ブランドポジショニングとは。マップは、決めたあとに描く

ブランドポジショニングとは。マップは、決めたあとに描く

ブランドポジショニングとは、自社が誰のどの場面で、何として思い出されるかを決めることです。ポジショニングマップは、それを決めたあとに描くものです。空いている場所を探して埋める道具ではありません。空いている場所には、空いている理由があります。

調べると、マップの描き方が並びます。軸を2本選ぶ。競合を置く。空いているところを探す。そこに自社を置く。手順としては分かりやすく、実際に描けます。

図が要らないという話ではありません。決めたことを見比べるには、図があるほうが早く済みます。順番の話です。

ブランドポジショニングとは何か

ブランドポジショニングとは何か
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市場のなかで自社が立つ場所を選ぶ作業です。決めるのは、相手と場面と、その場面で何として挙がるか。相手を選ぶだけでは足りず、どの場面に入るかまで下ろします。

思い出される、という言い方をしているのには理由があります。決めた位置が効いてくるのは、相手が何かを必要としたときです。そのときに名前が挙がるかどうか。日ごろどう見られているかより、必要になった場面で候補に入るかどうかのほうが、実務では効きます。

順番が入れ替わると、図の上で空いている場所が、そのまま狙う場所になります。図はきれいに埋まりますが、そこを選んだ理由は図の外に残りません。理由を確かめるのは、立つ場所を決めたあとになります。

この記事で書くのは、何を決めることなのかと、決めるために何を見るのか、そして図をどこで使うのかです。

似た言葉との違い

近い言葉がいくつかあります。決めているものが違います。

決めること 基準になるもの
ブランドポジショニング 誰のどの場面で、何として思い出されるか 相手の頭のなか
ブランドプロポジション その相手に何を約束するか 約束の中身
ターゲティング 誰を相手にするか 相手の範囲
差別化 他社と何が違うか 他社

この分け方も、私たちの整理です。まとめて扱う考え方もあります。

分けている理由は、基準にするものが違うからです。差別化は他社を見ます。他社がやっていないことを探す形になるので、他社が動くと基準も動きます。ポジショニングは相手を見ます。相手が何と比べているかが基準なので、他社の動きより先に、相手の比べ方が変わったかどうかを見ます。

この違いは、打ち手にも出ます。差別化から入ると、他社にない要素を足す方向に向かいます。足せば違いは出ますが、相手がそこを見ていなければ、選ばれる理由にはなりません。ポジショニングから入ると、まず相手が何を見ているかを確かめるので、足すかどうかはそのあとになります。

ブランドプロポジションは、ポジショニングを決めたあとに来ます。どの場面で思い出されるかが決まって、その場面で何を保証するのかが約束になります。約束の決め方はブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に書いてあるので、そちらを見てください。

ターゲティングとの違いは、決める深さです。ターゲティングは相手を選ぶところまでで、ポジショニングはその相手のどの場面に入るかまで決めます。年齢や業種で切ると相手は決まりますが、場面は決まりません。場面まで下ろすと、自社の仕事と直接つながります。

場面という単位にしておくと、確かめるのも簡単になります。属性は本人に聞いても答えが変わりませんが、場面は具体的な出来事なので、実際にあったかどうかを聞けます。あった場面が集まれば、そこが実在する入口です。

すでにある位置を変えることを、リポジショニングと呼びます。新しく決める場合と手順は同じですが、いまの位置で選んでくれている人がいる点が違います。移した先に人がいるかを確かめる前に動くと、いまいる人だけを失います。

ブランディング全体のなかでの位置づけは、ブランディングとは。何をすることで、どこから手をつけるのかにまとめてあります。

マップは、決めたあとに描く

マップは、決めたあとに描く
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ポジショニングマップは、決めた結果を確かめる道具です。決めるための道具ではありません。

描いてから決めると、軸に引っ張られます。先に選んだ2本の軸が、答えの候補を決めてしまうからです。価格と品質で描けば、価格と品質の話にしかなりません。その2本が、相手が実際に迷っている軸だとは限りません。

順番を入れ替えると、こうなります。相手が何と比べているかを聞く。比べるときに何を見ているかを聞く。そこで出てきた見方を軸にして、図を描く。図は、聞いた話を並べ直したものになります。

