コーポレートサイトのリニューアル。作り直す前に、何が変わったかを見る
作り直す前に、何が変わったか
サイトを作り直すかどうかは、見た目が古くなったかどうかでは決まりません。会社の側で何が変わったかで決まります。事業や伝えたい相手が変わったなら作り直す。変わっていないなら、載っている情報を新しくするだけで足ります。この見分けがついていないまま制作会社を探すと、何を作るかが決まりません。
ご相談は「そろそろ古くなってきた」「ホームページを新しくしたい」という形で始まります。動機としては自然なものです。他社のサイトを見て、自分たちのものが見劣りすると感じる。更新が止まっていて、載っている情報が実態と合っていない。どれも、作り直しを考える理由になります。
きっかけになる場面も、だいたい似ています。採用を強めたい。営業で見せるものとしてサイトを使いたい。取引先や金融機関に見られる機会が増えた。社名やロゴを変えたので、そこに合わせたい。いずれも、外からの見られ方が変わる場面です。
ただ、そこから「作り直して何を実現したいのか」までは、その場で答えが出ないこともあります。起点が「見え方を良くしたい」という要望であることが多いためだと考えられます。
この記事では金額を書きません。制作会社の名前も出しません。書くのは、作り直すかどうかをどう見分けるかと、作り直すと決めたときに社内から出さなければならないものです。後者が、日程を左右します。
更新で足りるか、作り直すか
更新と作り直しの違いは、手を入れる範囲ではありません。中身が変わったかどうかです。
| 更新 | 作り直し | |
|---|---|---|
| 変えるもの | 載っている情報 | 構造と、何を載せるかの決め方 |
| 向いている状況 | 中身は同じで、情報が古い | 事業や、伝えたい相手が変わった |
| 社内で要るもの | 差し替える文章と写真 | 中身を決め直す時間 |
事業が変わっていないのに作り直すと、同じ内容が新しい見た目で並びます。会社の説明も、事業の紹介も、書かれていることは前と同じ。変わったのは配置と色だけ、という状態です。それでも見た目は新しくなるので、しばらくは満足します。ただ、問い合わせの数や、採用の応募が動く理由にはなりません。
「作り直したのに、前と変わらなかった」という話は、この見分けを飛ばしたときに起きます。手を入れる範囲を先に決めて、載せる中身は今あるものをそのまま移す。すると、出来上がるのは同じ内容の新しい版です。作業としては終わっていますが、変えたかったものは変わっていません。
一方で、中身が変わっているなら、更新では追いつきません。事業が増えた、扱う相手が変わった、会社を分けた。こうした変化は、ページを1枚足して済む話ではなく、何をどの順で見せるかから決め直すことになります。既存のページに書き足していくと、会社の説明がどこにあるのか分からない状態になります。
道具としての不具合は、これとは別に扱います。スマートフォンで見づらい、社内で更新できない、表示が崩れる。これらは中身の話ではなく、作られた時期の話です。中身が変わっていなくても、道具として使えないなら作り直す理由になります。この場合、載せるものは今のまま移してよく、決め直す時間は要りません。
どちらなのかを言うのは、依頼する側の宿題ではありません。話を聞いた時点で、更新で足りるならそう言うのが、相談を受けた側の仕事です。作り直しを前提に話が進むなら、なぜ作り直しなのかを説明してもらってください。
作り直しても変わらないもの
作り直すと解決する問題と、作り直しても残る問題があります。この2つを分けておくと、どこまでを作り直しに期待してよいかが決まります。
作り直すと変わるのは、見つけやすさと、伝わる順番です。探している情報にたどり着けない、事業の説明が分かりにくい、問い合わせのボタンが見当たらない。こうしたものは、構造を作り直せば改善します。
残るのは、何をしている会社なのかが定まっていない、という状態です。社内で説明が揃っていないと、サイトに書く文章も揃いません。書く人によって違うことが書かれ、読む側は結局よく分からない。これは配置の問題ではないので、作り直しても同じことが起きます。
価格で比べられる、採用で選ばれない、といった課題も同じ性質を持ちます。サイトが原因の一部であることはありますが、原因の全部ではありません。作り直して効く部分と、効かない部分があります。
もう一段、手前まで戻ります。サイトを見て問い合わせるかどうかを決める人は、そこに書いてあることを読んで判断します。書いてあることが変わらなければ、読んだあとの判断も変わりません。作り直しで変えられるのは、読んでもらえるところまでです。
