Author: studio_inter_p_2023

ロゴガイドラインの作り方。データを渡す前に、相手の判断を済ませておく

ロゴガイドラインの作り方。データを渡す前に、相手の判断を済ませておく

「ロゴのデータをいただけますか」。取引先から、印刷会社から、イベントの主催者から、そう頼まれる場面があります。手元のデータを送れば、その場は済みます。 ただ、送ったデータがどう使われるかは、送った時点では決まっていません。決めるのは、受け取った人です。 この記事で書くのは、データを手にした人が次に何をしそうかを見るところから、ロゴの使い方の決まりを書き、データと一緒に渡すところまでです。 ロゴガイドラインとは ロゴガイドラインは、ロゴの使い方の決まりをまとめたものです。どのデータを使うか、ロゴの周囲にどれだけ空きを取るか、どこまで小さくしてよいか、してはいけない使い方は何か。ロゴマニュアル、ロゴの使用規定、レギュレーションと呼ばれることもあります。 会社の見え方や言い方の決まり全体は、ブランドガイドラインと呼ばれます。ロゴガイドラインは、その中のロゴの部分です。全体の作り方と、使われなくなる理由はブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかに書いています。 この記事は、ロゴの部分だけに絞ります。色の値の決め方や書体の話は扱いません。そのかわり、ロゴならではの事情を書きます。ロゴは、会社の外に出ていき、ほかの人の手で置かれる部材です。 受け取った人は、置く場所で手を加える ロゴのデータを受け取る人は、いろいろです。社内で資料を作る人。チラシや看板を作る制作会社や印刷会社。サイトに取引先の一覧を載せる会社。記事に社名を出すメディア。協賛先として名前を並べる主催者。 このうち、ロゴを作った人と話せるのは、社内のごく一部です。外の人ほど、作った人に聞き返せません。聞き返せないまま、手元のデータと、置く場所の事情で判断します。 置く場所には、それぞれ事情があります。 背景が暗い色なら、ロゴが沈んで見えます。受け取った人は、色を反転させたり、白い四角を敷いたりします。 枠が正方形なら、横長のロゴは収まりません。縮めて小さく置くか、端を切るか、縦横の比率を変えて押し込むことになります。 小さな欄に置くなら、細い線が潰れます。拡大に耐える形式のデータでなければ、ぼやけたまま使われます。 写真の上に置くなら、ロゴが読みにくくなります。影を足したり、ふちを付けたりして、浮かせようとします。 隣に別の会社のロゴが並ぶなら、大きさを揃えようとします。揃え方は人によって違います。 どれも、受け取った人が、その場所でロゴを見やすくしようとした結果です。悪気はありません。ただ、出来上がったロゴは、作った人が考えていた形とは違うものになります。 誰に渡すかで書く中身や長さを変える考え方は、ブランドブックとは。ガイドラインとの違いと、どちらが要るかの決め方で書いています。ロゴの場合は、それに加えて、受け取った人がどこに置きそうかまで見ておく必要があります。 決まりなしでデータが回ると ここで扱う範囲を、先に分けておきます。決まりを理由と一緒に渡す話は、ブランドガイドラインの記事で書きました。ロゴを頼むときに、使い方の決まりを納品物に含めておく話は、ロゴ制作の依頼。何が納品されるかで、見積もりは変わるに書いています。この章で書くのは、決まりが付かないまま、データだけが回ったあとに起きることです。 受け取った人が手を加えたロゴは、そこで止まりません。 取引先が自社のサイトに載せたロゴを、別の担当者が資料に貼ります。そのときに使うのは、元のデータではなく、サイトから保存した画像です。印刷会社が作ったチラシのロゴが、次のチラシの元になります。手を加えたロゴが、次の人にとっての元のデータになります。 図をタップすると、拡大して見られます こうして回るうちに、ロゴは少しずつ変わっていきます。比率が少し縦に伸びたもの、色が少し違うもの、ふちが付いたもの。一つずつ見れば小さな違いでも、並べると別のロゴに見えます。 このとき、手を加えた人に注意をしても、元には戻りません。一人ひとりは、手元にあった材料で判断しただけだからです。相手が間違えているのではなく、判断の材料を持っていません。 材料というのは、決まりと、決まりに合ったデータの両方です。決まりだけを渡しても、合うデータが手元になければ、手元の画像が使われます。データだけを渡しても、どこにどれを使うかが分からなければ、受け取った人が選びます。 どのデータを、どの場面に ロゴのデータには、組み方、色の版、画面用と印刷用の形式といった種類があります。何を受け取っておくべきかは、前の章で挙げたロゴ制作の依頼の記事に書きました。そこでは、依頼する側の目で、場面と版を結びつけています。 ガイドラインでは、同じ対応を、受け取った人がファイルを選ぶ目で書き直します。どの場面で、どのファイルを開けばよいかです。 図をタップすると、拡大して見られます たとえば、暗い背景に置く場面には、白く抜いた版のファイルを指す。前の章で挙げた置く場所の事情に、開くファイルを一つずつ当てていきます。 対応が書いてあれば、受け取った人は加工をせずに済みます。暗い背景だから色を反転させる、という判断を、受け取った人がしなくてよくなります。 ファイルの名前も、この対応に合わせます。横組み、フルカラー、印刷用と、種類だけを並べた名前では、受け取った人はどれが自分の場面に合うのかを考えることになります。暗い背景用、正方形の枠用と、使う場面が名前から引けるようにしておく。種類の情報も要るので、場面と種類の両方を名前に入れておくと、制作会社の人も社外の人も、同じファイルにたどり着けます。ガイドラインを読まずにデータのフォルダだけを開いた人でも、正しいものを選びやすくなります。 場面ごとに使えるデータを揃えて渡しておけば、受け取った人は選ぶだけで済みます。揃えておくのは、ロゴを作る側です。 禁止は、相手がやりそうなことから書く してはいけない使い方の一覧は、ロゴガイドラインの定番の項目です。比率を変えない、色を変えない、影を付けない。 この一覧は、思いつく限り並べるより、受け取った人がやりそうなことから選ぶほうが効きます。前の章で見た加工が、そのまま候補になります。縦横の比率を変えて枠に押し込む。背景に合わせて色を変える。写真の上で影やふちを足す。SNSのアイコンに合わせて丸く切り抜き、端が欠ける。 どれも、善意でやる加工です。善意の加工ほど、禁止されていると知らなければ起きます。逆に、誰もやりそうにない加工を並べても、読む人の目は止まりません。 書き方は、文章より図のほうが伝わります。正しい例と、やってはいけない例を並べて見せる。「比率を変えない」と書くより、横に伸びたロゴの図を一つ置くほうが、何が駄目なのかがすぐに分かります。 余白と、小さくできる限界も、ここで決めておきます。どちらも、なぜ要るのかを一言添えます。余白は、隣に置かれたものとロゴが混ざらないため。小さくできる限界は、細い部分が潰れて形が変わる手前で止めるため。理由が分かっていれば、ガイドラインに書いていない場面でも、受け取った人が同じ判断をしやすくなります。 禁止の例は、図で用意して渡します。言葉だけで渡すと、受け取った人が頭の中で絵にすることになり、そこでまた解釈が分かれます。 図をタップすると、拡大して見られます 他のロゴと並ぶとき ロゴは、一つだけで置かれるとは限りません。イベントの協賛一覧、取引先の一覧、共同で作るチラシ。ほかの会社のロゴと並ぶ場面があります。 並ぶ場面で起きるのは、大きさと間隔の揃え方の違いです。横長のロゴと正方形に近いロゴを、同じ幅に揃えると、正方形のほうが大きく見えます。同じ高さに揃えると、横長のほうが大きく見えます。並べる人は、どちらかを選ぶことになります。 ここで、自社のガイドラインだけでは決めきれないことがあります。並ぶ相手にも、それぞれの決まりがあるからです。並べ方の全体を決めるのは、並べる場を作る側です。 だから、自社側で書けるのは最低限になります。並んでいても、自社のロゴのまわりの余白は守ること。並べる場面で使ってよいデータはどれか。そして、並べたときの大きさについて相談したいときの連絡先。 ここまで書いてあれば、並べる人は、自社のロゴについて迷わずに済みます。全体の釣り合いは、並べる人の判断に任せられます。私たちも、ロゴを納めるときに、ほかのロゴと並ぶ場面の決まりまで用意することがあります。 渡し方と、置き場所 ガイドラインとデータは、同じ場所にまとめて渡します。 図をタップすると、拡大して見られます 別々に渡すと、データだけが回ります。メールにデータを添付し、ガイドラインは別のリンクで送る。受け取った人はデータを開いて使い、リンクのほうは開かれずに終わることがあります。データのフォルダの中に、ガイドラインも入れておく。そうすれば、データを開いた人の目に入ります。 ガイドラインの中には、問い合わせ先を書いておきます。書いていない場面が来たとき、受け取った人が聞ける先です。判断の窓口をどう決めるかは、ブランドガイドラインの記事で書いたとおりです。 社内向けと社外向けで、同じものを渡す必要はありません。社内向けは、ブランドガイドラインの中にロゴの部分として入れます。社外向けは、そこからロゴの使い方だけを抜き出した短いものにします。抜き出しにしておけば、中身が二重になって、どちらかだけが古くなることを避けられます。私たちも、取引先やメディアに渡すための、1枚程度の社外向けのロゴガイドラインを作ることがあります。 そして、ロゴが変わったときのことも考えておきます。一度渡したデータは、手元から離れています。取引先のサイトにも、印刷会社の作業フォルダにも、前のロゴが残ります。変えるときの進め方はロゴを変更するとき。リニューアルで失うのは、見た目ではなく手がかりに書きました。ガイドラインに版と日付を入れておくと、どれが新しいものかを相手が見分けられます。 ガイドラインとデータを一緒に渡すところまでが、ロゴを作る側の仕事です。 渡す前に、判断を済ませておく ロゴガイドラインは、守らせるための規則というより、受け取った人の迷いを先に減らしておくものです。 データを受け取った人は、置く場所の事情に合わせて、その場で判断します。その判断を、渡す側で先に済ませておく。どの場面でどのデータを使うか、何をしてはいけないか、迷ったら誰に聞くか。 ロゴは、渡した先で使われます。だから、作り方の出発点は、受け取った人が次に何をしそうかです。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 コーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていない コーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないもの トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳する 記事一覧を見る

