系を、後から並べ直すに書きました。製品が増えていくときに、何を共通にして何を分けるかは、商品ブランディングとは。共通にするものと、分けるものを決めるにあります。 受託の仕事から、自社の名前の製品を新しく始める会社もあります。このとき、受託で選ばれている理由と、自社の製品で約束することが、同じ方向を向いているかを確かめます。受託で品質の安定を理由に選ばれている会社が、自社の製品では目新しさだけを打ち出すと、取引先から見た会社の姿と、売り場で見える姿が離れます。受託で積み上げてきた理由を、自社の製品の約束に生かせるかどうかが、始めるときの分かれ目になります。 依頼主とのあいだで、どこまで自社の製品を出してよいかは、契約で決まっていることもあります。その確認は、ブランディングの前に済ませておきます。 現場を見せるとき、見せないもの 製造業のブランディングでは、工場や工程、働く人の様子を見せたくなる場面があります。 言葉で説明しにくい確かさは、現場を見せると伝わることがあります。機械が並ぶ様子、検品の手つき、整えられた作業場。頼む側にとっても、働く人を探すときにも、現場は手がかりになります。 ただ、製造業の現場には、見せられないものがあります。取引先の名前や、取引先から預かった図面。配合や工程の細かい手順。設備の配置。受託の仕事なら、依頼主の製品そのものが写せないこともあります。 何を写してはいけないかを知っているのは、社内の人です。外から来た人には、どの棚の何が取引先のものか、どの機械の設定が見せられないものかは分かりません。撮影や取材を頼む前に、見せないものを社内で一覧にしておきます。 一覧があると、撮る側も、見せられる範囲の中で何を撮るかを考えられます。一覧がないまま撮ると、撮ったあとで使えない写真が出て、撮り直しになることがあります。 撮ったあとに、外に出す前の確認をする人も、社内で決めておきます。写真の隅に取引先の箱が写っていた、ホワイトボードの書き込みが読めた、ということは、撮ったあとに見て気づくことがあります。見せないものの一覧を作った人が確かめると、見落としが減ります。 何を見せたいかも、社内で決めておけるものです。頼み続けられている理由が言葉になっていれば、その理由が伝わる場面を、見せられる範囲の中から選べます。 見せられないものを抱えている会社ほど、取引先と現場から拾った理由を、言葉で伝える比重が上がります。見せられる現場が少なくても、なぜ頼み続けられているかは言えます。 名前が知られていない会社の採用 名前が製品に載らない会社は、働く候補者にも、名前が知られていないことがあります。 働く人を探すときに伝えるのも、頼み続けられている理由です。何を、誰のために作っているか。自分の仕事が、どの製品の中に入り、誰の役に立っているか。それが言えると、名前を知られていない会社でも、候補者が仕事を思い浮かべられるようになります。 最終製品の名前を出してよいかは、取引先との約束によります。出せないなら、製品の種類や使われる場面で伝えます。〔 〕の中に入っている部品、〔 〕に使われている素材、という言い方です。 この言葉は、いま働いている人にも効きます。名前が載らない仕事では、自分が作っているものが、世の中のどこで使われているかが、働く人自身にも見えにくくなります。頼み続けられている理由が社内で言葉になっていると、自分の仕事が誰の何を支えているかを、働く人が説明できるようになります。 採用で伝える言葉を、社内で揃える進め方は、採用ブランディングとは。採用広報との違いと、手をつける順番に書きました。面接に出る人が、同じ理由を言えるかどうかを、先に確かめます。 名前が載らないから、理由を言う 製造業のブランディングは、作ったものに自社の名前が載るかどうかで、何を伝えるかが変わります。 名前が載る製品は、買う人に向けて伝えます。名前が載らない仕事では、頼む側と働く人に向けて、取引先がなぜ頼み続けているかを伝えます。その理由は、取引先と現場から拾い、技術はその根拠として下に置きます。 名前は製品の上に出なくても、頼み続けられている理由は、言葉にして社内で揃えられます。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方 中小企業のブランディング。決めたあとに時間を使う進め方 ブランドストーリーとは。材料の探し方と、どれを選ぶかの基準 記事一覧を見る

