ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方

ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方

ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方

ブランドコンセプトとは、その会社や商品が、誰に何を約束するのかを一言で表したものです。キャッチコピーのことではありません。

外に向けた約束であると同時に、社内で何かを決めるときの拠りどころにもなります。決まっていれば判断が速くなり、決まっていなければ、そのつど解釈が分かれます。

この記事では、どこから見つけて、どう決めるかまでをお伝えします。そのうえで、すでに決まっているコンセプトが実際に機能しているかを、どう見分けるかを書きます。

ブランドコンセプトとは何か

誰に何を約束するのかを、一言で表したものです。私たちはそう捉えています。

「一言で」という部分が要です。長く書けば正確になりますが、正確な文章は判断に使えません。会議の途中で思い出せる長さでなければ、決めるときの拠りどころになりません。三行あると、その場では引用されなくなります。

約束には相手が要ります。誰に向けたものかが抜けていると、書かれているのは自社の願望だけになります。「高品質なものづくりで社会に貢献する」という一文からは、誰に何を約束したのかが読み取れません。悪い文ではありませんが、これを持って何かを決めることはできません。

キャッチコピーと混同されやすいのですが、役割が違います。キャッチコピーは、その約束を届けるための表現です。コンセプトは、表現を選ぶ前に決まっている中身のほうです。

同じコンセプトから、キャッチコピーは何通りも作れます。逆はできません。コピーからコンセプトを逆算しようとすると、後付けの説明になります。先にコピーが決まっている場合、そのコピーを正当化する理屈がコンセプトとして書かれることになります。

もうひとつ、コンセプトは社外向けだけのものではありません。約束した以上、社内でもそれを基準に選ぶことになります。外向きの言葉が、そのまま内向きの判断基準になる。この二面性が、あとの章で効いてきます。

似た言葉との違い

コンセプトの周りには、似た働きをする言葉がいくつもあります。私たちは次のように使い分けています。

何を指すか
ミッション 何を果たすのか(役割)
ビジョン どこへ向かうのか(到達点。期限がある)
バリュー 何を選ぶのか(日々の判断基準)
パーパス なぜ存在するのか(社会に対する存在理由)
経営理念・企業理念 上のいくつかをまとめた総称
ブランドコンセプト 誰に何を約束するか
タグライン その約束を短い言葉にしたもの

この使い分けは、業界に定まった定義ではありません。私たちが仕事のなかで使っている整理です。

実際、コンセプトとミッションを同じものとして扱う考え方もあります。どちらも「何をするのか」を言葉にしたものなので、重なる部分は確かにあります。どちらが正しいという話ではありません。

私たちが分けているのは、向きが違うからです。ミッション・ビジョン・バリュー・パーパスは、会社が自分自身について語ったものです。ブランドコンセプトは、相手に対する約束です。主語は同じでも、誰に向かって言っているかが違います。

この違いは、書くときの検算に使えます。ミッションは相手がいなくても書けますが、コンセプトは相手を書かないと成立しません。「誰に」が入っていない文がコンセプトとして置かれているなら、実際にはミッションを書いている可能性があります。

経営理念や企業理念という言い方は、総称として使われます。会社によって、ミッションだけを指すこともあれば、四つ全部を含むこともあります。社外の人と話すときは、その会社が何を指しているかを先に確かめたほうが早く進みます。

言葉の定義そのものは、正直なところ、どれでも構いません。社内で揃っていることのほうが大事です。同じ会議で、ある人はミッションのつもりで話し、別の人はコンセプトのつもりで聞いている。この状態のほうが、定義の選び方より問題になります。

議論が噛み合わないとき、意見が割れているのではなく、語の意味が割れているだけ、ということがあります。先に語を揃えると、そこで終わる議論もあります。

なぜ言葉にする必要があるのか

言葉になっていないものは、判断のたびに解釈が分かれるからです。

社長の頭のなかには、答えがあります。何を大事にしていて、どういう仕事を選びたいのか。創業した人であればなおさら、はっきりしています。

問題は、それが本人のなかにしかないことです。人が二人のうちは、聞けば済みます。十人になると、聞ける機会が減ります。三十人になると、聞いていない人が出てきます。そして、聞いていない人も判断はします。

ここで起きるのは、意見の対立ではありません。それぞれが善意で、それぞれの解釈で判断していく状態です。どれも間違っていないのに、揃わない。

制作物を作る段になると、これがはっきり表に出ます。ロゴの案が三つ並んで、どれを選ぶかの基準がない。色の候補が出て、好みで決めることになる。決め手がないので、決められる立場の人が決めます。

そうなると、その人が見ていないところで作られるものは、基準を持たないまま世に出ます。名刺、伝票、現場の掲示物、採用の資料。目の届かないところほど数が増えるので、時間が経つほど輪郭がぼやけます。

