ブランドマネジメントとは。プロジェクトが終わる日に、何を誰に渡すか

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ブランドマネジメントとは。プロジェクトが終わる日に、何を誰に渡すか

ブランディングのプロジェクトが終わりました。ロゴも、色も、言葉も決まり、ガイドラインも納品されました。打ち上げも済んで、関わった人たちはそれぞれの仕事に戻っていきます。

では、明日から誰が何をするのか。ここが決まらないまま、終わりの日を迎える会社もあります。

この記事で書くのは、ブランドマネジメントとは何かから、プロジェクトが終わる日に何を誰に渡し、受け取った人が何をするかまでです。

ブランドマネジメントとは

ブランドマネジメントは、決めたブランドを、使われる場面で崩さずに保ち、必要なときに変えていく仕事です。

ブランドをつくる仕事は、ブランディングと呼ばれます。何を約束するかを決め、名前やロゴや言葉に形にする。ブランドマネジメントは、その形になったものを、日々の仕事の中で保ち続けるほうです。

二つの違いを、私たちは期限で分けて考えています。ブランディングは、期限のある仕事です。いつ決めて、いつ公開するか。プロジェクトとして始まり、終わります。ブランドマネジメントには期限がありません。会社が続くあいだ、続きます。

ブランドを会社の資産として扱い、その価値を測りながら育てていく、という説明もあります。考え方としてはその通りです。ただ、測る前に、もっと手前で止まっていることがあります。期限のある仕事から、期限のない仕事への受け渡しです。

終わる日に、作った人たちは離れる

プロジェクトには、終わりがあります。

外に頼んでいたなら、制作会社は次の案件に移ります。社内でプロジェクトのために集まったメンバーも、元の部署の仕事に戻ります。決めた理由を知っている人たちが、まとめていなくなる日が来ます。

人が入れ替わって、理由が少しずつ失われていく話は、商品ブランディングとは。共通にするものと、分けるものを決めるに書きました。ここで書くのは、それとは別の、一度に離れる日のことです。担当の交代は一人ずつ起きますが、プロジェクトの終わりには、関わった人がそろって手を離します。

中小企業のブランディング。決めたあとに時間を使う進め方では、「続ける工程は、社内でやります」と書きました。制作で終わる進め方が成り立つのは、その先を受け持つ人が社内にいる場合です。

ただ、続ける作業のすべてを社内でやらなければならない、という意味ではありません。制作物を作る作業は、外に頼み続けることもできます。それでも外に置けないものが一つあります。新しく作ったものを、うちのブランドとして出してよいかを、最後に決める役です。これは、その会社の中にしか置けない、と私たちは考えています。

だから、期限のない仕事は、終わりの日に社内の誰かが受け取ることになります。受け取る人がいなければ、決めたものはその日から、誰のものでもなくなります。

何を引き継ぐか

終わりの日に受け取るものは、ガイドラインの冊子だけではありません。

並べると、次のようになります。

引き継ぐもの 中身
決めたもの 約束、名前、ロゴ、色、言葉
決めた理由 なぜそれを選び、何を選ばなかったか
使う場所 どの場面で、どれを使うか
データと置き場所 元のデータと、それがどこにあるか
判断の窓口 決まりに無いことが起きたときの聞き先
見直すきっかけ どんな出来事があったら、見直すか
委託先 誰に何を頼んでいて、相手が何を持っているか

一つずつの中身は、それぞれ別の記事で扱っています。約束をどう言葉にするかはブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するか、ロゴのデータをどう渡すかはロゴガイドラインの作り方。データを渡す前に、相手の判断を済ませておく、色の値はコーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていないに書きました。

この一覧で見てほしいのは、項目の多さより、それが一か所にまとまっているかどうかです。理由は打ち合わせの議事録に、データは制作会社のサーバーに、判断の窓口は誰かの頭の中に。散らばったままだと、受け取る人は何を受け取ったのかが分かりません。

抜けやすいのは、最後の委託先の行です。ロゴの元データ、サイトの管理画面、印刷の版。外の会社の手元にあるものは、プロジェクトが終わると、こちらからは見えにくくなります。誰が何を持っているかが分かっていれば、必要になったときに取りに行けます。

一覧の行には、作った側にしか書けないものと、社内でしか書けないものがあります。決めた理由、データ、委託先は、作った側が知っています。使う場所の細かいところ、判断の窓口、見直すきっかけは、社内でしか決められません。両方が埋まって、はじめて一覧は使えるものになります。