ブランド名の決め方。名前ひとつに、全部を言わせない

ブランド名の決め方。名前ひとつに、全部を言わせない

新しい商品やサービスの名前を考え始めると、候補はすぐに集まります。並べてみると、どれも悪くない。けれど、どれにも決め手がない。会議を重ねるほど、候補は増えて、決まらなくなります。 決め手がないのは、候補が悪いからとは限りません。名前ひとつに、言わせたいことを詰め込みすぎていることがあります。 この記事で書くのは、その名前が新しく要るかを確かめるところから、名前に担わせるものを決め、候補を出して絞り、決めた理由を残すところまでです。 ブランド名とは ブランド名は、会社や商品、サービスを指して呼ぶための名前です。会社名のこともあれば、商品名やサービス名のこともあります。この記事の決め方は、どれにも使えます。 会社名を決める場合は、もう一つ別の話が加わります。登記する商号には、使える文字や表記のルールがあります。これは手続きの話なので、この記事では扱いません。ここで書くのは、どんな名前にするかの決め方です。 名前は、一度外に出ると変えにくいものです。名刺や看板に刷られ、取引先の台帳に登録され、検索で見つけてもらう手がかりになります。だから決める前に、少し手前から考えておく価値があります。 その名前は、新しく要るか 最初に確かめたいのは、その名前が本当に新しく要るかどうかです。 新しい名前を付けると、外の人が覚えるものが1つ増えます。会社名があり、商品名があり、サービス名があり、さらにその下に名前が付く。付ける側にはそれぞれ理由がありますが、受け取る側は合計で覚えることになります。名前が増えていく仕組みと、すでに増えた名前の並べ直し方は、ブランドアーキテクチャとは。ブランド体系を、後から並べ直すに書いています。 新しい商品なら、会社の名前を前に出して売る道もあります。会社の名前を冠するか、商品ごとに独立した名前にするか。この判断は、商品ブランディングとは。共通にするものと、分けるものを決めるで扱っています。 確かめた結果、新しい名前は要らないと分かることもあります。それも一つの答えです。名前を考える側にとっても、要らないと分かったらそう伝えるのが、仕事の一部です。 名前ひとつに、全部を言わせない 新しい名前が要ると決まったら、候補を出す前に、名前に何を担わせるかを決めます。 名前に言わせたくなるものは、たくさんあります。何をしている会社か。誰に何を約束しているか。どんな人柄の会社か。他とどう違うか。全部を一つの名前に入れようとすると、名前は長くなり、説明的になり、同じ業種のどこにでもありそうな形になっていきます。候補のどれもが、どこかを言い足りなく見える。決め手がないと感じるのは、このときです。 名前のまわりの言葉を、私たちはコンセプト・タグライン・名前の3つで使い分けています。どこかで定められた区分ではありません。 約束を決めるのは、コンセプトです。誰に、何を約束するのか。それを短い言葉で定めたものです。決め方はブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に書いています。 その約束を、社名の隣で一文にするのがタグラインです。タグラインは、社名からは分からない部分、たとえば何をしている会社かも補います。タグラインとは。キャッチコピーとの違いと、短くならないときの原因では、「社名は、何をしている会社かを伝えません」と書きました。 そうすると、名前に残る仕事は絞られます。名前は、約束も、何をしているかも、言わなくてよい。呼ばれて、覚えられて、その会社やその商品を指せれば足ります。 会社らしさや人柄も、名前が一人で運ぶものではありません。見え方や言い方、ふだんの振る舞いのほうが、接するたびに伝わっていきます。その書き方はブランドパーソナリティとは。アーカーの5次元と、形容詞で終わらせない決め方にあります。 もちろん、何をしているかがそのまま分かる名前を選ぶ会社もあります。それも一つの決め方です。その場合も、名前に「何をしているか」を担わせると決めたうえで選んでいるなら、ほかのものまで背負わせずに済みます。大事なのは、担わせるものを先に決めることです。 名前を頼まれたときも、同じ順番になります。候補を出す前に、何を担わせるかを依頼した側と一緒に決めておく。名前を考える側は、そこから始めます。 図をタップすると、拡大して見られます 言わせようとした名前は、どこで落ちるか 担わせるものを決めずに候補を出すと、名前に何かを言わせようとした候補が並びます。それぞれ、落ちる場所が違います。 何をしているかを言わせようとした名前は、事業が広がったときに外れます。いまの事業をそのまま名前にすると、隣の事業を始めたとき、その名前では指せなくなります。名前が事業の幅を決めてしまうので、新しいことを始めるたびに、名前を足すか変えるかを迫られます。 約束を言わせようとした名前は、長くなります。約束は一語では言い切れないので、言葉を足していくことになります。長い名前は、口で伝えにくく、聞いた人が書き取れません。電話口で一度で通じない名前は、紹介されるたびに言い直しが要ります。 らしさを形容詞で言わせようとした名前は、同じ業種の名前と似てきます。誠実さや温かさを言いたい会社は、同じ業種にいくつもあります。同じ方向の言葉を選ぶので、並べると見分けがつきにくくなります。 図をタップすると、拡大して見られます 落ちた理由を裏返すと、残すべき条件になります。口で伝わり、聞いて書けること。同じ業種の名前と取り違えられないこと。事業が広がっても、その会社や商品を指し続けられること。 取り違えられないかは、候補だけを眺めていても分かりません。同じ業種の会社や商品の名前を書き出して、その中に候補を置いてみます。並べると、候補だけを見ていたときには気づかなかった似方が見えてきます。音が近い、頭の文字が同じ、同じ言葉を使っている。名刺の束や検索結果の中で、その名前がどう見えるかを先に試しておくわけです。 この条件は、名前に何も言わせないと決めると、満たしやすくなります。言わせたいことがないぶん、名前は短くでき、似た言葉を避ける余地も広がります。候補を捨てるときの基準は、このとき初めて手元にそろいます。 候補は、材料から出す 候補の出し方には、たくさんの方法があります。言葉を組み合わせる、別の言語に置き換える、新しい言葉を作る。方法は多いので、方法から探し始めると、どれを使うかで迷います。 方法の前に、材料を集めます。 一つは、事業の中で使われている言葉です。現場で使っている呼び方、作り方の工程の名前、扱っている素材。外の人にはなじみがなくても、その会社にしかない言葉が混ざっています。 もう一つは、相手が使っている言葉です。お客さんが商品をどう呼んでいるか、取引先が会社をどう紹介しているか。相手の口から出ている言葉は、すでに外で通じています。 そして、約束の言葉です。コンセプトに書いた言葉を、そのまま名前にするのではありません。そこから連想される言葉を広げていきます。 材料には、それぞれ弱みもあります。事業の言葉は、事業が変わると外れやすい。相手の言葉は、同じ業種のほかの会社も使っていることがある。約束の言葉は、そのまま使うと長くなりやすい。前の章で書いた落ち方と、同じ形です。どの材料から出た候補かを書き添えておくと、絞るときに、どこを疑えばいいかが分かります。 材料がそろったら、数を出します。この段階では、いい名前を探さずに、とにかく並べます。数が少ないうちに良し悪しを言い始めると、出す手が止まるからです。並べ終えてから、前の章の条件で落としていきます。 由来を聞いたあとで、名前だけで試す 候補が絞れてきたら、候補を見て意見を出し合う場面が来ます。 候補は、由来と一緒に受け取るのが基本です。なぜこの言葉なのか、どの材料から出てきたのか、前の章の条件をどう満たしているのか。由来が分からないままでは、候補どうしを比べる手がかりがありません。私たちも名前を考える仕事を請けていますが、候補を出すときは、由来を必ず説明しています。 ただ、由来を聞いた人は、その意味を知ったうえで名前を見ます。この言葉にはこういう意味があって、こういう思いを込めた。そう聞いたあとでは、名前の響きにも意味が重なって見えます。社内の評価は、由来の説明に引っぱられます。 外の人は、由来を知りません。名刺に書かれた名前、看板の文字、電話口で聞いた音。名前だけを受け取ります。説明を聞いて良いと思った名前が、外で同じように受け取られるとは限りません。 そこで、由来を聞いたあとに、名前だけで試す時間を社内でつくります。説明の場にいなかった人に、名前だけを書いて見せる。声に出して読み上げて、聞いた人に書いてもらう。何の名前だと思うかを聞く。由来を知らない人の反応が、外で起きることに近くなります。 ここで落ちる候補は、外でも同じところで落ちます。読み方が割れる名前、書き取れない名前、別の業種の名前に聞こえる名前。説明すれば通じる名前は、説明できない場面では通じません。 由来は、候補を比べるための材料です。名前だけで試した反応は、外での受け取られ方を先に見るための材料です。どちらか一方ではなく、両方を手元に置いて選びます。 図をタップすると、拡大して見られます 確かめることがある 名前の性質で絞った候補は、使えるかどうかも確かめる必要があります。ここからは、名前の良し悪しではなく、権利と空き状況の話です。 商標として、すでに誰かが登録していないか。ドメインは取れるか。SNSのアカウント名は空いているか。別の言語で、思わぬ意味になっていないか。 どれも、候補が決まってから見ると遅くなります。最後の一つまで絞ったあとで使えないと分かると、絞る前に戻ることになります。数が少し絞れた段階で、並行して確かめておくと戻りが小さくなります。 どう調べるか、どんな手続きが要るかは、ここでは扱いません。調べる役を誰が担うかも、案件ごとに変わります。弁理士などの専門家に頼む場合もあります。押さえておきたいのは、名前の良し悪しとは別に、調べる項目が並んでいるという事実です。そして、その項目があることを候補を出す前に伝えておくのは、名前を考える側の仕事です。 決めた理由を、由来と一緒に残す 最後に、誰かが決めます。 候補を多数決で決めると、由来の説明を聞いた人たちの評価で決まることになります。前の章で書いたとおり、その評価は、外の人の受け取り方とずれることがあります。決める人を先に決めておき、由来の説明と、名前だけで試したときの反応の両方を材料にして判断するほうが、外に近い決め方になります。 決めたら、決めた理由を書き残します。由来だけでなく、なぜこの名前にしたのか。ほかの候補が、どの条件で落ちたのか。 書き残しておくと、あとで役に立ちます。名前の由来を聞かれたとき、説明する人によって話が変わらずに済みます。そして、どの候補がどの条件で落ちたかが残っていれば、次に新しい名前が要るとき、同じ条件から絞り始められます。 図をタップすると、拡大して見られます 決める材料は、名前を考える側がそろえて渡します。候補の一覧だけを渡されたら、決める人の手がかりは好みだけになります。どの候補がどの条件で落ちたかまで付いていれば、決める人は理由を持って選べます。 名前は、使われて意味を持つ 名前に全部を言わせないと決めると、最初は物足りなく見えるかもしれません。何をしているかも、何を約束しているかも、名前からは分からないからです。 それで構いません。約束はコンセプトが決め、タグラインが社名の隣で一文にします。らしさは、見え方と言い方、振る舞いが伝えます。名前は、呼ばれ、覚えられ、指し続けられれば、仕事をしています。 名前の意味は、使われていくうちに後から付いてきます。決めた日の名前に、全部が入っている必要はありません。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するか ブランドステートメントとは。企業理念・タグラインとの違いと、書き方 ロゴ制作の依頼。何が納品されるかで、見積もりは変わる 記事一覧を見る

ブランドパーソナリティとは。アーカーの5次元と、形容詞で終わらせない決め方

ブランドパーソナリティとは。アーカーの5次元と、形容詞で終わらせない決め方

ブランドパーソナリティとは、人に例えたときのブランドの性格のことです。誠実そう、頼りになりそう、といった、人に対して持つのと同じ種類の印象を、会社や商品に対しても持つことがあります。 人に例えるのは、決めごとに書いていない場面でも「この人ならどうするか」を考えられるようにするためです。だから人格は、形容詞を選んで終わりにせず、場面での振る舞いで書きます。 この記事では、研究で使われている5つの次元から入ります。そのうえで、バリューやトーンアンドマナーとの違い、人に例える理由、書き方を扱います。 ブランドパーソナリティとは何か ブランドパーソナリティは、受け手の側で結びつくものです。 1997年に発表されたジェニファー・アーカーの論文では、「ブランドに結びつけられた人間的特徴の集合」と定義されています(訳は私たちによるものです)。結びつけるのは、ブランドを見る人の側です。会社が名乗った性格が、そのまま人格になるわけではありません。 この点で、ブランドイメージと近い位置にあります。イメージは、受け手が持っている印象の全体です。パーソナリティは、そのうち人に例えて語られる部分にあたります。イメージをどう扱うかは、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法に書きました。 では、会社の側には何ができるのか。名乗った性格と、読まれた性格は別のものですが、読まれる材料は会社の側から出ています。その材料を揃えることはできます。この記事の後半は、その話です。 パーソナリティという語は、人の性格を指す言葉です。ブランドに当てはめると、ブランドがもし人だったら、どんな人に見えるか、という意味になります。 似た言葉に、パーソナルブランドがあります。こちらは、個人が自分自身を一つのブランドとして扱う考え方で、この記事の対象とは別のものです。 アーカーの5次元 アーカーの論文は、ブランドの人格を5つの次元に整理しました。 次元 この記事での訳 Sincerity誠実さ Excitement刺激 Competence有能さ Sophistication洗練 Ruggednessたくましさ 日本語は、この記事で当てた訳です。論文では、5つの次元の下に15の側面と、42の特性語が置かれています。631人が37のブランドを分担して、114の語で評価した結果から導かれました。 書誌は次のとおりです。Jennifer L. Aaker, "Dimensions of Brand Personality," Journal of Marketing Research, Vol. 34, No. 3 (1997), pp. 347–356.(DOI) この論文を読むときに押さえておきたいのは、何のために作られたかです。 著者が実務での使い道として挙げているのは、ブランドの人格を測って、ほかのブランドと比べることです。商品の分野が違うブランドどうしでも、同じ物差しで比べられるようにする。そのための尺度です。広告やパッケージといった要素が、人格にどれだけ効くのかについては、まだ確かめられていないと論文の中で書かれています。作り方の手順を示した論文ではありません。 もう一つは、どこで作られたかです。回答者は、アメリカの人口構成に沿って選ばれています。著者自身も、別の文化圏ではこの尺度が合わない可能性があると書いています。 その後、アーカーらが日本とスペインで調べた研究があります。日本とアメリカに共通する次元として Sincerity、Excitement、Competence、Sophistication の4つが見つかり、日本に固有の次元として Peacefulness(穏やかさ)、アメリカに固有の次元として Ruggedness が見つかったと、論文の要旨で報告されています。書誌は、Jennifer L. Aaker, Verónica Benet-Martínez, Jordi Garolera, "Consumption Symbols as Carriers of Culture: A Study of Japanese and Spanish Brand Personality Constructs," Journal

コーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていない

コーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていない

コーポレートカラーの決め方を調べると、手順が見つかります。候補の色を集め、会社に合うものを1つ選ぶ。その進め方で、色は選べます。 ただ、選んだ色で名刺を刷ると、画面で見ていた色と違って届くことがあります。サイトの色と、看板の色と、資料の色が、並べると少しずつ違う。その時点で、決めたはずの色が、実はまだ決まっていなかったと分かります。 この記事で書くのは、どこまで決めれば「決めた」と言えるかです。候補を絞るところから、次に作る人が同じ色を出せるところまでを順に書きます。 コーポレートカラーとは コーポレートカラーは、会社そのものを指す色です。ロゴ、サイト、資料、名刺、看板、制服。会社が外に出るものに同じ色が使われていることで、見た人が「あの会社だ」と分かります。 会社の見え方を揃える決めごとを、VI(ビジュアル・アイデンティティ)と呼びます。色はその一部で、ロゴや書体と並んで置かれます。VI の全体はコーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないものに書いています。 似た言葉に、ブランドカラーがあります。呼び分けは会社によって違い、同じ意味で使うこともあります。この記事では、会社全体の色をコーポレートカラーと呼び、商品やサービスごとの色をブランドカラーと呼びます。 ブランドカラーの決め方を探して来られた方にも、この記事の手順はそのまま使えます。違うのは、誰を代表する色かです。会社全体を代表するなら、使う場所は会社の外に出るもの全部になります。商品を代表するなら、その商品が出る場所に絞られます。 そしてコーポレートカラーは、1色とは限りません。会社を指す色のほかに、それを支える色や、使わないと決めた色があります。その話は後の章で書きます。 選んだ時点では、まだ決まっていない 色見本から1色を選ぶと、決まったように感じます。ただ、その色は、ある1つの見え方でしかありません。 画面は光で色を出します。印刷はインクで色を出します。光とインクでは、出せる色の範囲が違います。画面では出せる鮮やかさが、インクでは出せないことがあります。画面で選んだ色をそのまま印刷に回すと、近い色にはなっても、同じ色にはならないことがあります。 印刷の中でも、紙が変われば見え方が変わります。表面がつるつるした紙と、ざらついた紙では、同じインクでも沈み方が違います。布に刺繍する、樹脂で成形する、金属に塗る。素材が変われば、また別の見え方になります。看板なら、照明の当たり方でも変わります。 画面同士でも、同じとは限りません。スマートフォンとパソコン、会議室のプロジェクターでは、同じ値の色が違って見えます。画面の色も、手元の1台で見て決めるものではありません。 色見本で選んだ1色は、このうちのどれか1つの見え方です。ほかの場所でどう見えるかは、まだ決まっていません。 図をタップすると、拡大して見られます 決まっている状態とは、作る人が、どこで使っても迷わずに同じ色を出せる状態です。名刺を刷る人も、サイトを作る人も、看板を発注する人も、同じ色を指して「これがうちの色だ」と言える。そこまで決めて、はじめて決まったことになります。 会社の印象が、色だけで決まるわけではありません。ただ、色がずれていると、揃っていないことは伝わります。サイトと名刺と看板が、少しずつ違う色で並んでいる。見た人は理由までは分からなくても、同じ会社のものだという手がかりが弱くなります。 何から絞るかは、先に決まっている 色の候補を減らす手がかりは、色の側にはありません。その会社が誰に向けて何を約束しているか、のほうにあります。約束と合わない色は、見比べる前に外れます。 約束から見え方を導く考え方は、トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳するで書きました。約束そのものが言葉になっていないなら、色より先にブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方の話になります。 色と印象を対応させた一覧は、探せば見つかります。青は誠実、緑は自然、といった形のものです。候補を出す入口としては使えます。ただ、絞る理由にはなりません。同じ一覧を見れば、同じ業種の会社は同じ色にたどり着きます。 約束で候補が絞れたら、次は、その色をどこで使うかで、もう一度絞ります。 使う場所を、色より先に並べる 候補の色を見比べる前に、その色を使う場所を並べます。 画面なら、サイト、資料、SNS。紙なら、名刺、封筒、パンフレット。素材なら、看板、制服、車両、パッケージ、店舗の什器。会社によって、並ぶものは違います。店舗を持たない会社なら店舗の看板は要らず、製品を持たない会社ならパッケージは要りません。 図をタップすると、拡大して見られます 並べると、候補から外れる色が出てきます。 画面では鮮やかに見えても、紙に刷ると沈む色があります。名刺の小さな文字や、SNS のアイコンのように画面の隅に小さく出る場所では、周りの色と見分けにくくなる色があります。白地の上で文字に使うと、明るすぎて読みにくい色があります。 色が使えない場所もあります。白黒で刷る書類、1色で押すスタンプ、紙に凹凸をつけるだけの型押し。そこでは色の手がかりがなくなり、形だけが残ります。色が無い場所でも会社だと分かるかを見ておくと、色に頼りすぎずに済みます。 同じ業種の会社と並んだときに、見分ける手がかりにならない色もあります。色で見分けてもらえるかどうかは、その色が単独でどう見えるかだけでなく、周りに何が並ぶかで変わります。 使う場所を先に並べておくと、候補を見る目が変わります。好きかどうかではなく、その場所で出せるか、その場所で見分けられるか、で見るようになります。好みで選んだ色が、使う場所で出せないと分かってから選び直すより、手戻りが減ります。 使う場所は、いま使っている場所だけでなく、これから使う予定の場所も含めます。この先、店舗を出す予定があるなら、看板の見え方も候補の段階で見ておきます。 使う場所は、依頼する側が一人で並べるものではありません。色を提案する側が、先に聞いておくものです。私たちも、色の相談を受けたときは、まず使う場所を聞いています。 1色では決まらない 会社を指す色が1色決まっても、それだけでは形になりません。 資料を作れば、見出しと本文と表の罫線で、色を使い分けることになります。サイトなら、ボタンやリンクや背景に色が要ります。会社を指す色だけで全部を塗ると、どこが大事なのかが分からなくなります。 そこで、会社を指す色(主色)のほかに、それを支える色(補助色)を決めます。補助色は、主色を引き立てたり、情報を分けたりするために置きます。主色より目立たないことが役割です。 補助色を選ぶときは、主色と並べて見ます。単独で見て良い色でも、主色の隣に置くと、主色より目立つことがあります。そうなると、会社を指す色がどちらなのか分からなくなります。補助色は、主色の隣で控えていられる色から選びます。 そして、使わない色も決めておきます。主色と並べたときに、別の意味に見えてしまう色があります。注意や警告の表示と紛らわしい色、別の会社を思わせる組み合わせになる色。使わない色が決まっていると、作る人が迷ったときの判断が速くなります。使わない色は、候補を並べていく途中で見つかります。主色と並べたときに、約束と逆の印象になる組み合わせがあれば、それが候補です。 組み合わせの決まりも要ります。主色の上に載せてよい文字の色、背景に敷いてよい色。主色の上に白い文字を置いて読めるかは、色を1色だけ見ていても分かりません。組み合わせて見て、はじめて分かります。 色ごとに、どれくらいの面積で使うかも、考えておきたい点です。広い面に使う色、それより狭い面の色、少しだけ差す色。この配り方の目安として、60・30・10という割合が紹介されることがあります。広い面に当てるのは、背景になる白や薄い色だ、という説明もあります。 割合は、使う場所によっても変わります。サイトでは背景の白が広く取られ、主色はボタンや見出しに絞られます。看板では、主色が面を大きく占めることもあります。一つの割合を全部に当てはめなくて構いません。使う場所の一覧を見ながら、主色が広く出る場所と、絞って置く場所を分けて考えておくと、作る人が迷ったときの手がかりになります。主色は、広く塗るほど目に残るとは限りません。白の中に絞って置いたほうが、はっきり見えることもあります。 ただし、決めすぎると動けなくなります。撮影の小道具やイベントの飾りの色まで指定すると、指定した人が考えていなかった場面で、現場が止まります。決めるのは、組み合わせてよいか、いけないかまで。その線が先に引いてあれば、作る人は迷わずに済みます。細部の使い方は、そのときに作る人に任せます。何を決めて何を決めないかは、ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかで書いています。 値を、媒体ごとに書き分ける 色を決めたら、その色を数値で書き残します。数値にしておくと、作る人が変わっても同じ色を指せます。 画面で使う色は、HEX(#から始まる英数字の値)や RGB(赤・緑・青の光の強さ)で指定します。サイトや資料を作る人は、この値を見て色を入れます。 印刷で使う色は、CMYK で指定します。シアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色のインクを、どの割合で重ねるかの値です。もう1つ、特色という指定のしかたがあります。4色の掛け合わせではなく、色見本帳の番号で指定したインクを、その色のために刷ります。 ここで、画面の値を印刷用に変換すれば同じ色になる、と考えると困ることになります。先に書いたとおり、光とインクでは出せる色の範囲が違います。変換すれば近い色にはなりますが、範囲の外にある色は、同じ色にはなりません。 そのため、画面と印刷の両方で使う色を決めるときの選び方は、3つに分かれます。 1つめは、画面と印刷の両方で出せる色を選ぶことです。候補の段階でこの条件を入れておけば、あとから差に悩むことが減ります。 2つめは、印刷では特色で刷ることです。4色の掛け合わせでは出せない色でも、特色なら近づけられることがあります。ただし、その色のためのインクを別に用意するので、費用がかかります。頼む印刷の種類によっては、特色を扱えないこともあります。 3つめは、画面と印刷で、どこまでの差なら同じ色とみなすかを、先に決めておくことです。完全に同じにはならないと分かったうえで、許せる差の範囲を決める。これを決めておかないと、刷るたびに「違う」「同じ」の話が繰り返されます。 布や樹脂や塗装のように、印刷以外の素材は、その素材の見本で確かめます。画面の値からも、印刷の値からも、素材での見え方は決められません。 こうして決めた値は、1か所にまとめておきます。画面用、印刷用、素材ごとの見本。どれを使えばいいかが1か所で分かれば、作る人は迷いません。まとめる場所は、ガイドラインの中が向いています。 図をタップすると、拡大して見られます 印刷で使うと分かった時点で、印刷用の値を用意して渡すのは、色を提案する側の仕事です。 誰が、どこで確かめるか 値が決まっても、それで色が揃うとは限りません。刷ったもの、作ったものが、決めた色になっているかを、誰かが確かめる必要があります。 確かめる人によって、どこまでを同じ色とみなすかの基準が違います。会社の担当者、デザイナー、印刷会社。それぞれに見ている基準があります。前の章で書いた「許せる差」を決めておくのは、この基準を揃えるためです。 印刷物なら、刷る前に試し刷りで確かめます。色校正と呼ばれる工程です。本番に近い条件で刷ったものを見て、決めた色になっているかを見ます。色校正には、本番と同じ印刷機で刷るものと、別の出力機で簡易に出すものがあり、どちらを選ぶかで確かめられる近さが変わります。私たちも、刷る前には色校正で色を確かめています。画面で見ていた色と比べるのではなく、決めた値と見本に対して合っているかを見ます。 図をタップすると、拡大して見られます 刷り直すときは、前に刷ったものと並べることも役に立ちます。1回ずつは許せる差の中でも、刷るたびに同じ向きへずれていくと、何度か刷るうちに別の色に近づいていきます。 看板や制服のように、刷り直しがきかないものは、実物の見本で確かめます。小さな見本でも、素材と色が本番と同じなら、判断の材料になります。 社内に、「これはうちの色と違う」と言える人がいることも要ります。作る人が毎回違っても、確かめる人が同じなら、ずれは早く見つかります。確かめる人がいないと、少しずつ違う色が、それぞれの場所で正しいものとして使われていきます。そうなってから揃え直すのは、最初に揃えるより手間がかかります。画面と印刷で差が出やすい色なら、色を提案する側が、刷る前・発注する前にそう伝えます。伝えてあれば、確かめる人が何を見ればいいか分かります。 決めたとは、次の人が同じ色を出せること コーポレートカラーを決めるというのは、色見本から1色を選ぶことではありません。次に作る人が、どこで使っても同じ色を出せる状態にすることです。 約束から候補を絞り、使う場所で絞り、主色と補助色と使わない色を決める。画面と印刷の値を書き分け、どこまでの差を許すかを決め、誰が確かめるかを決める。 ここまで決まっていれば、作る人が変わっても、媒体が変わっても、同じ色が出てきます。1色を選んだ時点は、その出発点です。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ロゴを変更するとき。リニューアルで失うのは、見た目ではなく手がかり パッケージを変えたら売れなくなる。その手前で、何が起きているのか ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法 記事一覧を見る