同じ構造は、リブランディングでも起きます(リブランディングが失敗するとき、デザインは悪くない)。手を入れる対象がロゴでもサイトでも、見た目の手前で決まっていないことは、見た目を変えても決まりません。
だからといって、決まるまで待つ必要はありません。作り直す過程で決めることもできます。ただし、それには時間がかかります。日程を引くときに、その時間が入っているかどうかで、進み方が変わります。
中身は社内にしかない
サイトを作り直すとき、制作会社が作れないものがあります。載せる中身です。
業界に定まった分け方があるわけではありません。私たちは、こう分けて考えています。
| どちらが用意するか | |
|---|---|
| 構造と設計 | 制作会社 |
| デザイン | 制作会社 |
| 実装と公開 | 制作会社 |
| 会社と事業の説明 | 社内 |
| 実績・事例と、その掲載の許可 | 社内 |
| 社員と職場の写真 | 社内で手配 |
| 会社の数字(設立、拠点、規模) | 社内 |
| 採用の情報 | 社内 |
| 問い合わせが来たあとの対応 | 社内 |
制作会社が作れるのは、入れ物と見せ方です。文章を整えたり、写真を撮ったりする部分は引き受けられますが、元になる事実と、何を載せると決める判断は、社内から出ます。
とくに時間がかかるのは、許可が要るものです。実績を載せるなら、取引先に確認します。社員の顔を出すなら、本人の了解が要ります。断られることもあり、そのときは別の見せ方を考え直すことになります。この往復は、制作の進み具合とは関係なく発生します。
数字も、思ったより手間がかかります。設立年や拠点は分かりますが、社員数をどの時点のものにするか、関連会社を含めるか、といった判断が入ります。決める人を確かめているうちに時間が過ぎます。
「文章は制作会社に書いてもらう」という進め方もあります。取材を受けて、それをもとに書いてもらう形です。手間は減りますが、なくなるわけではありません。取材の時間を取ること、上がってきた原稿を読んで直すこと、事実の間違いを見つけること。書く作業は外に出せますが、正しいかどうかを判断する作業は社内に残ります。
誰が答えるかも決まっていないと、取材が進みません。事業の説明は社長が話せても、現場の仕事の中身は担当者しか知らない、ということが起きます。誰に何を聞くかを整理してから始めると、往復が減ります。
そして、何を載せるかを決めるには、その手前が決まっている必要があります。誰に何を約束する会社なのかです。ここが言葉になっていないと、載せるものを選ぶ基準がありません(ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方)。
なお、社内にしかないものを引き出すのは、依頼する側が自力でやることではありません。何を聞けば出てくるかを設計して、聞きにいくのが引き受けた側の仕事です。「材料をください」と待つだけなら、材料は出てきません。
止まるのは原稿と写真
制作が止まる場面は、デザインを決めたあとに来ます。
構造が決まり、見た目が決まると、次は中身を流し込む工程になります。ここで、入れる文章が出てきません。誰が書くかが決まっていない。書いた人と、決める人が違う。決める人が忙しくて確認が返ってこない。作業そのものは短くても、往復が入ると日程が延びます。
写真は、撮る日を決めるところから始まります。社員を集める日程、場所の準備、着るものの相談。撮ったあとに選ぶ工程もあります。制作の日程表には「写真」と1行で書かれますが、中身は複数の段取りです。
文章の作り方は、社内で書く、取材を受けて書いてもらう、いま載っているものを直して使う、のどれかになります。どれを選ぶかで、社内にかかる手間が変わります。いま載っているものを使う場合が軽く見えますが、書かれている内容が古ければ、直す作業は新しく書くのと変わりません。
過去の実績や事例も、集めるのに時間がかかります。どの案件を載せるか、写真は残っているか、先方の許可は取れるか。社内の別の部署に頼むことになれば、そちらの都合も入ります。
防ぎ方は、誰がいつまでに何を出すかを、制作の日程と一緒に決めておくことです。構造が決まってから考え始めると、その時点から往復が始まります。
もっとも、この段取りを依頼する側が組み立てるものではありません。何がいつ必要かを、着手の時点で一覧にして渡すのが、引き受けた側の仕事です。必要になった順に頼まれる進め方だと、社内で予定を立てられません。
進め方は、中身の準備から
工程そのものは、探せば出てきます。ここで書くのは、中身の準備を工程のどこに置くかです。
