BtoBブランディングとは。会っていない人に、どう伝わるか

BtoBブランディングとは。会っていない人に、どう伝わるか

BtoBブランディングとは。会っていない人に、どう伝わるか

BtoBブランディングとは、法人を相手にする会社が、選ばれる理由を決めて、それが相手の社内で伝わる形にしておく取り組みです。

効くのは、名前を広く知られることではありません。会って話した相手が、その場にいない人に説明できる形にしておくことです。BtoBでは、提案を聞いた人と、決める人が違うからです。

打ち合わせが終わったあとに、こちらが手を出せない時間があります。そこで決まります。この記事では、なぜそうなるのか、その時間に向けて何を用意するのか、効いているかをどう見るのかを書きます。

決める人は、会議室にいない

BtoBでは、提案を聞いた人が決めるとは限りません。使う部門、選ぶ担当、決裁する人が別々にいて、それぞれ見ている場所が違うからです。

分かれる理由は、金額と期間です。法人どうしの取引は、個人の裁量で決められる範囲を超えます。超えた分は、社内の誰かに承認をもらうことになります。承認する人は、その打ち合わせに出ていません。

だから提案は、必ず一度は又聞きされます。打ち合わせの場でどれだけ伝わっても、そのあとに、聞いた人が聞いていない人へ説明し直す場面が来ます。

しかも、又聞きは一度で終わりません。担当者が課長に、課長が部長に、部長が役員に。段を上がるたびに説明は短くなり、短くなるたびに、残る言葉が絞られます。最後まで残った一言が、相手の会社にとっての自社の説明になります。

段の数は、相手の会社の規模で変わります。担当者が決裁まで持っている会社なら一段で済み、部長と役員が挟まる会社なら三段になります。段が増えるほど、最初に渡した一言の精度が効いてきます。三段を通って残るのは、こちらが力を入れた説明ではなく、短くて言いやすかった言葉のほうだからです。

提案書のどこが読まれるかも、これで決まります。時間をかけて書いた背景の説明は、担当者の手元では読まれても、その先には運ばれません。運ばれるのは、担当者が自分の言葉で言い直せた部分だけです。

その一言を選ぶのは、こちらではありません。相手です。渡した資料の枚数も、話した時間の長さも、選ぶ基準にはなりません。分厚い資料は社内で回覧されるより先に要約され、要約する人は、こちらがどこに力を入れたかを知りません。

こちらにできるのは、選ばれやすい一言を用意しておくことだけです。BtoBのブランディングが効く場所があるとすれば、それは自社がいない場所です。

BtoC・CtoCと、何が違うのか

三つの言葉は、取引する相手の組み合わせを指しています。BtoBは法人と法人、BtoCは法人と個人、CtoCは個人と個人です。

ただ、言葉の意味より、決まり方の違いのほうが実務では効きます。

決める人 決まるまで 効くもの
BtoB 聞いた人と決める人が違う 長い。社内を通る 説明されたときに残るか
BtoC 買う人が決める 短い。その場で決まる 見たときに思い出すか
CtoC 個人どうし 相手による 相手を信用できるか

BtoCでは、買う人がその場で決めます。店の前で、画面の前で、その人が決めて終わります。だから、見たときに思い出せるかどうかが効きます。広告や露出が効くのは、この形をしているからです。

CtoCでは、売る側も個人です。会社の看板がないので、評価や取引の履歴が信用の代わりになります。決めるのは相手の個人で、ここも間に人が入りません。

BtoBだけ、自社がいない場所で決着がつきます。打ち合わせが終わってから決まるまでのあいだ、こちらは何もできません。この時間の長さと、その間に何が起きるかが、他の二つとの違いです。

BtoBでは感情が効かない、という話ではありません。担当者が推してくれるかどうかは、その人の判断です。ただ、推すという行為は、社内で説明するという形をとります。気に入られることと、説明してもらえることは、同じではありません。印象がよくても、社内で言える形になっていなければ、推しようがありません。

同じ会社でも、売る相手によって形が変わります。法人向けの事業と個人向けの事業を両方持っているなら、進め方は分けることになります。片方で効いた進め方をもう片方に持ち込むと、合いません。決める人の位置が違うからです。