ブランド体験とは。接点のあいだで割れないように、順番で考える

ブランド体験とは。接点のあいだで割れないように、順番で考える

ブランド体験とは、相手がそのブランドに触れる場面を、知るところから使い終わるところまで、順に通っていく経験の全体です。サイトを見る、問い合わせる、返事を受け取る、店に行く、商品が届く。そのどれもが体験の一部です。 体験は、接点の一つひとつより、接点から次の接点に移るところで決まります。接点ごとに良くできていても、移り目で調子が変われば、相手の側では体験が割れます。だから、接点ごとに整えるより、相手が通る順番で考えます。 この記事では、ブランドイメージとの関係を整理したうえで、体験が順番に起きること、移り目で割れる例、相手が通る順の書き出し方、約束で照らすこと、移り目を誰が持つか、確かめ方を書きます。 ブランド体験とは何か ブランド体験は、相手がブランドと接したときに起きる出来事の連なりです。 広告やサイトのように、会社が用意して見せるものだけではありません。電話の応対、届いた荷物の開け方、納品のあとに来る連絡。相手が通るところは、どこでも体験になります。 ブランドイメージとは、近いけれど別のものです。イメージは、相手の中に残った印象のほうです。体験は、その印象を形づくる出来事のほうにあたります。ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法に、イメージは相手の中にあるので直接は書き換えられない、と書きました。会社が手を入れられるのは、体験の側です。 体験を考える理由は、相手が会社を、説明より出来事で知っていくことにあります。サイトに書いてあることを読むより先に、問い合わせの返事が届き、打ち合わせの日程が決まり、品物が届きます。相手はそのたびに、この会社はこういう会社だ、という手がかりを積み重ねていきます。説明は一度読めば終わりますが、出来事は取引が続くかぎり起き続けます。 似た言葉に、BX(ブランドエクスペリエンス)、CX(カスタマーエクスペリエンス)、UX(ユーザーエクスペリエンス)があります。どこまでを指すかは、使う人ごとに幅があります。ここでは言葉の比べ方には入らず、ブランドに触れる場面のつながりを、ブランド体験と呼んで書きます。 体験を考えるとき、場面を一つずつ思い浮かべることから始めることがあります。店の内装、サイトの見た目、パッケージ。それぞれを整えていく作業です。その作業自体は要ります。ただ、この記事で扱いたいのは、その場面と場面のあいだです。 体験は、順番に起きる 制作物は、並べて見比べられます。 名刺とサイトと会社案内を机に並べれば、色や書体や言い方が揃っているかが分かります。揃っていないと別の会社のものに見える、という見方は、ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかでも扱いました。 体験は、そうは見えません。一人の相手が、時間の順に通っていくものだからです。サイトを見て、問い合わせて、返事を受け取って、打ち合わせで会って、品物が届く。相手は、前の場面を覚えたまま、次の場面に入ります。 図をタップすると、拡大して見られます たとえば、業務用の機械を扱う会社に、新しく取引を考える担当者が問い合わせたとします。サイトで製品を調べ、問い合わせのフォームを送り、営業の担当から電話が来て、打ち合わせのあとに見積書が届き、契約して、機械が届き、設置の担当者が来る。担当者は、この順番で会社に触れていきます。サイトで読んだ言葉を覚えたまま電話を受け、電話で聞いた話を覚えたまま見積書を読みます。 この順番の中で、会社の側の担当は何度も替わります。サイトを作った人、フォームを受けた人、営業、見積もりを書いた人、配送、設置。相手は一人のまま通っていきますが、迎える側は場面ごとに別の人です。 私たちは、なぜ私たちは、ブランディングも空間も映像も分けないのかの中で、「体験というのは、要素の合計ではなく、要素のあいだに宿ります」と書きました。食のイベントで、会場からメニュー、スタッフのユニフォームまでを設計した例です。一つずつの出来より、あいだのつながりで体験が決まる、という話でした。 並べて揃っていることと、順に通ってつながっていることは、同じではありません。机の上では揃って見えるのに、順に通ると途中で調子が変わる、ということが起きます。次の章は、その起き方です。 移り目で割れる 割れ方には、型があります。 サイトでは丁寧で落ち着いた言葉づかいなのに、問い合わせの電話に出た人の話し方が、まったく別の調子になっている 店の内装は静かで落ち着いているのに、持ち帰る袋や包装だけが、にぎやかな別の世界観になっている 展示会のブースで話した内容と、後日届いた見積書の書き方が噛み合わず、同じ会社と話していた感じがしない 図をタップすると、拡大して見られます どの接点も、単独で見れば良くできています。サイトも、電話の応対も、店も、袋も、ブースも、それぞれの担当がきちんと作っています。割れているのは、その移り目のほうです。 相手の側に残るのは、どこかで調子が変わった、ということだけです。それが電話のせいなのか、サイトのせいなのかは、相手は切り分けません。 移り目で割れることは、接点ごとに見ていると気づけません。サイトの担当はサイトを見て、電話の担当は電話の応対を見ます。それぞれが自分の場面を確かめると、どちらも問題なく見えます。問題は、二つを続けて通った人にしか見えないところにあります。 場面ごとに違う会社に見える、という結果は、これまでの記事でも扱ってきました。ブランドパーソナリティとは。アーカーの5次元と、形容詞で終わらせない決め方では、人の像が決まっていないことを原因として書き、ブランドプロミスの記事では、例外のときの扱いが人によって違うことを原因として書きました。この章で見ているのは、担当が替わる境目という原因です。接点ごとに担当が違うと、それぞれが自分の場面だけを見て作るので、境目で調子がずれます。 相手が通る順に書き出す 移り目を見つけるには、相手が通る順に、接点を書き出します。 相手を一人に決める。新しく取引を始める会社の担当者、初めて店に来る人、などです その人が最初にブランドを知る場面から、使い終わったあとまでを、通る順に書く 接点ごとに、担当を書き添える。社内の部署なのか、外の会社なのか 担当が変わる移り目に、印をつける 相手を一人に決めるのは、相手によって通る順番が違うからです。取引先の担当者と、店に来る人とでは、最初に触れる場面も、通る道筋も違います。全員の順番を一枚に重ねて書くと、どこからどこへ移るのかが見えなくなります。 書き出す形は、〔知る場面〕→〔調べる場面〕→〔問い合わせる場面〕→〔会う場面〕→〔受け取る場面〕→〔使ったあとの場面〕のように、横に並べる形が向いています。〔 〕の中に、自社の場面を入れます。その下に、担当の欄を一行つくります。 接点の一覧とは、見ているものが違います。一覧は、相手がどこで会社に触れるかを並べたものです。順番の書き出しは、どこからどこへ移るかを並べたものです。一覧では、接点の数を数えられます。順番では、移り目の数を数えられます。 印がついた移り目が、割れるおそれのあるところです。担当が替わるので、その前後の両方を見ている人がいません。前の担当は、自分の場面が終わったところで手を離し、次の担当は、自分の場面が始まるところから手をつけます。そのあいだは、誰の場面でもありません。 書き出してみると、移り目の数が思っていたより増えることがあります。外に頼んでいる場面が混ざっていると、とくに担当の欄が細かく分かれます。印の数が、そのまま、体験が割れうる場所の数です。 担当の欄は、社内の分だけでなく、外の会社が受け持っている場面まで埋めます。外の会社の場面だけが空欄だと、そこの前後の移り目が見えなくなります。 先に挙げた業務用の機械の例で書き出すと、担当の欄はこうなります。サイトは外の制作会社、フォームの受付は事務、電話と打ち合わせは営業、見積書は営業の別の担当、配送は外の運送会社、設置は技術の部署。六つの場面に、六つの担当が並びます。担当が変わる移り目は五つあり、そのうち三つは社外との境目です。 図をタップすると、拡大して見られます 印をつけ終えたら、どの移り目から見るかを決めます。社外との境目は、前後を見ている人が社内にいないことがあるので、先に見る候補になります。相手が次の判断をする直前の移り目、たとえば見積書が届くところも、先に見る候補です。 移り目を、約束で照らす 印をつけた移り目は、約束で照らします。 移り目の前と後で、同じ約束が守られているか。サイトで約束していたことが、電話の応対でも守られているか。店で約束していたことが、包装でも守られているか。前の場面で相手が受け取った約束を、次の場面が知らずに作られていると、移り目で約束が途切れます。 約束が具体であれば、途切れていることに気づけます。どの約束をどこまで具体に言うかは、ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するかに書きました。抽象的な約束だと、どの場面もそれを守っているように見えて、移り目の途切れが見えません。 移り目で受け渡すものもあります。前の場面で、相手が何を聞き、何を伝えたか。展示会のブースで話した内容が、見積書を書く担当に渡っていなければ、相手は同じ説明をもう一度することになります。相手の側では、それも体験の一部です。 受け渡すものは、細かく決めなくて構いません。相手の名前と、前の場面で約束したことと、相手から聞いた要望。この三つが次の担当に届けば、相手は同じ話を繰り返さずに済みます。どこに書いて、誰が読むかを、移り目ごとに決めておきます。 図をタップすると、拡大して見られます 移り目を誰が持つか 担当が分かれる移り目には、前後の両方を知っている人を置きます。 置けない場合は、受け渡すものを決めておきます。前の場面で相手に何を約束したか、相手から何を聞いたか。それが次の担当に届く形になっていれば、移り目で途切れにくくなります。 移り目を見る人が持つ仕事は、大きくありません。前後の場面を、相手と同じ順に一度通して見ること。両側の担当に、同じ約束を渡すこと。どちらかの場面が変わったときに、もう一方の担当に知らせること。この三つです。前後の場面を自分で作る必要はありません。 見る人は、社内に置くほうが続きます。外の会社が入れ替わっても、移り目は残るからです。社内に、相手と最初に接する部署と、最後に接する部署の両方に話が通る人がいれば、その人が見る役に向いています。 接点ごとに別の会社に頼むと、それぞれの会社は、頼まれた接点の中を良くすることに力を使います。移り目は、頼まれた範囲のどこにも入っていません。接点ごとに頼むなら、移り目を誰が見るかを、頼む側で最初に決めておきます。決めていなければ、見る人がいないまま進みます。 私たちも、接点の一部だけを頼まれたときは、頼む側でそれを決めてもらえるように、移り目を見る人がいないと体験がちぐはぐになることを、最初にお伝えしています。ただ、その場では実感しにくい話です。割れた移り目は、続けて通ってみた人にだけ見えるからです。頼む側で一度、相手と同じ順に通してみると、話がはっきりします。 担当ごとに範囲が分かれると揃わない、という話は、ブランドガイドラインの記事で、制作物について書きました。制作物は、並べて突き合わせれば、揃っていないところが見つかります。移り目は、並べても見えません。順に通して見る人がいて、はじめて見つかります。 どこまでを一つの会社やチームに任せるかは、ブランディング会社の選び方。4つの型と、自社に必要な型の見分け方に書きました。一社にまとめた体制が勝るとは限りません。高度な専門が要る工程を外の会社に任せるのも、筋の通った判断です。その場合に確かめたいのは、外に出しても、移り目を見る人が残っているかどうかです。 私たちは、空間も映像もWebも分けずに引き受けることがあります。それは、移り目で割れることを避けるためです。ただ、分けずに頼むことが常に正しいわけではない、ということも、同じ記事に書きました。 同じ順番で、通ってみる 書き出した順番は、自分で通って確かめます。 サイトを開いて、問い合わせて、返事を受け取って、資料を読んで、店や事務所に行く。相手と同じ順に通ると、書き出したときには見えなかった移り目が見つかることがあります。電話をかけるまでの待ち時間や、返事が届くまでの間も、通ってみて初めて体験として感じられます。 社内の人が通ると、慣れているぶん、移り目に気づきにくくなります。どこで何が起きるかを知っているので、調子が変わっても違和感になりません。社外の人に、同じ順番で通ってもらうという選び方もあります。 印象を確かめる方法として、ブランドイメージの記事では、離れた相手に聞くことを書きました。聞いて分かるのは、相手に残った結果です。通ってみて分かるのは、その結果を生んだ移り目です。二つは、確かめているものが違います。 通るときは、書き出した順番を手元に置いておきます。印をつけた移り目に来たら、前の場面で受け取ったものが、次の場面でも続いているかを見ます。言葉づかい、見た目の調子、前の場面で話したことが伝わっているか。続いていなければ、その移り目に印を一つ足します。 通ったあとは、割れていた移り目から直します。接点をはじめから作り直す必要はありません。前後の担当をつなぐか、受け渡すものを決めるか。移り目に手を入れるだけで、体験のつながりは変わります。 割れるのは、あいだ ブランド体験は、接点の一つひとつより、そのあいだで決まります。接点ごとに良くしても、移り目で調子が変われば、相手の側では体験が割れます。 だから、相手が通る順に書き出して、担当が替わる移り目に印をつけます。その移り目を約束で照らし、誰が持つかを決め、同じ順に通って確かめます。 接点を良くする作業は、それぞれの担当が続けていきます。移り目は、誰かが見ると決めない限り、誰の仕事にもなりません。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳する コーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないもの インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方 記事一覧を見る