この構造は、リブランディングが失敗するとき、デザインは悪くないで書いた失敗の型と同じです。デザインの出来ではなく、決める基準がないことが原因になっています。

なお、基準がないまま制作に入ったことを、発注した側の準備不足として扱うと話が進みません。基準の有無を最初に確かめるのは、引き受けた側の仕事です。

どこから見つけるか

新しく考えるのではなく、すでにあるものを探します。探す先は四つです。

会社の歴史、理念、大事にしていること、そして社員が何気なく使っている言葉。歴史については、見るのではなく調べます。何を選んで、何をやめてきたか。判断の記録に、その会社の基準が出ます。

この四つは、リブランディングとは。意味・進め方・費用・判断のタイミングの工程2で書いたものと同じです。社内に向けて言葉にする場合の掘り下げは、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方の5章にまとめてあります。どちらも、探す先そのものは変わりません。

コンセプトの場合、ここにもうひとつ足します。顧客が自社について言っていることです。

なぜ選んだのかを聞くと、こちらが強みだと思っていたところとは別の理由が返ってくることがあります。速さで選ばれていると思っていたら、聞く姿勢のほうだった。納期の正確さだと思っていたら、断らないことだった。この差は、社内からは見えません。

約束は相手に対するものなので、相手が何を受け取っているかを確かめずには決められません。四つの探し先が社内にあるのに対して、これだけが社外にあります。手間はかかりますが、ここを飛ばすと、自社の思い込みを言葉にして終わります。

決めるまでの手順

集めるところから、使う場所を決めるところまでが一続きの工程になります。途中で止めると、決まったのに使われないという状態になります。

工程 決めること
1 集める 歴史・理念・社員の言葉・顧客が言っていること
2 絞る 自社にしか言えないものはどれか
3 言い切る 誰に何を約束するかを一文にする
4 検算する やらないことが決まるか
5 使う場所を決める どこで判断の基準にするか

工程1では、前章の四つに顧客の声を足して集めます。この段階で整理はしません。矛盾したまま並べておきます。整理を先にすると、集める前に結論が決まります。

工程2の「自社にしか言えないか」は、他社の名前を入れ替えても成立する文になっていないかで確かめます。「お客様第一」「品質にこだわる」は、入れ替えても成立します。成立するなら、絞れていません。

集めた量に対して、自社にしか言えないものは限られます。残りが少なくて不安になりますが、少ないほうが判断には使えます。候補が五つ残っているなら、それは絞る作業が途中で止まっているということです。

絞るときの基準は、正しさではありません。他社が言えないかどうかです。正しいことを並べると、正しくて誰にでも当てはまる文になります。

工程3で一文にします。ここで長くなるのは、絞りきれていないことの表れです。二つの約束が入っているなら、どちらが主なのかがまだ決まっていません。両方を残したい気持ちは自然ですが、両方が主だと、迷ったときにどちらも根拠になりません。

工程4が抜けると、あとで効いてきます。約束を決めると、同時に「やらないこと」が決まります。速さを約束したなら、時間のかかる丁寧さは選べません。手厚さを約束したなら、安さでは戦えません。

やらないことが何も出てこないなら、その文は約束ではなく、願望が書かれています。この検算が、次の章につながります。

工程5で、どこで基準として使うかを決めます。制作物の判断、案件を受けるかどうかの判断、採用の判断。使う場所が決まっていないコンセプトは、決めた直後から使われなくなります。決めた場にいた人だけが覚えていて、その人が異動すると消えます。

なお、この工程を発注した側だけで進める必要はありません。方向を決める工程としての位置づけは、リブランディングとは。意味・進め方・費用・判断のタイミングの工程3に書いています。工程4の検算を持ち出すのは、本来は引き受けた側の役割です。

機能しているかの見分け方

ここまでは、これから決める人に向けて書いてきました。この章は、すでに決めた人に向けたものです。

コンセプトはある。決めたときは納得した。ただ、それが効いているのかどうかが分からない。作り方までは、たどり着ける情報があります。その先の、効いているかを確かめる方法をお伝えします。

見るところは四つあります。どれも、新しく調査をする必要はありません。すでに起きたことを見るだけです。

社員が同じことを言えるか

社長が言えるかではありません。社員が同じことを言えるかです。人によって違う説明が出るなら、まだ決まっていません。

これはブランディング会社の選び方。4つの型と、自社に必要な型の見分け方の4章で書いた判断基準と同じものです。社内で揃っているかどうかの見方は、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方の8章に詳しく書いています。