この順番だと、図を描く前に決まっていることがあります。誰の、どの場面か。その場面で相手が何を天秤にかけているか。図はそれを目に見える形にするだけなので、描いても新しい発見は出ません。出ないのが正しい状態です。

逆に、図を描いてから「では、ここが空いていますね」と発見が出るとき、その発見は図の作り方から出ています。軸を変えれば別の場所が空きます。発見に見えるものが、道具の副産物だという状態です。

だから、図を描き始める前に聞くことがあります。何を決めたいのか、いま何が決まっていないのか。そこを聞かずに軸を2本決めて持っていくのは、聞く前に答えを絞ったということです。

会議の場で描くと、これがはっきり出ます。ホワイトボードに軸を引いて、参加者が競合を置いていく。埋まっていない場所が見えたとき、そこに向かう空気が生まれます。図が目の前にあると、図の上で考えることになるためです。

そして、一度描いた図は残ります。資料に入り、次の会議に持ち込まれ、新しく入った人はそれを前提として受け取ります。描いたときの軸の選び方は、資料には残りません。残るのは結論のほうです。

空いている場所が空く理由

空いている場所が空く理由
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図の空白は、機会の印ではありません。空いているのには、理由があります。

理由はいくつかに分かれます。そこに需要がない。需要はあるが、その値段では成立しない。規制や資格で入れない。すでに誰かが試して、続かずに撤退した。どれも、外から見ると同じ空白に見えます。

需要がない場合は、置いても誰も来ません。速くて安いという場所が空いているとして、そこを求める人がいなければ、立っても意味がありません。速さも安さも価値ですが、その組み合わせを探している人が実在するかは別の話です。

成立しないコスト構造の場合は、置けますが続きません。手厚くて安いという位置は、相手にとっては魅力的です。ただ、その組み合わせで利益が出る作り方がないなら、受注が増えるほど苦しくなります。しばらくは仕事が取れるので、問題が見えるのは遅れます。

規制や資格の場合は、そもそも入れません。ここは調べれば分かるので、確かめれば済みます。業種によっては、この確認が先に来ます。

見分けにくいのは、撤退したあとの空白です。少し前まで誰かがいたので、需要があったように見えます。ただ、続かなかった理由は図に残りません。確かめ方は、そこにいた会社がいまどこにいるかを見ることです。別の位置に移っているなら、移った理由があります。なくなっているなら、続かなかったということです。

だから、空白を見つけたら次に見るのは、そこで買っている人がいるかどうかです。いないなら、その人たちはいま何を買っているのかを聞きます。代わりに買っているものがあるなら、需要はそちらにあります。何も買っていないなら、そこに用事がありません。

この確かめは、図の空きを機会として示す側がやります。空いていますね、で終わる提案は、確かめる作業を相手に残しただけです。

調査をやるという話ではありません。相手が数えられる範囲なら、聞けば分かります。既存の取引先に「これがあったら使いますか」と聞く。断られた相手に、いま何を使っているかを聞く。規模が小さいほど、この確かめ方は速く済みます。

軸の選び方で答えが変わる

軸の選び方で答えが変わる
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軸を2本選んだ時点で、答えは半分決まっています。

選びやすいのは、測れる軸です。価格、納期、対応の速さ、品目の数。数字で置けるので、図がきれいに描けます。ただ、きれいに描けることと、相手がそこで迷っていることは別です。

測れる軸に寄るのには、別の事情もあります。説明しやすいからです。社内で図を見せるとき、価格と納期なら誰も異論を挟みません。根拠を問われたときに数字を出せます。説明のしやすさで軸が決まると、相手の見方は図に入ってきません。

相手が迷っている軸は、言葉になっていません。頼んだあとに気を遣わずに済むか。途中で仕様が変わったときに嫌な顔をされないか。担当が変わっても話が通じるか。測りにくいので図にしにくく、そのぶん誰も軸にしていません。だから、ここを軸に取ると図の形が変わります。

こうした軸は、相手の言葉から取ります。選んでくれた理由を聞いたときに出てきた言い回しを、そのまま軸の名前にします。整えると、こちらの言葉に戻ってしまいます。

言い回しをそのまま使うと、図は見た目が整いません。軸の名前が長くなり、対になっていないこともあります。それでも構いません。図は社外に出すものではなく、社内で判断するための道具です。整った図より、実際の言葉が残っている図のほうが、あとで使えます。