ブランドサイトとは。コーポレートサイトとの違いと、分けるかどうかの決め方

ブランドサイトとは。コーポレートサイトとの違いと、分けるかどうかの決め方

新しい商品やサービスを出すとき、「ブランドサイトを作りたい」という話が出ることがあります。会社のサイトはもうある。そこに載せるのでは足りないのか。別に作ると、何が変わるのか。 答えは、サイトの作り方より手前で決まります。訪れる人が何を決めに来るのか。そして、その人がどの名前でたどり着くのかです。 この記事で書くのは、ブランドサイトとは何かから、コーポレートサイトとの違い、分けるかどうかの決め方と、分けると増えるもの、分けないときにできること、載せるもの、そして閉じる日を作る前に決めておくことまでです。 ブランドサイトとは ブランドサイトは、一つのブランドのためのサイトです。ブランドは、商品のこともあれば、サービスのこともあります。ブランディングサイト、スペシャルサイトと呼ばれることもあります。 キャンペーンのために期間を区切って作る特設サイトとは、続く長さが違います。特設サイトは、催しが終われば役目を終えます。ブランドサイトは、そのブランドが続くあいだ続きます。 会社に一つあるサイトは、コーポレートサイトと呼ばれます。会社の概要、事業、採用、お知らせ。ブランドサイトは、その中の一つの商品やサービスを、外に出して独立させた形です。 コーポレートサイトとの違いは、問いにある 二つの違いは、載せる情報の種類で説明されることがあります。会社の情報を載せるのがコーポレートサイト、商品の情報を載せるのがブランドサイト。それも間違いではありません。 ただ、何を載せるかを決めているのは、その手前にある、訪れる人の問いです。 コーポレートサイトを開く人は、「この会社と付き合ってよいか」を決めに来ます。取引を考えている会社の担当者、応募を考えている人、取引先を確かめたい人。会社の規模、続いてきた年数、誰が経営しているか、何を大事にしているか。そうした情報が並ぶのは、この問いに答えるためです。BtoBブランディングとは。会っていない人に、どう伝わるかでは、サイトは担当者が上司に見せる場所だと書きました。それも同じ問いの中にあります。 ブランドサイトを開く人は、「これを選ぶか」を決めに来ます。買おうか迷っている人、使い方を知りたい人、ほかと比べている人。会社の沿革より、その商品で何ができるのか、自分に合うのか、どこで手に入るのかを知りたい人です。 図をタップすると、拡大して見られます 問いが違えば、同じ情報でも置き方が変わります。会社の創業の話は、コーポレートサイトでは信用の材料になります。ブランドサイトでは、選ぶ理由につながるところまで絞って置きます。 コーポレートサイトの側をどう見直すかは、コーポレートサイトのリニューアル。作り直す前に、何が変わったかを見るに書いています。 分けるかは、どの名前で来るかで決まる では、ブランドサイトを別に作るか、コーポレートサイトの中に置くか。 決め手は、訪れる人が、どの名前でたどり着くかです。 会社の名前は知らないけれど、商品の名前は知っている。そういう人が、商品の名前で探しに来るなら、その名前で迎える場所があったほうが話が早く済みます。会社の名前を知っている人ばかりなら、会社のサイトの中で足ります。 この見方は、名前の決め方から来ています。商品の名前に会社名を冠するかを、私たちは「その商品を買う人が、会社の名前を知っているかどうか」で考えています。その話は商品ブランディングとは。共通にするものと、分けるものを決めるとブランドアーキテクチャとは。ブランド体系を、後から並べ直すに書いています。サイトを分けるかどうかは、その判断をサイトに当てはめたものです。 当てはめると、三つの形に分かれます。 会社の名前で来る人ばかりなら、コーポレートサイトの中に置きます。取引先が会社を通して商品を知る場合が、これにあたります。 商品の名前で来る人が中心なら、分ける価値があります。店頭や紹介で商品の名前を知った人が、検索窓にその名前を打ち込む場合です。 両方の人がいるなら、コーポレートサイトの中に置いたうえで、商品の名前の入口を用意するという形もあります。商品の名前で探した人が、そのページに直接たどり着けるようにしておく。分けるか、まとめるかの二択にしなくても済みます。 図をタップすると、拡大して見られます 分けたほうがよい場面として、挙がる条件があります。客層が会社全体と違う、更新を身軽にしたい、ブランドごとに見せ方を変えたい。どれも、どの名前で来るかを確かめたうえで考えると、判断しやすくなります。 確かめ方は、手元にある材料で足ります。問い合わせのとき、相手は何と言ってきたか。営業の場で、商品の名前と会社の名前のどちらで呼ばれているか。頼む前に社内で一度確かめておくと、作る側との話も、分けるかどうかから始められます。 分けると、増えるもの 分けると、できることが増えます。同時に、増えるものもあります。 まず、更新する場所が二つになります。新しい情報を出すとき、コーポレートサイトとブランドサイトの両方に載せるのか、片方だけにするのか。決めておかないと、片方だけが古くなります。 次に、言っていることがずれる場所が増えます。ブランドサイトで約束したことと、コーポレートサイトの会社の説明が、少しずつ離れていく。どちらも同じ会社の言葉なので、見比べた人には分かります。 そして、誰が持つかが分かれます。コーポレートサイトは総務や広報、ブランドサイトは商品の担当。持つ人が分かれると、ずれに気づく人がいなくなります。分けると決めるなら、作る前に、それぞれの持ち主と、ずれたときに誰が揃えるかを決めておきます。 増えるものを見たうえで、それでも分ける理由があるなら分ける。その順番で考えると、作ったあとに手が回らなくなることを避けられます。 分けないときに、できること 分けないと決めても、ブランドのための場所を作れないわけではありません。 コーポレートサイトの中に、ブランドの入口になるページを置きます。会社の説明から入る人とは別に、商品の名前から入る人のための一枚です。そのページだけを見ても、その商品が何で、誰のためのものかが分かるようにしておきます。 並べ方にも気を配ります。会社の話とブランドの話が混ざると、どちらの問いにも答えにくくなります。会社のことを知りたい人の道と、商品を選びたい人の道を、ページの並びの上で分けておく。同じサイトの中でも、道を分けることはできます。 複数のブランドを持っているなら、ページの並びは名前の体系に合わせます。会社の下にどのブランドがあり、どれが同じ仲間か。体系が整理されていれば、サイトの並びも決まります。体系の整え方は、先に挙げたブランドアーキテクチャの記事にあります。 載せるものは、選ぶ判断の材料 ブランドサイトというと、世界観を伝える場所として語られることがあります。写真や映像で、ブランドの空気を感じてもらう。それは大切な役割です。 ただ、訪れる人の問いは「これを選ぶか」でした。世界観に惹かれた人が、次に知りたくなることがあります。 何ができるのか。自分の使い方に合うのか。ほかとどこが違うのか。どこで手に入り、困ったときにどこに聞けばいいのか。 このうち、ブランドの約束は、選ぶ判断を大きく左右します。約束を、相手が確かめられる形で言葉にする方法は、ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するかに書きました。 世界観と判断の材料は、どちらか一方ではありません。世界観で引きつけ、判断の材料で選んでもらう。順番の話です。世界観だけで終わっているブランドサイトは、惹かれた人を、選ぶ手前で帰してしまうことがあります。 図をタップすると、拡大して見られます 作る前に、閉じる日を決めておく ブランドサイトには、閉じる日が来ることがあります。商品の販売が終わる、ほかのブランドとまとめる、名前を変える。 閉じたあとも、そのブランドの名前で探しに来る人はいます。古い紹介記事を見た人、以前買った人、名前だけを覚えていた人。その人たちが、どこにたどり着くかを、あらかじめ決めておかなければなりません。 この話には、近いものがすでに二つあります。名前をやめるときに、やめる日まで決めておく話は、ブランドアーキテクチャの記事に書きました。サイトを作り直すと、これまでの入口が切れることがある話は、コーポレートサイトのリニューアルの記事にあります。 ここで書いておきたいのは、それを作る前に決めておくことです。閉じると決まってから考えると、閉じる作業と、行き先を決める作業が同時に来ます。作る前なら、閉じるときの行き先を、落ち着いて決められます。たとえば、コーポレートサイトのどのページに案内するか。 図をタップすると、拡大して見られます 作る前に閉じる日の話をするのは、縁起の悪いことのように感じられるかもしれません。ただ、分けたサイトは、分けたぶんだけ、終わり方も別に考えることになります。 相手がどの名前で来るかから決める ブランドサイトとコーポレートサイトの違いは、載せる情報より、訪れる人が何を決めに来るかにあります。そして分けるかどうかは、その人がどの名前でたどり着くかで決まります。 作り方を考える前に、相手がどの名前で来るのかを確かめる。分けるなら、増えるものと、閉じる日まで見ておく。分けないと決めても、ブランドの入口は作れます。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランド名の決め方。名前ひとつに、全部を言わせない ブランドマネジメントとは。プロジェクトが終わる日に、何を誰に渡すか コーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないもの 記事一覧を見る