ロゴを変更するとき。リニューアルで失うのは、見た目ではなく手がかり

ロゴを変更するとき。リニューアルで失うのは、見た目ではなく手がかり

「ロゴが古く見えてきた」「そろそろ変えたい」。ロゴの変更は、そういう感覚から考え始めることがあります。その感覚は、何かを捉えています。ただ、何が古く見えているのかまでは、まだ言葉になっていないことがあります。 ロゴを変えた会社の事例を集めた記事は、変えたあとの姿を見るのに役立ちます。この記事では、その手前の話をします。変えるかどうかを決める前に、いまのロゴが何を担っているかを確かめる話です。 変えて失うのは、見た目ではない ロゴは、見た目の良し悪しより先に、見分けるための手がかりとして働いています。 看板、名刺、サイト、封筒。何度も目にするうちに、形や色の一部が「あの会社だ」という合図になっていきます。見る人は、ロゴを毎回すみずみまで見ているわけではありません。遠くから見えた色、目の端に入った輪郭。目に残った一部で見分けています。 ロゴを変えると、見た目は新しくなります。失うのは、その手がかりのほうです。見る人は、覚えていた合図を探して、見つからない。新しいロゴを覚え直すまでのあいだ、「あの会社だ」と分かるまでに時間がかかるようになります。 図をタップすると、拡大して見られます この損は、社内からは見えにくいものです。社内の人は、新しいロゴも古いロゴも知っています。どちらを見ても自分の会社だと分かるので、見分けにくくなったことに気づきません。気づくのは、外で探す側の人です。 パッケージで同じことが起きた話は、パッケージを変えたら売れなくなる。その手前で、何が起きているのかに書きました。棚で見つけてもらえる速さが落ちる、という話です。ロゴの場合は、看板の前を通ったときや、届いた封筒を手に取ったときに、あの会社だと分かる速さが落ちます。 手がかりは、ロゴを作った時点で決まるものではありません。使われ続けるうちに、見る人の側にできていきます。だから、作った人も、社内の人も、何が手がかりになっているかを正確には知りません。変える前にそれを確かめる必要があるのは、そのためです。 「古い」の原因が、ロゴにあるとは限らない ロゴが古く見えるとき、原因がロゴの外にあることがあります。 名刺の書体、サイトの配色、資料の組み方。ロゴの周りにあるものが古いままだと、ロゴだけを新しくしても、全体の印象は変わりません。逆に、ロゴはそのままで、周りを揃えるだけで印象が変わることもあります。 原因がロゴにあるのか、周りにあるのかの見分け方は、コーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないものに書いています。 原因が周りにあるなら、変えるべきはロゴではありません。ロゴを変えても手がかりを失うだけで、古さは残ります。 図をタップすると、拡大して見られます 変える理由になるとき、ならないとき ロゴを変えるかどうかの判断を、私たちは次のように分けて考えています。業界で決まった基準ではなく、私たちの見方です。 変える理由になるのは、ロゴが表すものと、いまの会社がずれたときです。社名が変わった。事業を広げて、ロゴに入っている言葉や形が、一部の事業しか表さなくなった。こうしたときは、ロゴが会社の説明として合わなくなっています。 使えない場所があるときも、変える理由になります。小さくすると潰れる。画面では細い線が消える。1色で刷ると形が崩れる。SNSのアイコンのように、丸く切り抜かれる場所に収まらない。ロゴを作った頃にはなかった使い道が、いまは増えています。ただし、こうした問題は、形を整えるだけで解けることがあります。全部を作り直す必要があるとは限りません。 他の会社の登録商標と紛らわしいと分かったときも、変える理由になります。これは後の章で書きます。 一方で、変える理由にならないときもあります。 社内の人が、見慣れて飽きただけのとき。社内の人は、ロゴを毎日見ます。取引先やお客さんが見るのは、会うときや、何かを受け取るときです。見ている回数が違います。毎日見ている人が飽きたと感じる頃、年に数回見る人は、まだ覚えている途中かもしれません。 担当者が変わり、前の担当者の選択を変えたいとき。新しい担当者にとって納得しにくいロゴでも、外の人の側では、すでに見分ける合図として働いていることがあります。 新しくしたいけれど、何が新しくなるのかが言葉にならないとき。この状態で案を作ると、案が出ても選ぶ基準がありません。新しいかどうかだけで選ぶことになります。 並べてみると、変える理由になるものは、どれも外の人や外の場所との関係で起きています。実態とのずれも、使えない場所も、商標もそうです。ならないものは、外の人からは見えません。外の人にとっては、理由の見えない変更になります。 社内の飽きと、外から求められる変化を分けて考える話は、ロゴに限りません。ブランド全体の見え方については、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法に書いています。ここからは、ロゴに絞って続けます。 変える前に、手がかりを見つける 変えるかどうかを決める前に、いまのロゴの何で見分けられているかを見つけます。 手がかりになりうるのは、形、色、文字、配置です。シンボルの輪郭が手がかりになっていることもあれば、色だけで覚えられていることもあります。社名の書体や並び方が手がかりのこともあります。名刺や看板のどこに、どう置かれているかで覚えられていることもあります。 見つけ方は、社内の人が思う「らしさ」と、取引先やお客さんが見分けている手がかりを、並べて比べることです。 社内の人は、ロゴを作った経緯を知っています。だから、意味を込めた部分を手がかりだと思いやすい。外の人は、その意味を知らないまま、目に残った部分で見分けています。社内が大事にしている部分と、外で手がかりになっている部分が、違うことがあります。 外の人が何で見分けているかは、聞けば分かります。「うちのロゴで覚えているところはどこですか」と聞くと、社内では気づいていなかった部分が挙がることがあります。 図をタップすると、拡大して見られます 聞く前に、社内で当たりをつけておくこともできます。遠くから見たとき、小さく見たとき、色がないとき、何が残るか。見る条件を変えても残る部分は、手がかりの候補です。ただ、どれが本当に手がかりになっているかは、社内で見ているだけでは分かりません。外の人に聞いて確かめます。 比べた結果、社内の「らしさ」と外の手がかりが違っていたら、外の手がかりを残す候補にします。社内で込めた意味は、ロゴの形でなくても、言葉で残せます。外の人の側にできた手がかりは、一度消えると、言葉では戻せません。 ここは、決める作業ではありません。すでに外の人の側にできている手がかりを、見つける作業です。会社全体を変えるリブランディングでも、同じことが言えます。その話はリブランディングが失敗するとき、デザインは悪くないに書いています。 見つかった手がかりは、変えるとしても残す候補になります。 新しい案を作る前に、いまのロゴが何で見分けられているかを確かめるのは、作る側の仕事です。私たちも、取引先やお客さんに、どこで見分けているかを聞くことがあります。 どこまで変えるか ロゴを変えるかどうかは、変えるか変えないかの二択ではありません。変える幅には段階があります。 幅が小さいのは、整えることです。手がかりはそのまま残し、線の太さ、比率、小さく使うときの形を直します。見る人は、変わったことに気づかないかもしれません。気づかれないまま、使えなかった場所で使えるようになります。 その次が、描き直すことです。見つけた手がかりのうち、どれを持ち越すかを決めて、そのほかを新しくします。色を残して形を変える。形の輪郭を残して、細部を今の使い方に合わせる。持ち越した手がかりがあれば、見る人は新しいロゴの中に、覚えていた合図を見つけられます。 幅が大きいのは、新しく作ることです。手がかりを持ち越しません。社名が変わったときのように、前のロゴとのつながりを切ることに意味がある場合です。そのかわり、積み上げてきた手がかりは、一から作り直すことになります。 どの幅を選ぶかは、変える理由から決まります。使えない場所があるだけなら、整えることで足りるかもしれません。事業が広がって実態とずれたなら、手がかりを持ち越しながら描き直す道があります。旧ロゴとの結びつきを断つ理由があるときに、はじめて新しく作ることになります。理由より大きな幅で変えると、変えなくてよかった手がかりまで失います。 図をタップすると、拡大して見られます そして、ロゴを変えずに、周りの見え方だけを揃える選択肢もあります。書体や色の使い方を揃えると、ロゴが同じでも印象は変わります。この話も、先に挙げたコーポレートアイデンティティの記事に書いています。 どの幅がありうるかは、作る側が先に並べて見せます。並んでいれば、選ぶ側は二択で考えずに済みます。 商標は、決める前に確かめる ロゴの商標は、制作が終わってから確かめるのでは遅い、という話をロゴ制作の依頼。何が納品されるかで、見積もりは変わるに書きました。権利をどう扱うかを契約の前に説明しておく側の話も、そちらに書いています。 ロゴを変えるときには、そこにもう2つ加わります。 1つは、新しい案が、他の会社の登録と紛らわしくないかです。案を選んだあとで分かると、選び直しになります。社内で案が決まり、発表の準備まで進んでいると、戻るのはそれだけ難しくなります。 もう1つは、旧ロゴの登録をどうするかです。新しいロゴに移ったあとも登録を残すのか、手放すのか。旧ロゴが取引先の手元や古い印刷物に残る期間を考えると、すぐには決められないこともあります。 手続きのしかたは、この記事では書きません。誰が確かめるかは、案件によって違います。専門家に確かめてもらうこともあります。書いておきたいのは、変えると決める前に確かめる項目がある、ということです。 誰が決めるか ロゴは、会社全体のものです。変えるかどうかを決めるのは、経営です。 社内の意見を集めること自体は役に立ちます。営業や店頭に立つ人は、お客さんがロゴをどう呼んでいるか、何で覚えているかを聞いていることがあります。ただ、変えるかどうかを多数決で決めると、ロゴを毎日見ている人の感覚で決まります。先に書いたとおり、毎日見ている人と、年に数回見る人とでは、同じロゴの見え方が違います。 決める人が、変える理由と、見つけた手がかりの両方を見て判断する。そのための材料が、ここまでの章で集めたものです。変えたい理由は会社の外にあるのか、内側にあるのか。手がかりはどこにあって、どこまで持ち越すのか。このうち手がかりは、作る側が確かめて、決める人の前に出しておくものです。 決めた理由が言葉で残っていれば、次に誰かが「変えたい」と言い出したとき、前に何を理由に決めたかが分かります。同じ話し合いを、はじめからやり直さずに済みます。変えないと決めたときも、同じように理由を残しておきます。 切り替えは、一度には終わらない 新しいロゴを決めても、翌日から全部が替わるわけではありません。 看板、名刺、封筒、サイト、SNS、資料のひな形、制服、車両。自社の中だけでも、ロゴはあちこちに載っています。取引先のサイトや資料に載っているロゴもあります。これは、こちらから頼まないと替わりません。 そこで、旧ロゴが載っている場所を先に並べます。私たちも、切り替えのときには、旧ロゴが残る場所の一覧を作ります。並べてみると、社内の誰も思い出さなかった場所が挙がることがあります。 並べたら、すぐに替えるものと、手元の在庫を使い終えてから替えるものを分けます。看板や車両のように、替えるのに手間がかかるものは、時期を決めて替えることになります。取引先には、新しいロゴのデータを渡して、差し替えを頼みます。 そのあいだ、新しいロゴと旧ロゴが並びます。並んでいても同じ会社だと分かるかどうかは、見つけた手がかりを残したかどうかで決まります。いつから新しいロゴに替わるのかを外に知らせておくと、見慣れないロゴを見た人が、別の会社と取り違えずに済みます。 切り替えに要るロゴの形(大きさ、色、データの種類)は、作る側が揃えて渡します。揃っていれば、替える作業が途中で止まりません。 変えるかどうかは、見つけてから決める ロゴを変えて失うのは、見た目ではなく、見る人の側にできていた手がかりです。 変えるかどうかは、いまのロゴの何が手がかりになっているかを見つけてから決めます。見つけてから変えれば、形を大きく変えても、「あの会社だ」という合図は残せます。見つけないまま変えると、新しいロゴは、一から覚えてもらうところから始まります。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 コーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていない リブランディングとは。意味・進め方・費用・判断のタイミング ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのか 記事一覧を見る