制作会社を探す前にできることがあります。何が変わったかの整理と、いま載っているものの棚卸しです。前者は2章の見分けで、後者は今のサイトのページを一覧にして、残すもの、直すもの、消すものに分ける作業です。この2つは、相手が決まっていなくても社内だけで進みます。そして、これがあると見積もりの前提が揃います。
棚卸しのやり方は単純です。いまのサイトのページを一覧にして、それぞれに「残す」「直す」「消す」を付けます。付けられないページが出てきたら、そこは判断する材料が足りないところです。誰かに聞けば決まるのか、方針から決め直すのかを分けておきます。
探し始めてからでも間に合うものもあります。写真、細かい文章、採用ページの内容。これらは構造が決まってから作るほうが無駄になりません。先に全部そろえようとすると、使わないものまで作ることになります。
工程の中身そのものは、リブランディングの記事に詳しく書いています(リブランディングとは。意味・進め方・費用・判断のタイミング)。サイトの作り直しでも、決める順番は同じです。
依頼先をどう選ぶかは、この記事の範囲を超えます。会社の型から選ぶ話はブランディング会社の選び方。4つの型と、自社に必要な型の見分け方に書いています。
社内の体制も、この段階で決めます。窓口を誰にするか、決める人が誰か、確認にどれだけ時間を見るか。窓口が複数いると、制作側に届く指示が食い違います。決める人が打ち合わせに出ていないと、持ち帰って伝えることになり、そのあいだに意図が薄まります。
そして、中身の準備を工程に組み込んで日程を引くのは、依頼する側の役目ではありません。進行を預かる側が、社内の作業も含めた日程を出すところまでが仕事です。制作側の工程だけが書かれた日程表は、実際には守れません。
いまのサイトの蓄積をどう扱うか
いま動いているサイトには、これまでの蓄積があります。作り直すときに、そこをどう扱うかを決めておきます。
ドメインは引き継げます。変える理由がなければ、そのまま使うのが素直です。社名が変わった、別の名前で事業を始める、といった事情があるときだけ、変更を検討します。
気をつけるのは、ページの住所です。作り直すと、各ページのURLが変わることがあります。変わると、これまでそのページに来ていた入口が切れることがあります。検索から来ていたページ、他社のサイトから紹介されていたページ、社内の資料に書いてあるページ。どれも、住所が変わると届かなくなります。
だから、作り直す前に把握しておく項目があります。いまどのページが見られているか。どこから来ているか。外部から紹介されているページはあるか。これが分かっていれば、住所を変えないという判断も、変えたうえで転送するという判断もできます。分からないまま作り直すと、切れたことにも気づきません。
記録が残っていない場合もあります。計測の仕組みを入れていない、担当者が変わって見方が分からない、といった状態です。そのときは、いまから記録を取り始めるという選択もあります。作り直しの検討には時間がかかるので、そのあいだの分だけでも材料になります。
過去のお知らせや実績も、消すか残すかを決めます。古い情報が残っているのは良くないと考えて、まとめて消すことがあります。ただ、そのページが読まれていたなら、消した分だけ入口が減ります。古いかどうかと、読まれているかどうかは別です。
具体的な設定の方法は、この記事では扱いません。制作会社が引き受ける作業です。書いておきたいのは、確かめておく項目があるということと、それを作り直したあとに確かめるのでは遅いということです。
そして、いまのサイトのどこが見られているかを調べて示すのは、依頼する側が用意するものではありません。作り直す前にそれを出すのが、引き受けた側の仕事です。調べずに作り直せば、何が失われたかを誰も測れません。
何が変わったかから始める
サイトを作り直すかどうかは、見た目ではなく、会社の側で何が変わったかで決まります。
中身が変わっていないなら、載っている情報を新しくするだけで足ります。道具として使えなくなっているなら、中身はそのままで作り直します。事業や伝えたい相手が変わったなら、何を載せるかから決め直します。
そして、決め直すことになったとき、その中身を出せるのは社内だけです。制作会社が作れるのは入れ物と見せ方で、そこに入るものは会社の中にしかありません。日程が延びるとすれば、そこが理由になります。
作り直すと決めたあとに社内でやることは、この記事に書いたとおり先に見えています。見えていれば、日程に入れられます。
決まっていないなら、決めるところから一緒にやってくれる相手を選ぶ。それも、ひとつの選び方です。