一言一句が揃う必要はありません。同じことを指しているかどうかを見ます。むしろ、全員が同じ文を暗記している状態は、自分の言葉になっていない兆候でもあります。言い方が違っていて、中身が同じ。これが揃っている状態です。

確かめ方は単純です。部署の違う何人かに、同じ質問をします。「うちは、お客さんに何を約束している会社ですか」。会議の場ではなく、個別に聞きます。

制作物から説明できるか

実際に作っている側から見ると、これが分かりやすい判定です。

手元にあるものを並べます。ロゴ、名刺、サイト、提案資料、商品の写真、店舗の内装。ひとつずつ「なぜこの形なのか」をコンセプトから説明してみます。

説明できないものが混ざっているなら、そこはコンセプトを使わずに決めています。好みで決めたか、前例で決めたか、担当者の判断で決めたか。どれかです。

混ざっていること自体は、珍しくありません。問題になるのは、混ざっているのに気づいていない場合です。気づいていれば、次に作るときに揃えられます。気づいていなければ、揃っていないものが増え続けます。

逆から見ることもできます。制作物を先に見せて、そこからコンセプトを言い当ててもらう。社外の人にやってもらうと、はっきりします。言い当てられないなら、約束が形になっていません。

もっとも、コンセプトから説明できる形で作るのは、作った側の責任です。発注した側に説明を求める前に、引き受けた側が説明できるようにしておくのが先です。

やらないことが決まるか

決めるときの検算(工程4)を、決めたあとにもう一度やります。

直近で断った仕事、見送った企画を並べます。そして、断った理由がコンセプトから説明できるかを見ます。

説明できるなら、機能しています。断るという判断は、基準がなければできません。逆に、断った理由が「忙しかったから」「条件が合わなかったから」ばかりなら、コンセプトは判断に使われていません。

何も断っていない場合も同じです。すべてを受けているなら、選ぶ基準を使っていないことになります。

この判定は、四つのなかで結果が厳しく出ます。断った理由は記録に残らないので、思い出そうとしても出てこないためです。出てこないこと自体が、答えになっています。

迷ったときに使われるか

会議で意見が割れたとき、その言葉が持ち出されるかどうかです。

持ち出されるなら、判断の材料になっています。持ち出されないなら、掲げてあるだけの状態が続いています。

四つのうち、この判定は確かめやすいのに、見過ごされます。普段の会議を思い出せば分かることなので、わざわざ確かめる対象になりません。

直近で意見が割れた場面をひとつ思い出して、そこで何を根拠に決めたかを辿ります。根拠が「声の大きさ」や「役職」だったなら、コンセプトはその場にいませんでした。

よくある失敗

どれも、決めたあとになってから表れます。決めた時点では、どれも起きていません。

ひとつめは、言葉を美しくしすぎることです。整った一文になっているのに、それを使って何かを決められない。読んだときの気持ちよさと、判断に使えることは別です。

これは受注側が持ち込む失敗です。言葉を扱うのが仕事なので、整えたくなります。整えた結果として使えなくなったなら、それは引き受けた側の責任です。判断に使えるかどうかを最後に確かめるところまでが、仕事の範囲です。

ふたつめは、他社と入れ替えても成立することです。工程2で確かめたはずのことが、工程3で言葉にする段階で戻ってしまうことがあります。一文にまとめようとすると、角が取れて一般的な表現に寄るためです。

絞る作業と、言葉にする作業は別なので、それぞれの終わりで確かめる必要があります。絞れていたのに、書いたら戻っていた。これは起こります。

みっつめは、決めた人だけが意味を分かっていることです。決める場にいた人には、その言葉に至るまでの議論が入っています。あとから受け取った人には、結論の一文しか渡りません。同じ言葉でも、持っている情報量が違います。

対策は、決めた理由を一緒に残すことです。何を候補にして、なぜそれを選ばなかったのか。選ばなかったほうの記録が効きます。

よっつめは、一度決めて、そのまま置いてあることです。事業が変われば、約束できる中身も変わります。三年前に決めた約束が、いまの事業と合っているかは、見直さなければ分かりません。

見直す時期を最初に決めておくのが確実ですが、その提案をするのは、決める作業を引き受けた側の仕事です。

作るものではなく、見つけるもの

コンセプトは、新しく発明するものではありません。すでにやっていることのなかにある約束を、言葉にしたものです。

だとすれば、決まった時点で終わりにはなりません。言葉にしたあと、それが実際に使われているかどうかで、価値が決まります。

確かめる方法は、この記事の6章にあります。社員が同じことを言えるか。制作物から説明できるか。やらないことが決まるか。迷ったときに使われるか。

四つとも、新しく調べる必要はありません。すでに起きたことを見るだけです。作るより、確かめるほうが早く済みます。そして、確かめないまま作り直すと、同じところに戻ります。

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