ブランドステートメントとは。企業理念・タグラインとの違いと、書き方

ブランドステートメントとは。企業理念・タグラインとの違いと、書き方

ブランドステートメントとは、会社が誰に何を約束し、なぜそうするのかを、数文から数段落にわたって書いた文章です。会社紹介のページや会社案内の冒頭に置かれます。 MVVもブランドコンセプトもタグラインも、言葉を分けて短くする方向で作ります。ステートメントは向きが逆で、分けた言葉をつなぎ、短くすると落ちる「なぜ」を書く文章です。 この記事では、企業理念やタグライン、ブランドメッセージとの違いから入ります。そのうえで、何を書くか、並べただけになっていないかの確かめ方、書く順番、置く場所を扱います。 ブランドステートメントとは何か ステートメントは、読むつもりで来た人に向けた文章です。 置かれるのは、会社紹介のページ、会社案内の最初の見開き、採用の資料の冒頭といった場所です。どれも、相手がその会社について知ろうとして開く場所です。一目で判断される場所ではないので、数段落の長さを置けます。 長さは会社ごとに違います。二、三文で終えるところもあれば、何段落にもわたるところもあります。一文か二文のものをステートメントと呼ぶ会社もあるので、この語が指す長さには幅があります。 中身は、誰に何を約束するのか、なぜそうするのか、何を選ばないのか、です。ここまでは、ほかの言葉にも書かれています。ステートメントにしかないのは、それらのあいだの理由です。 なぜ要るのかは、並べて見せたときに分かります。サイトにミッションとバリューとタグラインが並んでいても、三つがどうつながっているかは、外の人には読み取れません。社内の人はつながりを知っているので、書かれていないことに気づきにくいところです。 私たちは、ステートメントを「分けた言葉をつなぐ文章」として扱っています。業界で決まった定義ではありませんが、こう置くと、ほかの言葉との役割の違いがはっきりします。次の章から、その違いを一つずつ見ていきます。 企業理念・MVVとの違い 企業理念やMVVは、分けて使うための言葉です。 MVVは、ミッション・ビジョン・バリューを分けて持ちます。使う場面が違うからです。ミッションは事業を増やすかどうかを決めるとき、ビジョンは人と予算を配るとき、バリューはその場で何かを決めるときに取り出します。場面ごとに取り出せるように、分けてあります。 分けずに一文にまとめるとどうなるか。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは。3つの違いと、矛盾したときの決め方では、「私たちは◯◯を通じて社会に貢献し、△△な会社を目指し、□□を大切にします」という文を例に、明日の判断には使えないと書きました。理由は「終わらないものと、期限のあるものと、今日使うものが、同じ重さで並んでいるから」です。 ステートメントは、このまとめた形を、別の仕事のために書くものです。外の人に一度で読んでもらうために書きます。判断の道具としては使えない形でも、読ませる文章としては成り立ちます。使う場面が違う、ということです。 判断に使うときは、ステートメントの中から一文を取り出すことになります。その取り出して使う短い言葉として作られているのが、MVVやコンセプトです。分けて使うのが理念で、つないで読ませるのがステートメントです。 図をタップすると、拡大して見られます もう一つ、ステートメントは上の例文の先まで書きます。例文は三つを並べただけで、三つがなぜその組み合わせなのかは書いていません。そこを書くのがステートメントです。 企業理念という言葉は、会社によって指す範囲が違います。MVVの全部を指す会社もあれば、額に入った一文だけを指す会社もあります。どちらの場合も、ステートメントはその中身を材料にして書きます。 材料がないまま書き始めると、つなぐものがないので、つないでいるように見える文章だけができます。まだ理念がない会社は、ステートメントより先に、社内にすでにある言葉を集めるところから始めます。その手順は企業理念とは。経営理念との違いと、作り直すときの判断に書きました。 理念がない状態でステートメントだけを頼まれた場合も、同じことが起きます。そのまま書いて渡せば、読める文章は納まります。ただ、つなぐ元が社内のどこにも決まっていない状態が残ります。私たちは、材料が足りないときは、書く前にそのことをお伝えしています。書いたあとで分かるより、書く前に分かるほうが、戻る距離が短いからです。 タグラインやストーリーとの違い タグラインとストーリーは、ステートメントと同じページに並ぶことがある言葉です。 ブランドコンセプト タグライン ステートメント ブランドストーリー 長さ一言一文数文〜数段落文章 置く場所約束を決めた文書ロゴの近く会社紹介のページ会社紹介・採用 読まれ方判断のときに立ち返る読む前に目に入る通して読む通して読む 役割判断の拠りどころ社名を補う分けた言葉をつなぐいまの形になった理由を伝える この表は、私たちの使い分けです。コンセプトは、誰に何を約束するかを一言で決めたものです。作り方はブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に書きました。タグラインは、その約束を社名の隣で一文にしたものです。どちらも短くするほうへ向かう言葉で、ステートメントの材料になります。 表で分かれるのは、三行目の読まれ方です。タグラインは、名刺やサイトの上部で、読む前に目に入ります。ステートメントは、読むつもりで来た人が、最初から最後まで通して読みます。同じ約束から出発していても、置かれる場面が違うので、書き方が変わります。 ストーリーとの違いは、時間の向きです。ストーリーは、すでに起きたことから選んで話す文章です。ステートメントが書くのは、いまの立場です。創業の経緯が一文入ることはありますが、そこが中心になると、ストーリーを書いていることになります。ストーリーの材料の選び方は、ブランドストーリーとは。材料の探し方と、どれを選ぶかの基準に書きました。 ステートメントとストーリーは、似た場所に置かれるので混ざります。会社紹介のページに、来歴と約束が同じ段落で書かれていることがあります。どちらも要る文章なので、混ざっていること自体は問題ではありません。ただ、書く前にどちらを書いているのかを決めておくと、材料の選び方が変わります。 会社全体を一貫して示す仕組みのなかでの位置は、コーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないものに書きました。 呼び方も一つではありません。コーポレートステートメントやブランドメッセージ、ブランドプロミスといった言い方があり、何を指すかは会社によって違います。呼び方より、何をしている文章かで見分けます。分けた言葉をつないでいるなら、呼び方が何であれ、この記事で扱っているものです。相手に対して何を守るかに絞ってブランドプロミスを使う場合のことは、ブランドプロミスとは。コンセプトとの違いと、どこまで具体に約束するかに書きました。 ブランドメッセージとの違い ブランドメッセージという言葉は、指すものが一つに決まっていません。 使われ方には、次のようなものがあります。 社名の隣に置く短い一文を指す使い方。この記事でいうタグラインにあたります ステートメントのような、数文から数段落の文章を指す使い方 タグラインやステートメントなど、会社が外に出す言葉をまとめて呼ぶ使い方 どれかが正しいというものではありません。ただ、同じ「ブランドメッセージ」という言葉から、短い一文を思い浮かべる人と、まとまった文章を思い浮かべる人がいます。社内でこの言葉が出たら、短い一文の話なのか、文章の話なのかで、作るものが変わります。 見分け方は二段です。まず、長さと読まれ方で分けます。読む前に目に入る短い一文なら、タグラインとして扱います。読むつもりで来た人が通して読む文章なら、次に、分けた言葉をつないでいるかを見ます。つないでいれば、この記事でいうステートメントで、この記事の続きがそのまま当てはまります。言葉を並べただけの文章なら、あとの章の「並べただけになっていないか」の確かめ方から始めます。 まとめて呼ぶ使い方なら、中に何が入っているかを並べてみます。タグラインとステートメントが両方入っているなら、それぞれ別に作ります。短い一文と、まとまった文章では、求める長さも、置く場所も違うからです。 何を書き、何を書かないか ステートメントに入れるものは、材料の側から決まります。 材料は、誰に何を約束するか、なぜそうするのか、何を選ばないのか。そして、それらのあいだの理由です。 タグラインは、全部を入れた長い版を一度書き、そこから削っていきます。なくても意味が伝わる言葉から外し、次に他社でも言えることを外していくと、その会社でしか言えない部分が残ります。この順番はタグラインとは。キャッチコピーとの違いと、短くならないときの原因に書きました。 この二段で外したものは、ステートメントにも入れません。他社でも言えることは、段落が増えても、他社でも言えることのままです。一文なら、長さそのものが削る理由になります。ステートメントには、その歯止めがありません。 図をタップすると、拡大して見られます ステートメントで書けるようになるのは、タグラインが置き場所の条件で書かなかったものです。社名の隣に置かれるタグラインは、社名が言えていない部分だけを補います。社名が言っていることは、同じことを二度言わないために書きません。読む前に目に入る一文なので、前提を必要とする言葉も使えません。ステートメントは通して読まれる文章なので、社名が言っていることも、前提が要る言葉も書けます。前提は、文章の中で先に書いておけるからです。 図をタップすると、拡大して見られます 入れる要素も同じです。タグラインは、誰に向けているか、何を提供するか、どう違うか、相手にどうなってほしいか、の四つとも入れると一文で覚えてもらえなくなるので、選びます。ステートメントは、四つをそろえて書けます。ただ、どう違うかは比べる相手が変われば変わるので、タグラインと同じく、自社の側だけで言い切れる形にします。 外したあとに残った部分が長い場合は、話が別です。タグラインの記事では、残った部分が長いなら、約束のほうにまだ絞る余地があると書きました。ステートメントでも同じで、約束が絞れていないまま移すと、長い文章になるだけです。その場合は、書く前に約束を絞り直します。 反対に、ステートメントに入れないものもあります。 実績の数字。時間が経つと古くなります。数字が入ると、何を約束しているかより、どれだけやってきたかの話に寄ることがあります 事業の説明。何をしている会社かを順に説明し始めると、会社案内の本文になります 期限のある目標。期限が来たら書き直すことになります。期限のある到達点は、ビジョンの仕事です この三つは、私たちの線引きです。入れて成り立っている文章もあります。入れるなら、何年そのまま置いておけるかを確かめてからにします。 並べただけになっていないか ステートメントの下書きは、材料を順番に並べた形になることがあります。 MVVを上から順に文章にする形です。一文ずつは正しく、読みにくくもありません。ただ、それぞれの文が、隣の文と関係なく立っています。これでは、MVVを別の形で繰り返したことになり、外の人が読んでも、三つの関係は分かりません。 並べただけかどうかは、確かめられます。 一つめは、文の順番を入れ替えて読むことです。入れ替えても意味が通るなら、並べただけです。つながっている文章は、理由が結論の後ろに回ったり、前提が消えたりして、入れ替えると読めなくなります。 二つめは、一文を抜いて読むことです。抜いても前後が困らない文は、つなぎの役をしていません。その文が単独で言いたいことを言っているだけ、ということになります。 数段落あるステートメントなら、段落の単位でも同じことをします。段落を入れ替えても読めるなら、段落ごとに別の話をしています。一つの段落の中はつながっていても、段落どうしがつながっていない、ということは起こります。長い文章ほど、この確かめ方が効きます。 同じ材料で、二つの形を並べてみます。〔 〕の中には、それぞれの会社の言葉が入ります。 並べた形は、たとえばこうなります。 私たちは〔誰〕に〔何〕を届けます。 〔価値〕を大切にしています。 〔将来像〕を目指しています。 つないだ形は、こうなります。 〔誰〕は〔困っていること〕を抱えています。 だから私たちは〔何〕を届けます。 〔何〕を届け続けるために、〔選ばないこと〕はしません。 それが、〔価値〕を大切にするということです。 並べた形は、三行をどう入れ替えても読めます。つないだ形は、一行目と二行目を入れ替えると、「だから」が何を受けているのか分からなくなります。三行目を抜くと、四行目の「それが」は二行目を指すことになり、〔価値〕が、届けることの言い換えになってしまいます。入れ替えると崩れるのは、行と行のあいだに理由があるからです。 ただ、この形に〔 〕を埋めれば書ける、というものではありません。〔困っていること〕と〔何〕のあいだに本当の理由がなければ、「だから」は飾りになります。接続詞は、つながっていることを示す言葉で、つながっていないものをつなげる言葉ではありません。 図をタップすると、拡大して見られます 並べた形で書いたものがすでにある場合も、無駄にはなりません。MVVの一覧としては正しく書けているので、そのまま材料になります。そこに、行と行のあいだの理由を書き足していきます。書き足せない行間が見つかったら、そこが次に決めるところです。 短い言葉から書き始める タグラインは、長い版を書いてから削る順で作ります。ステートメントは逆です。 すでに決まっている短い言葉から始めて、そのあいだを埋めていきます。長い版から削る順にすると、削る途中で材料の言葉が言い換えられ、MVVやコンセプトと少しずつ違う言葉がステートメントに入ります。短い言葉が社内で決まっているなら、それを変えずに使うほうが、ほかの言葉と食い違いません。 順番は、こうなります。 材料を並べる。コンセプト、ミッション、バリュー、タグライン 隣り合う二つのあいだに、「なぜ」を一行ずつ書き出す。なぜこの相手に、この約束なのか。なぜこの約束に、この価値がつくのか 書き出した行を、文章にする 前の章のとおり、順番を入れ替えて読む。一文を抜いて読む 社内の誰かに、声に出して読んでもらう 二で「なぜ」が書けないところは、材料のほうがまだ決まっていません。そこは文章の問題ではないので、書き方を工夫しても埋まりません。 気をつけたいのは、書き慣れた人ほど、ここを文章で埋められることです。つながっていない二つを、接続詞と言い回しで自然に並べることができます。読めば流れているように見えるので、決まっていないことが隠れます。 発注した側は、読める文章を受け取って安心します。ところが、社内で説明しようとしたときに、なぜそうなのかの言葉が出てきません。だから私たちは、つながらないところを言い回しで埋めずに、確認に戻します。戻したところで止めずに、足りない部分を一緒に作るところから始めます。 五の声に出す確認は、書いた人以外が読むことに意味があります。書いた人は、書いていない理由を頭の中で補って読めてしまいます。読み慣れていない人がつまずいた箇所は、理由が文章の外にある箇所です。 読むつもりで来た人の前に置く タグラインは、読む前に判断が始まる場所に置きます。ステートメントは、読むつもりで来た人の前に置きます。 会社紹介のページ、会社案内の最初の見開き、採用の説明の冒頭。どれも、相手が時間を使うつもりで開く場所です。長さが問題になりにくく、つながりを追って読んでもらえます。 媒体が変わるたびに、別の版を用意したくなる場面があります。ページの幅に合わせて縮めた版、紙のために足した版、応募者向けに言い回しを和らげた版。版が増えると、それぞれに別の担当者が手を入れるので、中身が少しずつずれていきます。もとになる文章を一つだけ持ち、短くしたい場所には、その中から段落を選んで置きます。どの媒体で読まれても、約束とつながりは同じになります。 社外に向けて置いた文章は、社内でも使われます。新しく加わった人が会社を知る手がかりになり、方針を話す場で引かれることもあります。ステートメントを読んで、自分の仕事が約束のどこにつながっているのかを説明できるなら、社内でも機能しています。社内で使われる状態の作り方は、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方に書きました。 分けたあとに、つなぐ 言葉を分けるのは、使う場面ごとに取り出すためでした。ミッションは事業を増やすとき、バリューはその場で決めるとき。分けてあるから、判断に使えます。 ただ、分けたままでは、外の人には一つの会社の話として見えません。ステートメントは、分ける仕事が終わったあとに、それらをつなぐ文章です。 だから、分ける前に書き始めると、つなぐものがありません。書けるのは、つないでいるように見える文章だけです。書く順番は、決めることの順番に従います。 分けて決めてきた言葉は、ステートメントの中ではじめて、一つの会社の話として読まれます。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランドパーソナリティとは。アーカーの5次元と、形容詞で終わらせない決め方 パーパス経営とは。「意味がない」と言われる理由と、中小企業での使いどころ 理念浸透とは。「浸透しない」の中身を分けて、打ち手を決める 記事一覧を見る