ブランドマネジメントとは。プロジェクトが終わる日に、何を誰に渡すか

ブランドマネジメントとは。プロジェクトが終わる日に、何を誰に渡すか

ブランディングのプロジェクトが終わりました。ロゴも、色も、言葉も決まり、ガイドラインも納品されました。打ち上げも済んで、関わった人たちはそれぞれの仕事に戻っていきます。 では、明日から誰が何をするのか。ここが決まらないまま、終わりの日を迎える会社もあります。 この記事で書くのは、ブランドマネジメントとは何かから、プロジェクトが終わる日に何を誰に渡し、受け取った人が何をするかまでです。 ブランドマネジメントとは ブランドマネジメントは、決めたブランドを、使われる場面で崩さずに保ち、必要なときに変えていく仕事です。 ブランドをつくる仕事は、ブランディングと呼ばれます。何を約束するかを決め、名前やロゴや言葉に形にする。ブランドマネジメントは、その形になったものを、日々の仕事の中で保ち続けるほうです。 二つの違いを、私たちは期限で分けて考えています。ブランディングは、期限のある仕事です。いつ決めて、いつ公開するか。プロジェクトとして始まり、終わります。ブランドマネジメントには期限がありません。会社が続くあいだ、続きます。 ブランドを会社の資産として扱い、その価値を測りながら育てていく、という説明もあります。考え方としてはその通りです。ただ、測る前に、もっと手前で止まっていることがあります。期限のある仕事から、期限のない仕事への受け渡しです。 終わる日に、作った人たちは離れる プロジェクトには、終わりがあります。 外に頼んでいたなら、制作会社は次の案件に移ります。社内でプロジェクトのために集まったメンバーも、元の部署の仕事に戻ります。決めた理由を知っている人たちが、まとめていなくなる日が来ます。 人が入れ替わって、理由が少しずつ失われていく話は、商品ブランディングとは。共通にするものと、分けるものを決めるに書きました。ここで書くのは、それとは別の、一度に離れる日のことです。担当の交代は一人ずつ起きますが、プロジェクトの終わりには、関わった人がそろって手を離します。 中小企業のブランディング。決めたあとに時間を使う進め方では、「続ける工程は、社内でやります」と書きました。制作で終わる進め方が成り立つのは、その先を受け持つ人が社内にいる場合です。 ただ、続ける作業のすべてを社内でやらなければならない、という意味ではありません。制作物を作る作業は、外に頼み続けることもできます。それでも外に置けないものが一つあります。新しく作ったものを、うちのブランドとして出してよいかを、最後に決める役です。これは、その会社の中にしか置けない、と私たちは考えています。 だから、期限のない仕事は、終わりの日に社内の誰かが受け取ることになります。受け取る人がいなければ、決めたものはその日から、誰のものでもなくなります。 図をタップすると、拡大して見られます 何を引き継ぐか 終わりの日に受け取るものは、ガイドラインの冊子だけではありません。 並べると、次のようになります。 引き継ぐもの 中身 決めたもの約束、名前、ロゴ、色、言葉 決めた理由なぜそれを選び、何を選ばなかったか 使う場所どの場面で、どれを使うか データと置き場所元のデータと、それがどこにあるか 判断の窓口決まりに無いことが起きたときの聞き先 見直すきっかけどんな出来事があったら、見直すか 委託先誰に何を頼んでいて、相手が何を持っているか 図をタップすると、拡大して見られます 一つずつの中身は、それぞれ別の記事で扱っています。約束をどう言葉にするかはブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するか、ロゴのデータをどう渡すかはロゴガイドラインの作り方。データを渡す前に、相手の判断を済ませておく、色の値はコーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていないに書きました。 この一覧で見てほしいのは、項目の多さより、それが一か所にまとまっているかどうかです。理由は打ち合わせの議事録に、データは制作会社のサーバーに、判断の窓口は誰かの頭の中に。散らばったままだと、受け取る人は何を受け取ったのかが分かりません。 抜けやすいのは、最後の委託先の行です。ロゴの元データ、サイトの管理画面、印刷の版。外の会社の手元にあるものは、プロジェクトが終わると、こちらからは見えにくくなります。誰が何を持っているかが分かっていれば、必要になったときに取りに行けます。 一覧の行には、作った側にしか書けないものと、社内でしか書けないものがあります。決めた理由、データ、委託先は、作った側が知っています。使う場所の細かいところ、判断の窓口、見直すきっかけは、社内でしか決められません。両方が埋まって、はじめて一覧は使えるものになります。 この一覧は、終わる前に、作った側に求めておくと揃います。終わったあとで集めようとすると、関わった人はもう別の仕事の中にいます。私たちも、終わりの日には、引き継ぐものを一覧にまとめて渡しています。 誰が受け取るか 受け取る人には、二つのものが要ります。決める権限と、日々見る時間です。 決める権限がない人が受け取ると、判断のたびに上に聞くことになり、受け取った意味が薄れます。見る時間がない人が受け取ると、一覧は机の上で止まります。 一人で両方を持てるなら、判断は速く回ります。持てないなら、二人で分けます。決めるのは経営に近い人、日々見るのは現場に近い人。分けたときは、どこまでを見る人が決めてよく、どこからを決める人に上げるかを、最初に一言で決めておきます。 図をタップすると、拡大して見られます 中小企業で誰が見るか、どう時間を取るかは、先に挙げた中小企業の記事で扱っています。社員にブランドを伝えていく進め方は、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方にあります。 受け取る人を決めたら、社内に知らせます。何かを作る人が、出す前に誰に見せればいいかを知らなければ、通り道はできません。 受け取る人は、終わりの日より前に決めておきます。受け取る人が決まらないまま終わりの日を迎えると、引き継ぐものの一覧は、誰の机にも載りません。作る側にとっても、誰に渡すのかが分かっていなければ、渡す形を決められません。受け取る人が決まっているかを、終わる前に確かめておくのは、作る側の仕事です。 受け取った人がすること 受け取った人の仕事は、毎日あるわけではありません。ある場面が来たときに、動きます。 よく来るのは、新しく何かを作る場面です。展示会のパネル、新しいサービスの案内、採用のページ。作られたものが外に出る前に、受け取った人の前を一度通るようにします。そのとき照らすのは、引き継いだ一覧です。決めた約束と食い違っていないか。使う場所の決まりに沿っているか。 新しい名前を付けたいという話も、ここを通ります。名前は意図しないうちに増えるので、増やすかどうかを判断する場所が要ります。その考え方はブランドアーキテクチャとは。ブランド体系を、後から並べ直すに書きました。 書いていないことが起きる場面もあります。決まりに当てはまらない依頼、急ぎの例外。例外をどう扱い、何を記録するかは、ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかにまとめています。 そして、変えるかどうかを決める場面です。事業の範囲が広がった、取引の相手が変わった、社名を改めた。見直すきっかけは、期間より出来事のほうが分かりやすく来ます。ロゴのように外に出ているものを変えるときの考え方は、ロゴを変更するとき。リニューアルで失うのは、見た目ではなく手がかりにあります。 効いているかを、何で見るか ブランドマネジメントが効いているかを確かめるとき、ブランドの価値そのものを測ろうとすると、時間もお金もかかります。その前に見られるものがあります。 新しく作ったものが、受け取った人の前を通ってから出ているかです。 ここしばらくのあいだに外に出たものを思い出してみます。パンフレット、サイトの更新、SNSの投稿、展示会の装飾。そのうち、出る前に受け取った人が見たものはどれか。見ていないものが出ていたなら、通り道のどこかが抜けています。誰も知らないうちに作られたのか、急ぎで飛ばしたのか、受け取った人が見る時間を取れなかったのか。 図をタップすると、拡大して見られます 出たものを並べて、決まりと照らす見方もあります。そちらはブランドガイドラインの記事に書きました。ここで見ているのは、出たものの出来ではなく、出るまでの道です。道が通っていれば、出たものの出来は少しずつ揃っていきます。 外から見たブランドのずれに気づく方法は、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法で扱っています。 受け取った人も、いつか替わる 受け取った人も、いつか異動し、退職します。期限のない仕事なので、持つ人のほうが先に替わります。 そのときに役に立つのが、終わりの日に受け取った一覧と、そのあとの判断の記録です。どんな例外を認めたか、何を通して、何を通さなかったか。記録があれば、次の人は前の人の判断から始められます。 替わるときは、一覧を渡すだけで終わらせず、次の人と一緒に、新しく作るものを一度通してみます。どこを見て、何に照らすのかは、一覧を読むだけでは伝わりにくいところだからです。 一覧は、受け取ったときのまま置いておくと古くなります。データの置き場所が変わった、委託先が替わった、判断の窓口が別の人になった。そのつど書き換えておけば、次に渡すときに、また一から集めずに済みます。 方法より先に、渡す日を決める ブランドマネジメントは、ルールを増やすところから始めるものではありません。 プロジェクトが終わる日に、何を、誰に渡すか。受け取った人が、何を通し、何を記録していくか。期限のある仕事と、期限のない仕事のあいだの受け渡しを決めておくことが、マネジメントの最初の仕事です。 相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランドブックとは。ガイドラインとの違いと、どちらが要るかの決め方 ブランド戦略とは。マーケティング戦略との違いと、事業戦略との関係 コーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないもの 記事一覧を見る