同じ会社でも、軸を変えると別の場所に立ちます。価格と納期で描けば真ん中に埋もれる会社が、相談のしやすさと事業理解の深さで描くと端に出ます。どちらの図も間違っていません。見ている面が違うだけです。

図が1枚しか出てこない提案は、軸の選び方を問えません。なぜその2本なのかは、図の外で決まっています。選んだ理由が言えない軸で描いた図は、結論を確かめる道具になりません。

だから、軸は答えではなく問いとして扱います。この2本で見ると、うちはここに立つ。別の2本で見ると、ここに立つ。複数の図を並べたときに、どの図でも同じ場所に立つなら、それは強い位置です。図によって位置が変わるなら、まだ決まっていません。

何を見て決めるか

決めるために見るのは、競合の一覧ではありません。相手が何と比べているかです。

比べている相手は、同業とは限りません。制作を頼むかどうかで迷っている会社が、比べているのは他の制作会社ではなく、社内でやることかもしれません。あるいは、いま何もしないことかもしれません。同業だけを並べた図では、この比較相手が出てきません。

聞く相手は、選んでくれた人と、選ばなかった人の両方です。選んだ理由は聞きやすく、そのぶん当たり障りのない答えが返ります。情報が出てくるのは、断られたほうです。何と比べて、どこで決まったのか。ここは聞きにくいので、聞かないまま終わることがあります。

聞く時期も効いてきます。決まった直後なら、比べた内容を覚えています。時間が経つと、選んだ理由をあとから整理した話になります。受注しても失注しても、決まった直後に一度聞いておくと、そのときの比べ方が残ります。

聞き方は、良かったところを聞くより、何と迷ったかを聞くほうが具体が出ます。「他にどこを見ていましたか」「決め手は何でしたか」。迷った相手の名前が出てきたら、そこが実際の比較相手です。自社が競合だと思っている相手と、違う名前が出ることがあります。

断られた理由を集めにいくのは、発注側の宿題ではありません。引き受けた側が調べにいく範囲です。決めた相手には言いにくいことも、第三者になら言えます。ここは受けた側のほうが向いています。

決まった位置に対して、何を約束しないかまで決める必要があります。ここは範囲が広いので、ブランド戦略とは。マーケティング戦略との違いと、事業戦略との関係に書いてあります。約束することだけを決めて終わらせない、という部分がそこにあたります。

決まっているかの確かめ方

図があるかどうかでは分かりません。図は描けば残りますが、決まっていることの証明にはなりません。

確かめ方は、社内で聞くことです。別々の人に「うちはどの場面で選ばれていますか」と聞きます。答えが揃うなら、決まっています。営業と制作と経営で違う場面が出てくるなら、まだ揃っていません。決めたつもりのことが、社内で共有されていない状態です。

もう一つは、直近の提案で使われたかどうかです。提案の内容を決めるときに、その位置づけが判断に入ったか。入っていないなら、決めた図と、実際の動き方が別々になっています。

見るのは、資料に書いてあるかどうかではありません。書くだけなら、あとから足せます。何かを選ぶ場面で、その位置づけを理由に選択肢を落としたことがあるか。落とした記録があるなら、判断に使われています。

確かめる手立ては、図と一緒に残しておきます。図だけを納めて終わると、あとから当たっているかを見る方法が手元にありません。

位置そのものは、頻繁に変えるものではありません。何として思い出されるかが期ごとに変わると、選んだ側から見て別の会社になります。変えるかどうかではなく、まだ当たっているかを確かめるという形で見ます。

確かめる場面は決めておきます。新しい事業を始めたとき、主力の相手が変わったとき、選ばれ方がこれまでと変わったとき。このうち三つ目は、早い段階で出る合図です。自社が動いていなくても、位置は動きます。

会社全体としてどこから手をつけるかを見直す場合は、企業ブランディングとは。何本の仕事に分かれ、どこから手をつけるかに、作業の分け方を書いています。

図は結論を確かめる道具

ポジショニングマップは、決めたことを目に見える形にするための道具です。

空白から始めると、そこが空いている理由を確かめる前に、立つ場所が決まります。空いている場所には理由があり、需要がない、値段が合わない、入れない、続かなかった、のどれかです。

決めるために見るのは、相手が何と比べているかです。同業の一覧ではなく、相手が実際に天秤にかけたものを聞きます。聞いてから軸を選び、選んでから図を描く。図に新しい発見が出ないなら、順番は合っています。

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