タグラインとは。キャッチコピーとの違いと、短くならないときの原因

タグラインとは。キャッチコピーとの違いと、短くならないときの原因

タグラインとは、その会社やブランドが何を約束しているかを、短い一文にしたものです。ロゴの近くに置かれ、社名だけでは伝わらない部分を補います。長さに決まりはありませんが、覚えていられる範囲に収めます。 タグラインが短くならないとき、詰まっているのは言葉ではなく、その手前の約束です。何を約束しているかが決まっていれば、短くする作業はそれほど難しくありません。決まっていないものは、何度書き直しても短くなりません。 キャッチコピーとの違いは、対象と寿命です。タグラインは会社やブランドの約束を表し、変えない前提で置きます。キャッチコピーは商品や企画のための一文で、期間ごとに入れ替えます。迷ったら、その一文を来年も使うつもりがあるかで見分けます。 この記事では、その違いを詳しく見たうえで、短くならないときに何が起きているのか、何を残して何を捨てるのかを書きます。 タグラインとは何か 社名は、何をしている会社かを伝えません。業種名が入っていても、そこから分かるのは業種までです。同じ業種の会社は他にもあるので、それだけでは選ぶ理由になりません。 タグラインは、その足りない部分を補います。何を約束しているのかを、社名の隣で一文にする。 ロゴと一緒に置かれるのは、見た人がその場で判断するからです。名刺を渡された相手は、説明を聞く前に目にします。サイトを開いた人は、内容を読む前に見ます。読む前に判断が始まる場所なので、そこに置きます。 補う部分は、会社によって違います。社名が抽象的なら、何をしているかを補います。業種名が社名に入っているなら、業種は要りません。誰に向けているのか、どう違うのかを補うことになります。同じ長さの一文でも、社名との組み合わせで中身が変わります。 タグラインを置かない会社もあります。社名だけで何をしているかが伝わるなら、補う必要がありません。要るかどうかは、社名が何を言えているかで決まります。 位置づけとしては、上流に約束を決める作業があって、タグラインはその出力です。先に決まっていないと、出力は作れません。この順番が、この記事の中心になります。 ブランディング全体のなかでどこに当たるかは、ブランディングとは。何をすることで、どこから手をつけるのかに書きました。 私たちは、タグラインを約束の出力として扱っています。業界で決まった線引きがあるわけではありませんが、こう置くと、書けないときにどこへ戻ればいいかが決まります。 タグラインとキャッチコピーの違い この二つは、混ざりやすい言葉です。どちらも短い一文で、目立つ場所に置かれます。 分かれるのは、対象と寿命です。 タグライン キャッチコピー 対象会社・ブランド商品・企画・広告 期間変えない前提期間で入れ替える 置き場所ロゴの近く広告・売り場 決める人経営担当・制作 違いが出るのは、表の二行目です。キャッチコピーは、入れ替える前提で作られます。季節が変われば変わりますし、商品が変われば変わります。入れ替えても困らない設計です。 タグラインは、入れ替えません。覚えてもらうまでに時間がかかるので、変えると積み上げた分が消えます。 混ざると何が起きるか。タグラインを毎年見直すことになります。そのたびに新しくなるので、誰も覚えません。逆に、キャッチコピーを長く使い続けると、いまの商品と合わなくなります。 決める人が違うのも、実務では効きます。キャッチコピーは担当や制作の側で決められますが、タグラインは会社が何を約束するかの話なので、決める人が上に来ます。 混ざる理由もあります。どちらも制作の場で作られるからです。同じ人が同じ会議で両方を出すこともあります。作る作業は似ていますが、決めたあとの扱いが違うので、どちらを作っているのかを先に決めておきます。 見分け方は単純です。その一文を、来年も使うつもりがあるか。あるならタグライン、無いならキャッチコピーです。 両方を持つ会社もあります。タグラインを変えずに置いたまま、企画ごとにキャッチコピーを入れ替える。この形なら混ざりません。役割が分かれているからです。 使い分けができていないと、依頼の段階でずれます。タグラインを頼んだつもりで、出てきたのが広告用の一文だった。逆に、企画の一文を頼んだのに、会社全体の話から始まった。どちらを作るのかを先に決めておくと、この行き違いは起きません。 コンセプト・スローガンとの違い コンセプトは、誰に何を約束するかを決めたものです。タグラインは、その約束を短い言葉にしたものです。コンセプトが決まっていないとタグラインが書けないのは、この順番があるからです。 キャッチコピーは、コンセプトから直接は出てきません。商品や企画ごとに、その時期の相手に向けて書きます。同じコンセプトのもとで、何本も作られます。 スローガンという語も使われます。指す範囲が会社によって違うので、社内で話すときは何を指しているかを先に確かめると早く進みます。 短くならないときに起きていること 案は出るのに、決まらない。長い案しか出てこない。この状態は起こります。 書く力の問題ではないことがあります。短い一文を書くこと自体は、書き慣れた人なら難しくありません。それでも決まらないなら、別のところで詰まっています。 短くするというのは、捨てるということです。全部は入らないので、どれかを外します。 外せないのは、どれが要らないかを判断できないからです。判断するには基準が要ります。何を約束するかが決まっていれば、それに関係のない要素から外せます。決まっていなければ、どれも同じ重さに見えます。 だから、案が長くなります。捨てられないものを全部入れると、長くなるしかありません。 私たちが相談を受けるなかで見かけるのは、全部入れようとする形です。事業の説明も、強みも、姿勢も、これからのことも。一文にまとめると、何も言っていない文になります。どこかで見たことのある言い回しになるのも、要素が多すぎて具体を落とすからです。 判断できないまま進める方法もあります。並べた案から、良いと思うものを選んでもらう形です。その場では決まりますが、なぜそれにしたのかが残りません。あとで別の人が見たときに、変えていいのかどうかが分からなくなります。 そして、選んだ一文が実際に使われるかどうかも、そこで決まります。理由のない一文は、社内で説明できません。説明できない言葉は、名刺に印刷されても口には出ません。 詰まっているのが上流かどうかは、確かめられます。何を約束しているかを、一度書き出してもらう。書き出せるなら、短くする作業に戻れます。書き出せないなら、そちらが先です。書き出したものが長い場合も、同じことが起きています。約束のほうが絞れていないので、そこから短い一文は出てきません。 短くできないことは、失敗ではありません。上流が決まっていない、という情報です。作れないという症状が、どこに戻ればいいかを教えています。 もう一つ、決まっているのに書けない場合もあります。約束は決まっていて、それを一文にする作業自体でつまずいている。この場合は上流に問題がないので、次の章の手順に進みます。 戻る先は、誰に何を約束するかです。作り方と、それが機能しているかの見分け方は、ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に書きました。 短くならないと言われたときに、案を出し続けるのか、上流に戻すのか。ここで案を足すと、選べない案が増えるだけになります。戻すほうが、結果として早く終わります。 何を短くするのか 約束の全部は、一文に入りません。入れる要素を選びます。 候補は限られています。誰に向けているか。何を提供するか。どう違うか。相手にどうなってほしいか。 四つとも入れると、説明文になります。一文のなかに情報が並ぶだけで、覚えられません。 選び方の基準は、社名です。社名が言えていない部分を、タグラインが補います。社名に業種が入っているなら、業種を書く必要はありません。同じことを二度言うことになります。抽象的な社名なら、何をしている会社かを補うところから始まります。 同じ約束から、複数のタグラインが作れます。どれを選ぶかは、社名との組み合わせで決まります。他社のタグラインをそのまま参考にしても自社では成立しないのは、社名が違うからです。 もう一つの基準は、その場で判断される場面です。名刺を渡すとき、サイトを開いたとき。相手がまだ何も知らない状態で読む一文なので、前提を必要とする言葉は使えません。社内で通じる言い回しは、そこで落とします。 入れる要素で迷いやすいのが、どう違うか、です。他社と比べた違いを入れたくなりますが、比べる相手が変われば違いも変わります。相手に依存する内容は、長く使う一文には向きません。自社の側だけで言い切れることを選ぶと、比べる相手が変わっても残ります。 外す判断は、書いたあとにします。先に絞ってから書くと、書ける範囲が狭くなります。全部入れた長い版を一度書いて、そこから外していく順のほうが、残すものが決まります。 外す順番も決められます。まず、なくても意味が通る言葉から外します。次に、他社でも言えることを外します。最後に残るのが、その会社でしか言えない部分です。 残った部分が短ければ、それがタグラインになります。残った部分が長いなら、約束のほうにまだ絞る余地があります。ここでも、上流に戻る判断が出てきます。 書いた本人が説明できるかも、確かめます。なぜこの言葉にしたのかを、社内の人に説明する。説明の途中で言い直したくなるなら、まだ決まっていません。 長さと形をどう決めるか 長さに決まりはありません。基準は、覚えていられるかどうかです。 確かめ方は、声に出すことです。息継ぎなしで言えるなら、覚えられる範囲に入っています。読点が二つ以上入るなら、長い。 形にも選択があります。動詞で終えるか、名詞で止めるか。 動詞を入れると、動きが出ます。何をする会社かが伝わりやすくなります。ただ、動詞には期間の含みが出ます。これからそうする、という読み方をされることがあります。 名詞で止めると、状態になります。動きは弱くなりますが、時間の含みが消えます。長く使う前提なら、こちらが向いていることがあります。 英語にするか日本語にするかも、決めます。読む人が意味を取れるかで決めます。見た目で英語を選ぶと、意味が伝わらないまま置かれます。取引先が海外にいるなら、事情が変わります。 読みやすさも見ます。声に出したときに詰まる箇所があるなら、そこで読む人も止まります。音の並びは、意味とは別に効きます。 誰が読み上げるかも考えます。社員が電話で名乗るときに続けて言えるか。採用の説明会で口に出せるか。書いたときには収まっていても、話し言葉にすると長い、ということがあります。 そして、書いた形のまま使われるとは限りません。名刺では小さく組まれ、サイトでは大きく出ます。文字の大きさが変わっても読めるかを、決める前に確かめておきます。 決まらないときに案の数を増やすのは、前の章に戻る合図です。形の問題ではないことがあります。 案を数だけ出して選んでもらう形にすると、決める材料を渡していないことになります。それぞれが何を捨てた案なのかを添えないと、受け取った側は好みで選ぶしかありません。 決めたあとに変えるか タグラインは、変えない前提で作ります。覚えてもらうまでに時間がかかるからです。 それでも、変える場面はあります。事業が変わった、扱うものが変わった、約束そのものが変わった。中身が実態と合わなくなったなら、変えます。 判断が分かれるのは、言い回しが古いだけの場合です。表現が古いことと、考えが古いことは別です。当時の言い方で書かれているだけで、指している中身がいまも動いているなら、変える理由がありません。 変えると、それまで積み上げたものが消えます。覚えていた人にとっては、別の会社に見えます。付いている印象を変えるとどうなるかは、ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法に書きました。 見直す時期は、期間ではなく出来事で決めます。何年経ったから見直す、という決め方だと、その日が来ても動きません。事業が増えたとき、扱うものが変わったとき、社名を変えたとき。そういう場面で見直すほうが、判断する材料がそろっています。 会社全体を作り直す判断になる場合は、タグラインだけの話ではなくなります。進め方はリブランディングとは。意味・進め方・費用・判断のタイミングにまとめました。 変えると決めた場合も、切り替え方があります。ある日を境に全部を入れ替えるか、新しく作るものから順に変えるか。印刷物が残っているうちは、しばらく両方が並びます。並ぶ期間をどう扱うかを、変える前に決めておきます。 変えないという判断も、決めた結果です。見直して、変えないと決める。この記録が残っていると、次に同じ議論が起きたときに早く済みます。 どこに出すか 置く場所は、決めてから作るほうが早く済みます。ロゴの近く、名刺、サイトのヘッダー、会社案内の表紙、採用ページ。 出す場所を決めていないと、作った時点で作業が終わります。一文はできたが、どこにも出ていない、という状態です。 ロゴと組み合わせるなら、位置と余白を決めておく必要があります。組み合わせ方が決まっていないと、作る人ごとに置き方が変わります。この決めごとをどこに書くかは、ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかに書きました。 社内にも置きます。社員が説明できない一文は、外でも説明されません。名刺に印刷されていても、渡すときに触れられなければ、相手は読み飛ばします。 出す場所によって、扱いも変わります。ロゴの近くでは、短さが効きます。会社案内の表紙では、その下に補足を置けます。同じ一文でも、周りに何があるかで伝わり方が変わります。 使わない場所も決めておきます。あらゆる資料の隅に入れると、見慣れて意味が消えます。目に入る回数と、覚えられるかどうかは、別のことです。 置く場所ごとに、誰が管理するかも決めます。サイトは制作の担当、名刺は総務、会社案内は広報。担当が分かれていると、変えたときに片方だけが残ります。どこに出しているかの一覧を持っておくと、直す作業が短くなります。 そして、印刷物との相性も見ます。刷ってしまえば直せないので、出す前に社内で一度使ってみる。会議で口に出してみて、言いにくければ、そこで気づけます。 書けないことは、悪い知らせではない タグラインが短くならないとき、詰まっているのは言葉ではありません。何を約束するかが、まだ決まっていないということです。 短くするというのは、捨てるということでした。捨てるには基準が要り、基準は約束から出ます。順番としては、それだけです。 だから、書けないという症状は、どこに戻ればいいかを教えています。案を足す前に、上流を確かめる。そちらのほうが、結果として早く終わります。 一文が出てきたら、社内の何人かに言ってもらいます。言えるなら、決まっています。言い直しが入るなら、まだ途中です。 測った結果が「まだ決まっていない」でも、それは進んだということです。どこに戻ればいいかが分かった状態だからです。 逆に言えば、短い一文が書けたときには、上流が決まっているということになります。タグラインは成果物ですが、同時に、決まっているかどうかを測るものでもあります。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方 トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳する ブランドストーリーとは。材料の探し方と、どれを選ぶかの基準 記事一覧を見る

トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳する

トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳する

トーンアンドマナーは、その場で決めるものではありません。すでに決まっていること、つまり誰に何を約束するかから、見え方と言い方に翻訳したものです。 決め方を探して来られた方が多いと思います。手順は要ります。色を選び、書体を選び、文章の調子を決める。その作業は誰かがやります。ただ、手順を動かすには入力が要ります。何から訳すのかが決まっていないと、選択肢を絞れません。 そして、訳したものが合っているかを判断できるのは、元を持っている側です。作る側だけで見ると、良いか悪いかの話になります。 この記事で書くのは、言葉の意味と、訳す元が何なのか、そして訳したものを誰がどう見るかです。決め方の手順そのものは、探せば出てきます。 トーンアンドマナーとは何か トーンアンドマナーとは、見え方と言い方をそろえるための決めごとです。どこで見ても同じ会社のものだと分かる状態を作るために置きます。 英語の Tone and manner をそのまま持ってきた言葉です。tone は調子、manner は作法にあたります。もともとは広告の表現をそろえる文脈で使われていました。媒体が違っても、同じ発信元だと分かるようにする。そこが出発点です。 ブランドの中では、外に出す形の部分にあたります。何を約束するかを決めたあと、それを目に見える形と、読める言葉にする。その形と言葉の決めごとが、トーンアンドマナーです。 使うのは、作る人です。社内で資料を作る人、サイトを更新する人、外の制作会社。人数が増えるほど、決めごとがないと形が分かれていきます。逆に言えば、作る人が一人しかいない会社では、決めごとがなくても揃います。その一人がいなくなったときに、初めて必要になります。 必要になる時期も、そこで決まります。人が増えたとき、外に頼み始めたとき、媒体が増えたとき。どれも「同じ人が全部作る」状態が終わる場面です。 会社の取り組み全体のどこに当たるかは、企業ブランディングとは。何本の仕事に分かれ、どこから手をつけるかに書いています。この記事で扱うのは、決めたことを形にする段階です。 言い換えと、呼び方の違い 同じものを指す言葉が、いくつもあります。呼び方によって、指している範囲が少し変わります。 トンマナは、トーンアンドマナーを縮めた言い方です。社内の会話ではこちらが使われます。トーンマナーも同じもので、アンドが落ちた形です。トーン&マナーと書かれることもあります。どれも指しているものは同じです。 範囲が変わるのは、トーン・オブ・ボイスという言い方です。こちらは言い方だけを指します。文章の調子、呼びかけ方、使わない言い回し。見え方は含みません。海外の資料ではこの言葉で分かれていることがあり、翻訳された記事では範囲が違ったまま並んでいます。 もう一つ、ビジュアルアイデンティティという言葉があります。こちらは逆に、見え方だけを指します。ロゴ、色、書体、写真の選び方。言い方は含みません。 社内で呼び方が割れていると、話が噛み合いません。片方が言い方まで含めて話し、もう片方が見え方だけを想定している。どちらも「トンマナ」と言っているので、食い違いに気づくのが遅れます。最初に、この記事でどこまでを指すのかを決めておくと早く済みます。 確かめ方は、最初の打ち合わせで聞くだけです。文章の書き方まで含める話なのか、見た目だけの話なのか。ここが揃っていないまま進むと、納品の段になって「文章の指針が入っていない」という食い違いが出ます。範囲の確認は、費用の話より先に済ませておくほうが早く終わります。 以降は、見え方と言い方の両方を含む意味で使います。 決めるのではなく、翻訳する 「トンマナを決める」という言い方をしますが、実際にやっているのは変換です。何もないところから選ぶのではなく、すでにあるものを別の形に置き換えています。 色を選ぶ場面で考えると分かります。世の中には色が無数にあります。その中から選べと言われても、絞る理由がなければ決まりません。実際に絞っているのは、その会社が何を約束しているかです。落ち着いた印象を約束しているなら、彩度の高い色は外れます。外れる理由があるから、候補が減ります。 書体も同じです。読みやすさを重視するのか、独自性を出すのか。どちらを取るかは、その会社が何で選ばれたいかによります。文章の調子もそうです。丁寧に説明するのか、短く言い切るのか。相手が誰で、どういう場面で読むかによって決まります。 元がないまま選ぶと、選ぶ理由が好みしか残りません。好みで選んでも形にはなります。ただ、次に別のものを作るときに、同じ基準を再現できません。作る人が変われば、また違う好みが入ります。 上位に並ぶ記事を読むと、決め方の手順が書かれています。参考にする事例を集める、色を決める、書体を決める、ルールにまとめる。手順としては、そのとおりに進みます。書かれていないのは、その手順に何を入力するかです。入力が空のまま手順だけを動かすと、出てくるのは作った人の好みになります。 事例を集める工程が、入力の代わりになると思われがちです。似た業種の会社を並べて、その中から選ぶ。作業としては進みますが、選んでいるのは他社が出した答えです。その会社が何を約束しているかは、集めた画像には写っていません。参考にすること自体は役に立ちますが、参考にする前に、自社の側で絞る理由が要ります。 絞る理由があると、事例の見方も変わります。似ているものを探すのではなく、同じ約束をしている会社がどう訳したかを見ることになります。業種が違っても参考になり、同業でも参考にならない、という分かれ方をします。 案を出す前に、何から訳すのかを確かめる。ここは引き受けた側の作業です。色の候補を並べる前に、約束が言葉になっているかを聞く。決まっていなければ、そこから始めることになります。 翻訳の元になるもの 翻訳の元になるのは、誰に何を約束するかです。ここが言葉になっていれば、見え方と言い方は導けます。 速さを約束している会社なら、迷わせない形が合います。情報を絞り、次にどうすればよいかが一目で分かる置き方になります。文章も短くなります。説明を尽くすより、たどり着かせるほうを優先するためです。 手厚さを約束しているなら、逆になります。情報は増え、文章も長くなります。読む手間はかかりますが、その手間自体が約束の表れになります。同じ「読みにくい」でも、片方は失敗で、片方は意図です。 ただし、約束と形は一対一で決まりません。同じ「丁寧さ」でも、扱うものが工業製品か食品かで、合う形は変わります。相手が法人か個人かでも変わります。対応表を作って当てはめる作業ではありません。元があることで候補が絞れる、というところまでです。 だから、元が言葉になっていないと翻訳は始まりません。「なんとなく上品な感じ」では、絞る材料になりません。上品さが何のために要るのか、誰に対して要るのかが決まって、はじめて形の候補が出てきます。 元が言葉になっているかは、確かめられます。社内の別々の人に、うちは誰に何を約束している会社かを聞く。答えが揃うなら、訳す元があります。人によって違う言葉が返るなら、まだ訳せる状態ではありません。この確認は、色の候補を見る前に済ませておくほうが手戻りが減ります。 約束をどう決めるかは、ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に書いています。決まっていない状態でトンマナの話に入ると、決めることと訳すことが混ざります。混ざったまま進むと、形を見ながら約束を決めることになります。順番が逆になった状態です。 この順番でも、形は出来上がります。案を見ているうちに「うちはこういう感じだ」という合意ができて、それが約束の代わりになる。ただ、その合意は形に紐づいているので、次に別の媒体を作るときに持ち出せません。形が変われば、また合意し直すことになります。 合っているかを誰が見るか 訳したものが合っているかは、元を持っている側が判断します。ここが、この記事で実務に効くところです。 案が並んだとき、作る側だけで見ると、良いか悪いかの話になります。作る側は形の善し悪しを見る訓練をしているので、そちらの話が得意です。ただ、その判断には元が入っていません。きれいだが約束と合っていない案は、きれいなので通ります。 判断の材料は、約束と合っているかです。速さを約束しているのに、案が丁寧さを表していないか。手厚さを約束しているのに、情報が削られていないか。この問いに答えられるのは、約束を決めた人です。 だから、決めた人が見る場にいる必要があります。案を持ち帰って伝言で伝えると、伝わるのは形の説明だけになります。なぜその形なのかは、伝言では残りません。残らないまま決裁されると、次に直すときの根拠も失われます。 決める人がいない場で進むと、その場で立場が上の人の意見で決まります。決まること自体は問題ありません。ただ、その決め方だと、次に別のものを作るときも同じ手順を踏むことになります。基準が残らないので、毎回やり直しになります。 見る回数も決めておきます。案が出そろってから一度だけ見る形にすると、直しの幅が大きくなります。方向が決まった段階で一度、形になった段階でもう一度。二回に分けると、大きくずれたまま進む時間が短くなります。 案を出す側にも、やることがあります。案と一緒に、何に合わせて訳したかを出す。この色はこの約束から、この書体はこの相手から。そう書いてあれば、受け取った側は好き嫌いではなく、合っているかどうかで見られます。形だけを並べて「どれがお好みですか」と聞くのは、判断の材料を渡していない状態です。 書いておくと、決めたあとにも効きます。時間が経って別の媒体を作るとき、なぜその色なのかが残っています。残っていなければ、そのときいた人の記憶で決まります。 揃わないのは決まっていないから 複数の人が作ると、見え方と言い方はばらつきます。ばらつき自体は自然に起きるので、そこは問題ではありません。 対処として出てくるのは、決めごとを増やすことです。色を指定する、書体を指定する、文末の形を指定する。増やせば、指定した範囲は揃います。指定していない場面が来たときに、また分かれます。 そして、実務で起きることは指定の外に出ます。新しい媒体が増える、想定していなかった場面で使う、社外の相手が作る。そのたびに指定を足していくと、決めごとは増え続けます。増えるほど読まれなくなり、読まれない決めごとは守られません。 増やす方向で進めるかどうかは、判断できます。指定していなかった場面が出てきたとき、それが繰り返し起きることなら、決めごとを足す価値があります。一度きりなら、その場で判断して終わりにする。この見分けをせずに全部を足していくと、一度きりの事情が決まりとして残ります。 根が別のところにある場合があります。元が決まっていないと、そもそも何に揃えるのかが共有されていません。この状態で決めごとだけを増やしても、増えた分は暗記の対象になります。暗記したものは、書いてある場面でしか使えません。 決めごとが守られなくなる形は、これとは別にもあります。書いてあるのに読まれない、理由が失われたまま形だけ守られる。そちらは運用の話で、次の章で送る記事に書いてあります。この章で言っているのは、元がないまま決めごとを作った場合です。 元が共有されていれば、書いていない場面でも判断できます。新しい媒体が出てきたときに、「うちは何を約束しているから、ここではこうする」と考えられます。決めごとを読んでいない人でも、約束を知っていれば近いところに着きます。決めごとの数ではなく、元が共有されているかどうかが効きます。 書き残すときの形 訳したものが固まったら、書き残す段階になります。ここから先は、ガイドラインの話です。 何を書くか、何を書かないか、誰が運用するか。書き残す段になると、決めることが変わります。書く内容よりも、使われ続けるかどうかのほうが難しくなります。そちらはブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかに書いています。 書き残す前に固めておくものがあります。訳す元と、訳した結果と、そのあいだの理由です。理由まで書いてあると、あとで事情が変わったときに見直せます。結果だけを書くと、合わなくなっても動かせません。 この記事で扱ったのは、その手前です。書き残すものが、何から訳されたのか。訳す元が決まっていないまま書き残すと、決めごとの一覧はできますが、書いていない場面で使えません。 トンマナは、約束の写し トーンアンドマナーは、その場で決めるものではありません。誰に何を約束するかを、見え方と言い方に写したものです。 写す元が決まっていなければ、写せません。色も書体も文章の調子も、絞る理由がないまま選ぶことになり、残るのは選んだ人の好みです。 そして、写し方が合っているかを判断できるのは、元を持っている側です。作る側は案を出し、決めた側が約束と照らす。この役割が分かれていると、好き嫌いの話にならずに済みます。 揃わないと感じたときに見るのは、決めごとの数ではありません。何に揃えるのかが、社内で共有されているかどうかです。共有されていれば、書いていない場面でも近いところに着きます。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方 ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのか 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ブランドアーキテクチャとは。ブランド体系を、後から並べ直す