ブランディングのワークショップ。開く前に、何の場かを決める

ブランディングのワークショップ。開く前に、何の場かを決める

ブランディングのワークショップとは、ブランドの言葉や約束を決めていくために、関係する人が集まって、書く、並べる、選ぶといった作業をしながら進める場です。 ひとくちにワークショップと言っても、目的は一つではありません。意見を出し尽くす場と、方向を合わせる場と、決める場では、呼ぶ人も、持ち込むものも、最後に出す一文も変わります。だから開く前に、何の場かを一つに決めます。 この記事では、会議や研修との違いを整理したうえで、どんな目的の場があるか、目的によって作り方がどう変わるか、出し尽くす場の準備、決める場に誰がいるか、目的を混ぜないこと、終わったあとに続くことを書きます。 ワークショップとは何か ワークショップは、参加する人が手を動かしながら進める場です。 話し合うだけでなく、紙に書く、壁に貼る、並べ替える、選ぶ。そうした作業が入ることで、頭の中にあるものが、全員に見える形で場に出ます。 会議や研修とは、違いで説明されることがあります。会議は決める場、研修は伝える場、という分け方です。その分け方で言えば、ワークショップは、参加する人が持っているものを出し合って、形にしていく場にあたります。 ただ、この分け方にはきれいに収まりません。ワークショップの中にも、決めるところまで進むものがありますし、決めずに材料を出すだけのものもあります。何を目的にするかで、同じワークショップが会議に近くもなり、まったく別のものにもなります。次の章で、その違いを分けます。 ブランディングで開くのは、理念や約束、ステートメントといった言葉を決めていく途中です。どこから手をつけ、誰が何を決めるかという流れの中に置かれます。 ブランディングのワークショップという言葉は、ブランディングを学ぶための講座を指して使われることもあります。この記事の対象は、自社の言葉や約束を決める途中で、社内や関わる人と開くほうです。 ワークショップの形にしなくてよい場面もあります。決める人と、その人に材料を出せる人が、直接話して済む人数なら、打ち合わせで足ります。集まって手を動かす形が効くのは、関わる人が増えて、一人ひとりの考えが、ほかの人から見えなくなってきたときです。 私たちも、クライアントと行うもの、社内で行うもの、制作に関わるクリエイターと行うものがあります。AIの使い方を扱うワークショップもありますが、この記事で扱うのは、ブランドの言葉や約束に関わるものです。 何の場かは、一つではない ブランディングのワークショップで目的として置くものには、たとえば次のようなものがあります。 一つめは、意見を出し尽くす場です。関わる人がそれぞれ何を考えているかを、場に出し切ります。答えを揃えることは目指しません。どこで割れているかが見えれば、目的を果たしています。 二つめは、方向を合わせる場です。どの方向に進むかを揃えます。たとえば、今回はどこまでを扱うか、何から先に考えるか。結論の手前で、結論に向かう向きを揃えます。 三つめは、決める場です。出た材料をもとに、言葉や約束を一つに決めます。 決まったことを社内に伝える場として開くこともあります。この記事ではそれは扱わず、決めるまでの三つを軸に書きます。 同じワークショップでも、置く位置によって別の場になることは、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方でも書きました。工程のはじめに開けば言葉を集める場になり、決めたあとに開けば説明する場になります。ここでは、それを目的の側から分けて、目的ごとに作り方がどう変わるかまで書きます。 検索して出てくる説明では、ワークショップの目的を合意形成にまとめているものがあります。合意を目指すのは、三つのうち合わせる場と決める場です。出し尽くす場では、合意を目指しません。ここを混ぜると、出すはずだった意見が、出る前にまとまります。 会社の規模によっても、要る場が変わります。社長が一人で決められる会社では、決める場を大きく開かなくても決まります。決めるまでの工程を小さくしてよい理由は、中小企業のブランディング。決めたあとに時間を使う進め方に書きました。それでも、部署や人数があって答えが割れる会社では、出し尽くす場が役に立ちます。一人ずつ聞いただけでは、答えが割れていることが、答えた本人たちには見えないからです。 何の場かで、作り方が変わる 目的が決まると、作り方が決まっていきます。場によって変わるところを、例として並べます。 出し尽くす場 方向を合わせる場 決める場 呼ぶ人日々判断している人。部署や年次を散らすこれから進め方に関わる人決める人と、材料を説明できる人 持ち込むもの事前に一人ずつ聞いた答え出し尽くした材料の一覧割れていた点と、それぞれの理由 最後に出す一文の例今日出たことのまとめ合わせた方向結論 この表は、場によってどう変わるかの例で、私たちの整理です。会社や内容によって、組み合わせは変わります。 図をタップすると、拡大して見られます 呼ぶ人から見ると、違いがはっきりします。出し尽くす場は、答えの割れ方を見る場なので、同じ立場の人ばかりだと、割れ方が見えません。日々の仕事で判断をしている人が、部署や年次を散らして入っているほうが、割れ方が見えます。決める場は、決める人がいなければ始まりません。合わせる場は、そのあいだにあり、これから進め方に関わる人が入ります。 人数も、目的で変わります。出し尽くす場は、答えの割れ方が見えるだけの人数が要ります。部署や年次が一つに偏らないように集めます。ただ、人数が増えるほど、場の前に一人ずつ聞く手間も増えます。並べた答えを、その場で読み切れないほどになると、割れている点に時間を使えなくなります。決める場は、決める人と、材料を説明できる人がいれば足ります。直接話して済む人数なら、決める場を打ち合わせの形で開いても構いません。人を増やすと、決める場で材料が出し直され始め、出し尽くす場に戻りかけます。何人にするかは、表の「呼ぶ人」に当たる人がそろっているかで決めます。 持ち込むものは、前の場の続きになります。たとえば、出し尽くす場には事前に一人ずつ聞いた答え、合わせる場には出し尽くした材料の一覧、決める場には割れていた点とそれぞれの理由、という形です。前の場で出たものが、次の場の材料になる関係です。 最後に出す一文も、場で変わります。私たちは、場の最後に、結論やまとめの一文を出します。その一文に何を書くかは、場の目的に合わせます。たとえば、出し尽くす場なら今日出たことのまとめ、決める場なら結論、という分け方です。 目的とずれた一文を出すと、場の意味が変わります。出し尽くす場で結論の一文を出すと、割れていた材料が、その一文にまとまってしまいます。割れていたこと自体が、場の外に持ち出されません。持ち出されなければ、次の場で、何と何のあいだで選ぶのかが分からなくなります。 決める人がどこにいるかも、場によって変わります。出し尽くす場で決める人が答えを出すと、その答えが、ほかの答えより重く受け取られることがあります。それを避けたいときは、決める人が答えずに見ている形や、その場にはいない形もあります。決める場では、逆に、決める人がいることが前提になります。 同じ人を呼び、同じ部屋を使っても、目的が違えば、別の場になります。準備のほうも、どの場かが決まった時点で向きが決まります。 出し尽くす場は、先に一人ずつ聞く 出し尽くす場の準備は、場の前に始まります。 