この一覧は、終わる前に、作った側に求めておくと揃います。終わったあとで集めようとすると、関わった人はもう別の仕事の中にいます。

誰が受け取るか

受け取る人には、二つのものが要ります。決める権限と、日々見る時間です。

決める権限がない人が受け取ると、判断のたびに上に聞くことになり、受け取った意味が薄れます。見る時間がない人が受け取ると、一覧は机の上で止まります。

一人で両方を持てるなら、判断は速く回ります。持てないなら、二人で分けます。決めるのは経営に近い人、日々見るのは現場に近い人。分けたときは、どこまでを見る人が決めてよく、どこからを決める人に上げるかを、最初に一言で決めておきます。

中小企業で誰が見るか、どう時間を取るかは、先に挙げた中小企業の記事で扱っています。社員にブランドを伝えていく進め方は、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方にあります。

受け取る人を決めたら、社内に知らせます。何かを作る人が、出す前に誰に見せればいいかを知らなければ、通り道はできません。

受け取る人は、終わりの日より前に決めておきます。受け取る人が決まらないまま終わりの日を迎えると、引き継ぐものの一覧は、誰の机にも載りません。作る側にとっても、誰に渡すのかが分かっていなければ、渡す形を決められません。受け取る人が決まっているかを、終わる前に確かめておくのは、作る側の仕事です。

受け取った人がすること

受け取った人の仕事は、毎日あるわけではありません。ある場面が来たときに、動きます。

よく来るのは、新しく何かを作る場面です。展示会のパネル、新しいサービスの案内、採用のページ。作られたものが外に出る前に、受け取った人の前を一度通るようにします。そのとき照らすのは、引き継いだ一覧です。決めた約束と食い違っていないか。使う場所の決まりに沿っているか。

新しい名前を付けたいという話も、ここを通ります。名前は意図しないうちに増えるので、増やすかどうかを判断する場所が要ります。その考え方はブランドアーキテクチャとは。ブランド体系を、後から並べ直すに書きました。

書いていないことが起きる場面もあります。決まりに当てはまらない依頼、急ぎの例外。例外をどう扱い、何を記録するかは、ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかにまとめています。

そして、変えるかどうかを決める場面です。事業の範囲が広がった、取引の相手が変わった、社名を改めた。見直すきっかけは、期間より出来事のほうが分かりやすく来ます。ロゴのように外に出ているものを変えるときの考え方は、ロゴを変更するとき。リニューアルで失うのは、見た目ではなく手がかりにあります。

効いているかを、何で見るか

ブランドマネジメントが効いているかを確かめるとき、ブランドの価値そのものを測ろうとすると、時間もお金もかかります。その前に見られるものがあります。

新しく作ったものが、受け取った人の前を通ってから出ているかです。

ここしばらくのあいだに外に出たものを思い出してみます。パンフレット、サイトの更新、SNSの投稿、展示会の装飾。そのうち、出る前に受け取った人が見たものはどれか。見ていないものが出ていたなら、通り道のどこかが抜けています。誰も知らないうちに作られたのか、急ぎで飛ばしたのか、受け取った人が見る時間を取れなかったのか。

出たものを並べて、決まりと照らす見方もあります。そちらはブランドガイドラインの記事に書きました。ここで見ているのは、出たものの出来ではなく、出るまでの道です。道が通っていれば、出たものの出来は少しずつ揃っていきます。

外から見たブランドのずれに気づく方法は、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法で扱っています。

受け取った人も、いつか替わる

受け取った人も、いつか異動し、退職します。期限のない仕事なので、持つ人のほうが先に替わります。

そのときに役に立つのが、終わりの日に受け取った一覧と、そのあとの判断の記録です。どんな例外を認めたか、何を通して、何を通さなかったか。記録があれば、次の人は前の人の判断から始められます。

替わるときは、一覧を渡すだけで終わらせず、次の人と一緒に、新しく作るものを一度通してみます。どこを見て、何に照らすのかは、一覧を読むだけでは伝わりにくいところだからです。

一覧は、受け取ったときのまま置いておくと古くなります。データの置き場所が変わった、委託先が替わった、判断の窓口が別の人になった。そのつど書き換えておけば、次に渡すときに、また一から集めずに済みます。

方法より先に、渡す日を決める

ブランドマネジメントは、ルールを増やすところから始めるものではありません。

プロジェクトが終わる日に、何を、誰に渡すか。受け取った人が、何を通し、何を記録していくか。期限のある仕事と、期限のない仕事のあいだの受け渡しを決めておくことが、マネジメントの最初の仕事です。

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