ブランドアーキテクチャとは。ブランド体系を、後から並べ直す

ブランドアーキテクチャとは、会社が持っている名前——会社名、事業名、商品名、サービス名——の関係を決めることです。日本語ではブランド体系と呼ばれます。 調べると、設計という言葉が出てきます。全体の形を先に決めて、そこに一つずつ置いていく。整った説明です。 ただ、中小企業で実際に起きるのは、設計ではありません。すでに増えたものを、並べ直す作業です。先に設計する機会は、すでに過ぎています。1つ目を出したときに、2つ目の予定がなかったからです。 この記事では、なぜ名前が増えるのか、どう並べ直すのか、そして変えないという判断をどこで下すのかを書きます。 ブランド体系とは何か ブランドアーキテクチャとブランド体系は、同じものを指しています。英語をそのまま使うか、訳すかの違いです。記事によってどちらかが使われますが、中身は変わりません。 決めるのは、名前どうしの上下と並びです。会社名を前に出すのか、商品名を前に出すのか。事業ごとに名前を分けるのか、まとめるのか。 型は三つあります。会社名を前に出す形、商品を独立させる形、両方を併記する形です。どれを選ぶかは、その商品を買う人が会社の名前を知っているかどうかで決まります。 この記事で扱うのは、その型を選んだあとの話ではありません。型を選ぶ機会がないまま、名前が増えてしまった会社の話です。 決めることの中身も変わります。これから出すなら、何を共通にして何を分けるかを決めます。すでに増えているなら、どれを残してどれをやめるかを決めます。後者のほうが、材料は多いのに、選べる幅は狭くなります。すでに外に出したものは、こちらの都合では消えないからです。 名前が付く対象は、商品だけではありません。事業、サービス、部門、拠点。会社によっては、拠点ごとに違う屋号を使っていることもあります。外に出ているものは、どれも体系の一部になります。社内だけの呼び分けとは、分けて数えます。 名前が何本あるかを数えたことがない会社は、珍しくありません。数えないまま増えるからです。増やすときは1本ずつなので、そのつど「もう1つくらい」で済みます。合計が見えるのは、並べたときだけです。 設計と、並べ直しは違う ブランド体系の説明は、設計という言葉で書かれています。全体の形を先に決めて、そこに一つずつ置いていく。手順としては分かりやすく、実際にその順で進められます。 この説明は、先に全体がある会社に向いています。事業が複数あって、新しい商品を出す予定が立っていて、置き場所を決める段階にいる。そういう会社なら、設計から入るほうが早く終わります。 条件が揃わないのは、増えたあとに気づく場合です。1つ目の商品を出したとき、2つ目の予定はありませんでした。2つ目を出したとき、3つ目の予定もありませんでした。設計する機会が無かったのではなく、設計する対象が、そのときは1つしかなかったのです。 だから設計の説明が間違っている、という話ではありません。順番の話です。先に全体がある、という条件が揃っているかどうかで分かれます。 並べ直しは、設計と進み方が逆になります。設計は、決めた形に合わせて中身を置いていきます。並べ直しは、いま外に出ているものを集めてから、形を決めます。先に形を決めると、すでに出ているもののうち、形に合わないものが見えなくなります。 見えなくなったものは、消えるわけではありません。名刺に残り、請求書に残り、看板に残ります。図の上では整理されたのに、外から見た会社の名前は前のままだった、という形になります。 手をつける場所も逆になります。設計から入るなら、どういう会社になりたいかを決めるところから始まります。並べ直しから入るなら、いま何があるかを数えるところから始まります。行き着く先はどちらも決めごとですが、最初に開く引き出しが違います。 名前は、意図せず増える 会社の名前は、増やすと決めなくても増えます。増える場面が、決める場面と別のところにあるからです。 増え方を挙げると、こうなります。商品名、サービス名、屋号、略称、部門名、キャンペーン名、社内での通称。それぞれ、必要になった場面で付けられています。 名刺を作るときに部門名が要ります。請求書を出すときに正式名称が要ります。看板を出すときに短い名前が要ります。SNSを始めるときにアカウント名が要ります。展示会に出るときにブースの表記が要ります。そのつど、その場で決まります。 決めた人は、それぞれ違います。名刺は総務、請求書は経理、SNSは若手、看板は社長。誰も増やすつもりがないのに、合計は増えていきます。 気づくのは、社外の人に説明できなくなったときです。「御社の○○というのは、△△とは違うものですか」と聞かれて、答えに詰まる。あるいは、社員によって説明が違う。ここで初めて、名前が何本あるのかを数えることになります。 増えるのを止める仕組みは、置かれていません。止める理由が、その場では見当たらないからです。名刺に部門名を入れるのは自然で、SNSのアカウント名を短くするのも自然です。一つずつ見れば、どれも正しい判断です。 そして、増えた名前は簡単には消えません。印刷物は在庫として残り、サイトのページは検索に残り、取引先の台帳には登録した時点の名前が残ります。増やすのは自社だけでできますが、減らすには相手側の作業が要ります。 増えること自体は、悪いことではありません。必要があって付いたものだからです。問題になるのは、関係が決まっていない場合です。どれが上でどれが下か、どれとどれが同じものを指しているのか。それが決まっていないと、聞かれるたびに、その場で説明を組み立てることになります。 まず、並べてみる やることは、いま外に出ている名前を1枚に書き出すことです。判断は、そのあとになります。 拾う場所は、社外の目に触れているもの全部です。名刺、サイト、請求書、見積書、パンフレット、SNSのアカウント名、看板、メールの署名、名簿への掲載名、展示会の表記。出どころで分けないことが大事です。営業が使っているものと、経理が使っているものを分けて数えると、重なりが見えません。 書き出すのは、名前そのものと、どこに出ているかです。表記のゆれも、別の行にします。アルファベットとカタカナ、正式名称と略称、中黒のある無し。同じものだと思っているものが、外では別々に見えていることがあります。 形式は、紙でも表計算でも構いません。決めておくのは、1行に1つ書くことだけです。まとめて書くと、まとめた時点で判断が入ります。判断はあとに回します。 集める人は、一人に決めます。分担すると、拾う基準が分かれるからです。ある人は正式名称だけを拾い、別の人は略称まで拾う。基準が違うと、一覧にしたときに数が合いません。 並べると、出てくるものがあります。同じものが2つの名前で呼ばれている。違うものが似た名前になっている。社内では使っているのに、外にはどこにも出ていない名前がある。逆に、外に出ているのに社内では誰も使っていない名前がある。 一覧にしないと、これは見えません。1つずつ見ているあいだは、どれも正しいからです。名刺の表記は名刺として正しく、請求書の表記は請求書として正しい。並べたときに初めて、揃っていないことが分かります。 この作業に、時間はかかりません。かかるのは、集める手間だけです。判断はまだ入れないので、進め方に迷う場面も出てきません。先に全部を出して、評価はそのあとにします。 どれを残すかの決め方 残す基準は、社内の思い入れではありません。外で使われている名前です。 確かめる場所は三つあります。請求書の宛名、問い合わせの書き出し、そして紹介されたときの言い方です。相手が何と呼んでいるか。そこに出ている名前が、実際に通っている名前になります。 なぜそこを見るのかというと、名前は覚えられて初めて働くからです。覚えられていない名前を残しても、機能は増えません。残す本数を増やすほど、どれも覚えられなくなります。 残す本数は、少ないほうが動きます。増やすときは1本ずつでも、覚える側は合計で受け取るからです。相手の頭のなかで、自社に割り当てられている場所は決まっています。 外で使われていない名前は、消さなくても構いません。社内向けの呼び名として残します。社内で通じているなら、そこでは働いているからです。分けるのは、外に出すかどうかの線です。 判断に迷うのは、社長が付けた名前が外で使われていない場合です。ここは正面から確かめます。思い入れがあるかどうかではなく、その名前で問い合わせが来たことがあるか。来ていないなら、まだ外では働いていません。 残すと決めた名前については、何を指すのかを一文にします。「これは、○○のときに使う名前」。この形まで決めておかないと、次に迷ったときに同じ問いが立ちます。約束の中身そのものを決める作業は範囲が広いので、ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に分けて書いてあります。 やめると決めた名前は、いつやめるかまで決めます。決めないと、やめたつもりのものが残ります。在庫のパンフレット、更新していないSNS、印刷済みの封筒。やめる日を決めていないものは、やめていません。 やってはいけないこと 一つめは、全部を会社名に統一することです。並べてみると本数が目に付くので、まとめたくなります。ただ、外で通じている名前を消すと、それまで積み上げた分がなくなります。相手はその名前で覚えているからです。 代わりにやることは、外で通じている名前を先に確かめることです。統一するかどうかは、そのあとに決めます。通じていない名前だけを整理すれば、失うものはありません。 二つめは、名前を増やして解決しようとすることです。関係が分かりにくいときに、まとめるための新しい名前を付ける。上位の概念を1つ作れば整理される、という考え方です。ただ、新しい名前を足せば、本数は1本増えます。外から見る人にとっては、覚えるものが増えただけになります。 代わりにやることは、いま何本あるかを数えることです。数える前に足すと、足した理由が残りません。数えたうえで足すなら、それは判断です。 上位の概念を作ること自体が悪いのではありません。それを足すことで、すでにある名前を1本減らせるなら、足した意味があります。減らさずに足すと、増えるだけです。 三つめは、一度に全部を変えることです。並べ直すと、直したい箇所がまとめて見えます。ただ、印刷物と請求書は取引先の記録に残ります。途中で変えると、相手側で照合ができなくなります。 代わりにやることは、変える順番を決めることです。差し替えやすいものから変えます。サイトとSNSは先に変えられます。名刺と請求書は最後です。取引先の経理が、前の名前で処理を続けている期間があるためです。 三つとも、名前が少ないうちは起きません。1本か2本なら、統一も、追加も、一斉の変更もできます。通らなくなるのは、外に出ている名前が数えられる数を超えたあとです。 変えないという判断 並べ直した結果、変えないほうがよい場合があります。整理できることと、整理すべきことは別だからです。 変えるとかかるものを、先に見ます。印刷物の作り直し。登記の変更。取引先への連絡と、先方の台帳の書き換え。検索で見つけてもらい直すまでの期間。このうち、こちらで完結しないものが混ざっています。取引先の台帳と、検索での再認知は、相手側の都合で進みます。 判断の基準は、混乱が実際に起きているかどうかです。起きていないなら、記録だけ残します。並べた一覧と、どれとどれが同じものかのメモ。それだけで、次に人が入ったときに説明できます。 起きている合図は、外から来ます。問い合わせで、こちらが使っていない名前を言われる。社員の説明が人によって違う。請求書の宛名が定まらず、相手ごとに書き分けている。このどれかが出ているなら、整理する理由があります。 出ていないなら、急ぎません。名前が複数あること自体は、混乱ではないからです。関係が説明できていれば、複数あっても通ります。 社名そのものを変える場合は、範囲が変わります。判断の材料はリブランディングとは。意味・進め方・費用・判断のタイミングにまとめています。名前を変えると、ロゴと、ロゴが乗っているもの全部が付いてきます。どこまでが納品に含まれるかはロゴ制作の依頼。何が納品されるかで、見積もりは変わるに書いたとおりです。 そして、変えなくてよいと伝えるのは、引き受けた側の仕事です。並べ直した一覧を見れば、直せる箇所は必ず出てきます。直せることと、直す必要があることは違う。この線を引かずに全部を作り直すと、費用は増えて、外から見た会社は変わりません。 増やす前に、1つ決めておく 並べ直したあとにやることは、次に増やすときのルールを1つ決めることです。ルールが無ければ、また同じ増え方をします。 決めるのは、新しい名前を出すかどうかを誰が判断するか、その1点です。細かい規則は要りません。判断する人が決まっていれば、その人のところに話が集まります。集まる場所があることが、数を止めます。 判断する人が決まっていれば、増やさないという結論も出せます。誰も決めていない状態では、増やさない判断をする人がいません。反対する人がいないので、そのまま増えます。 新しく1本増やすかどうかの枠組みは、ブランド戦略とは。マーケティング戦略との違いと、事業戦略との関係に書いてあります。会社全体としてどこから手をつけるかは、企業ブランディングとは。何本の仕事に分かれ、どこから手をつけるかに、作業の分け方をまとめています。 この記事のテーマで、相談したいことがあれば INTERPLAYは、ブランディングから、Web・グラフィック・映像・空間・撮影まで、分けずに引き受けられるクリエイティブエージェンシーです。何を作るかが決まる前の段階からでも、ご相談いただけます。 相談する(お問い合わせ) 関連する記事 商品ブランディングとは。共通にするものと、分けるものを決める 企業ブランディングとは。何本の仕事に分かれ、どこから手をつけるか ブランド戦略とは。マーケティング戦略との違いと、事業戦略との関係 記事一覧を見る