集まって聞くと、答えは先に話した人のほうへ寄っていきます。私たちがほかの記事でも書いてきたことで、言葉を集めるときは、一人ずつ聞くのが基本です。私たちも、場の前に参加者一人ずつから話を聞くことがあります。 聞く相手に、社長や決める立場の人を入れる形もあります。入れておくと、社長の答えが一本にまとまっているのか、場面によって変わるのかが、場の前に分かります。 問いが人によって違うと、答えが割れているのか、問いが割れているのかが分からなくなります。全員に同じ問いを使えば、割れているのは答えのほうだと言えます。 場では、集めた答えを並べます。並べるときに、誰の答えかを伏せる形もあります。役職や声の大きさで読まれるのを避けたいときに使います。全員が同じことを言っている点は、すでに揃っています。場の時間を使うなら、答えが割れている点に使うほうが、出し尽くす場の目的に合います。 並べるときに、先に枠を用意しないことも大事です。軸や分類を先に作って持ち込むと、答えを並べる前に、答えの形が決まります。ブランドポジショニングとは。マップは、決めたあとに描くには、会議でホワイトボードに軸を引くと、図の上で考えることになる、と書きました。枠が要るなら、答えを並べたあとに、答えから作れます。 割れて見える答えの中には、同じ言葉を違う意味で使っていて、割れているように見えるだけのものもあります。ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方で、語の意味が割れているだけということがある、と書いた状態です。語の意味の割れなら、その場で揃えて構いません。言葉の行き違いを直しているだけで、意見を一つにしているわけではないからです。 場の前に聞く手間を省いて、当日だけで済ませる組み方もあります。その場合、場で最初に出た答えに寄って、割れ方が見えないまま揃って見えます。場の前に一人ずつ聞くのは、そのためです。 決める場に、誰がいるか 決める場には、決める人がいる必要があります。 決める人がいないまま進めると、出た結論を伝言で届けることになります。企業ブランディングとは。何本の仕事に分かれ、どこから手をつけるかには、伝言で進めると意図が薄まる、と書きました。決める場は、決める人がその場で決められる形にしておきます。 誰が決めるかは、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは。3つの違いと、矛盾したときの決め方に書いたとおり、経営です。全員で決める形にすると、反対の出ない言葉に寄っていきます。 一方で、決める場に社員がいないと、決まった言葉が、社員にとっては外から来たものになります。インナーブランディングの記事には、そう書きました。 この二つは、場を分けると両立させやすくなります。社員は、出し尽くす場で材料を出します。そのうえで、決める場に、材料を出した人の何人かが同席する形もあります。その場合も決めるのは経営で、同席した人は、出た材料の背景を説明する役を持ちます。 決める人が複数いる会社もあります。役員が何人かいて、それぞれに担当の事業がある場合です。そのときは、場の前に、意見が割れたら最後に誰が決めるかを決めておきます。決めていないと、決める場が、決める人どうしの出し尽くす場に変わります。 決める場で出す一文は、結論です。選ばなかったほうと、その理由も一緒に残っていれば、あとから加わった人が、なぜその言葉なのかを辿れます。結論の一文だけでは、何と比べて選んだのかが分かりません。 決め方には、どちらか一方に絞らない形もあります。割れていた二つを両方残して、どちらを優先する場面かを書き分ける。インナーブランディングの記事で書いた決め方です。割れていた理由がどちらも筋の通ったものなら、この形のほうが、片方を大事にしてきた人の言葉を切らずに済みます。 一つの場で、目的を混ぜない ワークショップがうまくいかないとき、目的が混ざっていることがあります。 混ざり方には型があります。 出し尽くすつもりで開いたのに、最後に決めてしまう 決める場で、材料を出し直し始める 合わせる場のつもりが、決める人がいないまま結論が出る 一つめでは、割れていた理由が残りにくくなります。まとまった一文だけが持ち帰られ、なぜ割れていたかは、その場にいた人の頭の中にしか残りません。二つめでは、決まらずに終わりやすくなります。材料を出し直すと、決める場が、出し尽くす場に戻るからです。三つめでは、出た結論が、持ち帰った先で覆ることがあります。決める人が見ていない結論だからです。 図をタップすると、拡大して見られます 混ざり始めたことは、場の途中で分かります。出し尽くす場で「では、どれにしますか」という問いが出たら、決める場の問いが入ってきています。決める場で新しい意見が続けて出始めたら、出し尽くす場に戻りかけています。 戻し方の一つは、出た問いや意見を書き留めて、その場では扱わず、次の場に回すことです。消さずに次へ回すので、言った人の意見も無駄になりません。 目的を開く前に決めて、参加する人に伝えておくと、混ざりにくくなります。「今日は出し尽くす場で、決めるのは次の場です」。そう伝えてあれば、途中で決めたくなっても、決めるのは次だと戻れます。 私たちは、目的に合わせて場を設計します。日程だけを先に押さえて、何の場かを決めないまま当日を迎えると、場の空気で目的が決まります。何の場かを決めて伝えておくところまでを、場の準備に入れています。 終わったあとに続くこと 場の最後に出した一文は、次の場への持ち込みになります。 その一文を、参加しなかった人に渡すこともあります。一文だけを受け取った人には、どこで割れて、なぜその一文になったのかが分かりません。割れていた点の一覧を添えると、その分かれ目も一緒に届きます。 出し尽くす場のまとめは、合わせる場の材料に。合わせた方向は、決める場の前提に。決める場の結論は、言葉にする作業の出発点になります。一つの場で済ませようとしなくても、一文ずつ受け渡していけば、前の場で出たものが次の場に残ります。 図をタップすると、拡大して見られます 割れていた理由が、伝わっていないことにあるのか、社長のなかでまだ決まっていないことにあるのか。その見分けは、中小企業のブランディングの記事に書いた手順と同じです。 決めたあとは、その言葉を社内で使える形にしていきます。決めた言葉が社内のどこまで届いているかの見分け方は、理念浸透とは。「浸透しない」の中身を分けて、打ち手を決めるに書きました。 ワークショップは、この流れの中の一つの工程です。開いたこと自体は、成果になりません。開いたあとに、何が決まり、どこで使われているかを見ます。 何の場かを、先に決める ブランディングのワークショップは、一つの型ではありません。意見を出し尽くす場、方向を合わせる場、決める場で、呼ぶ人も、持ち込むものも、最後に出す一文も変わります。 だから、開く前に、何の場かを一つに決めます。目的が決まれば、誰を呼ぶか、何を持ち込むか、最後に何を出すかが、そこから決まっていきます。 日程より先に、何の場かを決めます。そこから先の準備は、その目的に沿って組み立てられます。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 企業理念とは。経営理念との違いと、作り直すときの判断 採用ブランディングとは。採用広報との違いと、手をつける順番 ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するか 記事一覧を見る

ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するか

ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するか

ブランドプロミスとは、そのブランドが相手に対して何を守るかを、相手に向けて言った約束です。会社紹介や商品の説明、注文や契約の前の案内に書かれます。 社内の決めごとと違うのは、守られたかを確かめるのが相手だという点です。破れたときは外から見え、破れたことを相手が知っています。だから、どこまで具体に言うかは、守る側の都合より、確かめる相手の側から決めます。 この記事は、コンセプトやステートメントとの違いを先に整理し、そのあとで、相手が確かめられる約束とは何か、どこまで具体に言うか、守れない場面の数え方、守れなかったときに相手に何を伝えるか、そして約束をどこに置き、誰が持つかまでを扱います。 ブランドプロミスとは何か プロミスは、相手がいてはじめて成り立つ約束です。 英語の brand promise をそのまま使った言葉で、ブランドが相手に対して守ることを指します。相手は、買う人、使う人、取引先です。相手を決めないまま書くと、自社の目標を並べた文になります。 何を守るかは、ブランドによって違います。届く速さ、品質の基準、困ったときの対応、値段の考え方。どれを約束にするかで、そのブランドが選ばれる理由が変わります。 言葉にしていなくても、相手は何かを期待して選んでいます。前に頼んだときの経験、人から聞いた話、サイトの印象。期待は、会社が何も言わなくても相手の側にできあがります。 プロミスを言葉にすると、その期待のうち、何を引き受けるかを会社の側から示せます。引き受けないことまで書く必要はありませんが、引き受けると書いたことは、相手が照らす基準になります。 掲げられているプロミスのなかには、抽象的な言葉で書かれたものもあります。大きな方向を示す言葉として置かれていて、それ自体が間違いというわけではありません。 私たちは、プロミスを、守られたかを相手が確かめられる形で言った約束として扱っています。呼び方や範囲に定まった決まりはなく、同じものを別の名前で呼ぶ会社もあります。この記事では、この意味で使います。 コンセプトやステートメントとの違い プロミスの周りには、約束を扱う言葉がいくつもあります。 ブランドコンセプト ブランドプロミス タグライン ブランドステートメント 形一言で決めた約束相手が確かめられる具体さで言った約束社名の隣の一文数文から数段落の文章 何で測るか判断に使われたか守られたか覚えられたかつながって読めるか 表の分け方は、私たちのものです。 図をタップすると、拡大して見られます ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方では、コンセプトを、約束の中身を一言に絞ったものとして書きました。一言なので、会議の途中でも思い出せます。その代わり、一言のままでは、相手が守られたかを判断するには粗いことがあります。 プロミスは、同じ約束を、相手が確かめられる具体さで言い直したものです。一つのコンセプトから、プロミスはいくつか出てきます。速さを約束するコンセプトなら、注文の受け付け、発送の連絡、問い合わせへの返事、それぞれに具体的な約束が立ちます。 タグラインは、社名と並べて置く短い一文です。相手が中身を読む前に見る場所に置かれます。覚えてもらうための一文なので、確かめられるほど具体である必要はありません。作り方はタグラインとは。キャッチコピーとの違いと、短くならないときの原因に書きました。 ステートメントの別名として、プロミスという言葉が使われることもあります。ブランドステートメントとは。企業理念・タグラインとの違いと、書き方で扱ったステートメントは、約束とその理由を、つないで読ませる文章です。プロミスは、その文章の中に書かれる約束そのものにあたります。 文章全体をプロミスと呼ぶ会社もあります。私たちは、「ブランドプロミスを作りたい」という相談を受けたとき、最初にどれを指しているかを確かめています。名前のまま受けて進めると、約束を具体にしたかったのに、整った文章が納まる、という行き違いが起きるからです。 企業理念とも混ざります。企業理念とは。経営理念との違いと、作り直すときの判断では、理念を「会社が何を大事にし、何のために事業を続けるのかを言葉にしたもの」と書きました。プロミスとの違いは、照らすのが誰かです。理念は、社内の人が自分たちの判断を照らすときに使います。プロミスは、相手が自分の受け取ったものを照らすときに使います。 確かめられる約束と、そうでない約束 約束は、相手が守られたかを判断できるかどうかで、二つに分かれます。 「品質にこだわります」は、相手が守られたかを判断できません。何をもってこだわったと言えるのかが、相手の側からは見えないからです。だから破られることもありません。破られない代わりに、選ぶ理由にもなりません。 「〔場面〕のときは、〔行動〕します」という形にすると、相手は確かめられるようになります。注文した人、問い合わせた人、修理を頼んだ人が、自分の経験と照らして、守られたかどうかを言えます。 修理店を例にすると、違いが見えます。「丁寧に直します」は、受け取った人が守られたかを判断できません。「直したところと、直さなかったところを、お渡しするときに説明します」なら、受け取った人は、説明があったかどうかで確かめられます。後者のほうが、約束としては小さく見えます。それでも、相手の側に照らすものが残るのは後者です。 見分け方は単純です。その約束が守られなかった場面を、相手が一つ挙げられるかどうか。挙げられないなら、それは確かめられない約束です。 確かめられるかどうかは、言葉の長さとは関係がありません。短くても確かめられる約束はありますし、長く書いても確かめられない文はあります。決め手は、相手の経験と照らせる具体さが入っているかどうかです。 確かめられない約束にも、置き場所はあります。会社が目指す方向を示す言葉として、理念やステートメントの中に置けば役に立ちます。ただ、それをプロミスとして掲げると、相手の側には照らすものが残りません。 具体にするほど、守る範囲は狭くなる 確かめられる形にすると、破れたときに相手から見えるようになります。 通信販売を例にすると分かります。「ご注文は早めに発送します」と「平日〔 〕時までのご注文は、翌日に発送します」を比べると、後者のほうが、相手ははっきり確かめられます。その分、担当者が休む日や、注文が重なった週にも同じように出せるかが問われます。 具体にするほど、守れる場面は限られていきます。確かめられることと、守り切れることは、同じ方向には伸びません。片方を強めると、もう片方が弱まります。 確かめられる約束には、守れたときにも違いが出ます。相手は、約束と自分の経験を照らして、守られたことを確かめられます。確かめられない約束では、守っていても、相手の側に照らす材料がありません。破れたときに見えるのと同じ仕組みで、守れたときも見えるようになります。 社内の決めごとにも、同じ引っぱり合いがあります。ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかには、細かく決めるほど守られるとは限らない、と書きました。プロミスで違うのは、守られたかを確かめるのが相手だということです。社内の決めごとは、破れても社内で気づいて直せます。相手に向けた約束は、破れたことを相手が知っています。言い直しても、前の約束を読んだ人がいます。 だから、プロミスの具体さは、社内で守れるかどうかだけでは決まりません。相手が何を確かめたいかから決めます。届く速さを確かめたい相手に、品質の基準をいくら具体に約束しても、照らしてもらえません。逆に、相手が気にしている点だけは、具体に言わないと約束になりません。 折り合いのつけ方は、二通りあります。一つは、言い切る範囲を狭めることです。「平日のご注文は」「この商品については」と条件を付けて、その範囲では守り切れる約束にする。もう一つは、守れる体制を先に作ってから言うことです。担当を二人にする、注文が重なる時期の受け方を決めておく。体制が整う前に言い切ると、最初に破れるのはその約束です。 どちらを選ぶかは、相手が確かめたい点の重さで決めます。相手が強く気にしている点なら、体制を作ってでも言い切る価値があります。それほど気にしていない点なら、範囲を狭めて言うか、プロミスに入れずにおく選択もあります。どの点も同じ具体さで約束しようとすると、守る側の負担だけが増えます。 どちらも取らずに、抽象的な言葉に戻す道もあります。そうすると、前の章の、破られないが選ばれない約束に戻ります。折り合いをどこでつけたかが、そのブランドのプロミスになります。 図をタップすると、拡大して見られます 守れない場面を先に数える どこまで具体に言うかを決めるには、守れない場面を先に数えます。 順番はこうなります。 約束を一文で書く。コンセプトから、相手が確かめられる形に言い直す その約束が守れなくなる場面を挙げる。注文や依頼が重なる時期、担当が替わるとき、外に頼んでいる工程、ふだんと違う注文 挙げた場面を、約束の範囲から外して言い切るか、場面ごとに体制を作るかを決める 書いた約束を、実際に守る人に読んでもらう 図をタップすると、拡大して見られます 三で範囲を狭めると決めたら、その条件も約束の文面に書きます。「平日の」「在庫のある商品は」。条件が書いてあれば、相手は条件も含めて確かめられます。条件を社内にだけ持っていると、相手の側からは、守られなかったように見えます。 二で挙げる場面は、想像より実際の記録から拾うほうが確かです。去年、遅れが出た週。問い合わせに返せなかった日。そこに、約束が守れなくなる条件がそのまま出ています。 通信販売の例に戻すと、注文が重なる時期があるなら、その時期にも翌日に出せるかを先に確かめます。出せるなら、条件を付けずに言い切れます。出せないなら、その時期の約束を別に書きます。「〔時期〕は、ご注文から〔 〕日以内に発送します」。約束が二つに分かれても、どちらも相手が確かめられる形なら、破れる約束を一つ掲げるより相手の側に残るものがはっきりします。 四で読んでもらうのは、その約束を毎日守ることになる人です。受付、営業、制作、配送。その人が読んで、守れないと感じる箇所があるなら、そこはまだ守れる形になっていません。 ブランド戦略とは。マーケティング戦略との違いと、事業戦略との関係では、何を約束しないかを決める作業を書きました。速さを取るなら、時間のかかる丁寧さは取れない、という選び方の話です。ここで数えるのは、それとは別のものです。選んだ約束が、どの場面で守れなくなるか。選んだあとに、どこまで言い切れるかを決める作業です。 私たちは、約束の言葉を整えて渡す前に、守れない場面を一緒に数えています。言葉だけを整えて渡すと、読んだときは前向きに見える約束が、そのまま外に出ます。破れるのは、外に出たあとです。 守れなかったときの扱いを決めておく 守れない場面を数えても、数えた場面を残らず範囲から外すことはできません。例外は来ます。 例外が来たときに、その場で対応を決めると、相手から見た約束が人によって変わります。ある担当は先に連絡し、別の担当は黙って遅れる。相手の側では、同じ会社の約束が場面ごとに違って見えます。 先に決めておくのは、相手に何を伝えるかです。 守れないと分かった時点で、いつ伝えるか 代わりに何を出すか その言葉を、接点にいる人がその場で言えるか 代わりに出すものは、相手が次に動けるものにします。新しい日程、別の手段、途中まで進んだ分。お詫びの言葉だけでは、相手は予定を立て直せません。 三つめが決まっていないと、接点にいる人は確認に戻ることになり、そのあいだ相手は待ちます。相手にとっては、その待ち時間も約束の一部です。約束した日の前に連絡が来ることと、約束した日を過ぎても連絡がないことは、相手の側では別の出来事です。前者では、相手は予定を組み直せます。後者では、約束が破れたことを、自分で気づくことになります。 伝える順番も決めておきます。相手が次の判断をするのに要るのは、まず、いつどうなるかです。理由はそのあとで足ります。理由から話し始めると、相手は、自分の側で何を変えればいいのかを最後まで待つことになります。 守れないことを先に伝えた場合と、相手が気づいてから伝えた場合では、同じ遅れでも、相手が知っていることが違います。先に伝えた場合、相手は約束が破れたことと同時に、それを言いに来たことも知っています。 守れなかったあとに、約束と実態のどちらを直すかの見分け方は、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法の「ずれていたら、どちらを直すか」の章に書きました。 どこに書き、誰が持つか プロミスは、相手が照らせる場所に置きます。 会社紹介のページ、商品やサービスの説明、注文や契約の前の案内。相手が約束を受け取り、あとで読み返せる場所です。ステートメントがあるなら、その文章の中に置くと、約束とその理由が一緒に読まれます。 置く場所と同じくらい大事なのが、誰が持つかです。約束を守るのは、書いた人とは限りません。電話を取る人、注文を受ける人、商品を届ける人。相手が約束を確かめるのは、その人たちと接したときです。 だから、プロミスを知っているべきなのは、接点にいる人です。掲げてあるのを見たことがある、では足りません。その約束を守るために、自分が何をするのかを知っている状態にしておきます。社員が会社の言葉を日々の仕事に結びつける進め方は、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方にまとめています。 約束を変えるときも、順番があります。外に出す前に、接点にいる人に先に渡します。相手は前の約束を読んでいるので、変わったことを聞かれる場面が来ます。そのときに答えられる人が接点にいなければ、変えた理由が伝わる前に、約束が破れたように見えます。 確かめるのは、相手のほう ブランドプロミスは、相手に向けて言った約束です。社内の決めごとと違って、守られたかを確かめるのは相手で、破れたときはそれを相手が知っています。 だから、どこまで具体に言うかは、相手の側から決めます。確かめたい点は具体に言い、守り切れない場面は先に数えて、範囲から外すか、体制を作ってから言う。 そして、守るのは書いた人とは限らないので、約束は接点にいる人に渡しておきます。 約束が働き始めるのは、相手が一度確かめて、守られていたと知ったときです。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは。3つの違いと、矛盾したときの決め方 トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳する ブランドパーソナリティとは。アーカーの5次元と、形容詞で終わらせない決め方 記事一覧を見る