認知の施策が前提にしていること

BtoBブランディングの説明では、認知を広げることが先に来ます。名前を知られていれば、何かが必要になったときに候補に挙がる。この筋自体は通っています。

ただ、この進め方には前提があります。広げれば買う人の数が増える市場である、という前提です。個人向けなら、知った人が増えれば、そのうち何割かが買います。母数が増えれば、結果も増えます。

BtoBでは、買う会社の数が先に決まっています。ある業種の、ある規模の、ある課題を持った会社。その数は、こちらが認知を広げても増えません。増えるのは、買わない人の認知です。

だから認知の施策が間違っている、という話ではありません。予算があって、検討の入り口にすら立てていないことが課題なら、有効です。名前を知られていない会社は、候補の一覧に載りません。

測っている対象も変わります。認知の施策が見るのは、知っている人の割合です。BtoBで効いてくるのは、候補に入った案件で決まる割合のほうです。二つは別の数字なので、知っている人の割合が上がっても、受注が動かないことがあります。動かないときにさらに広げると、同じ場所で落ち続けることになります。

条件が合わなくなるのは、予算が限られている場合です。広げる施策は、続けているあいだだけ効きます。止めれば戻ります。止めれば戻るものに使うか、止めても残るものに使うか。限られた予算では、そこの判断になります。

広げる施策と、詰める施策のどちらかだけが正しい、という話ではありません。順番の話です。買う会社の数が決まっている面では、詰めるほうが先に効きます。

残るほうに使うなら、先に手をつけるのは、候補に挙がったあとの詰めです。何を約束して、何を約束しないか。相手の数が見えている面では、一社あたりにかける手間を増やせます。約束しないことまで決めておく範囲は、ブランド戦略とは。マーケティング戦略との違いと、事業戦略との関係に書いてあります。

又聞きされる前提で、何を用意するか

用意するのは、資料の量ではありません。担当者が社内で言える形です。渡したものがそのまま届くわけではなく、担当者の言葉に置き換わって届くからです。

一つめは、一文で言えるかどうかです。会議の途中で口に出せない長さなら、その場では使われません。「あの会社は、こういうときに頼むところ」。この形まで縮まっていないと、又聞きの段で落ちます。

ここで作る一文は、自社の判断に使う一文とは向きが違います。ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方で書いたのは、案件を受けるかどうかを自社が決めるための一文でした。こちらは、相手が社内で復唱するための一文です。同じ内容でも、覚えやすさにかける比重が変わります。

二つめは、決裁する人が知りたいことを、先に置くことです。決裁する人は、技術の中身を評価できません。評価できるのは、何が解決して、あとに何が残るかです。技術の説明は、それが実現できる根拠として下に付けます。順番が逆だと、要約された段で技術のほうが落ちます。残るのは、何をしてくれる会社なのかが分からない説明です。

三つめは、サイトです。サイトは、担当者が上司に見せる場所です。打ち合わせのあと、相手の社内で最初に開かれるのがそこになります。会社概要と実績だけが並んでいると、何を頼めるところなのかは担当者が口で補うことになります。補えなかった分は、そのまま落ちます。作り直すかどうかの判断は、コーポレートサイトのリニューアル。作り直す前に、何が変わったかを見るにまとめています。

三つに共通しているのは、相手の手間を減らしているという点です。説明する側の負担が軽いほど、説明は正確に運ばれます。

説明が割れると、又聞きも割れる

自社の営業が三人いて、三通りの説明をしているなら、相手の社内でも三通りになります。又聞きは、聞いた人の言葉に置き換わって進むからです。元が割れていれば、置き換わった先はもっと割れます。

これは、相手の理解力の問題ではありません。渡す側で揃っていないものは、受け取る側で揃いようがありません。

割れているのは、営業の力量の差でもありません。決まっていないことを聞かれた人は、自分の経験から答えるからです。経験は人によって違うので、答えも人数分に分かれます。揃えるのは説明の上手さではなく、決めごとのほうです。決めごとが一つあれば、言い方が違っても、指しているものは同じになります。

新しく入った営業がいる会社では、ここが先に表に出ます。前からいる人は、決まっていなくても経験で埋められます。埋められない人が入ってきたときに、決まっていないことが見えます。人が増えたタイミングで説明が割れ始めるのは、そのためです。

確かめ方は、社内で聞くことです。営業の担当者に、別々に「うちは何を頼まれる会社ですか」と聞きます。答えが重なっていれば、揃っています。一言一句が同じである必要はありません。同じことを指しているかどうかを見ます。

割れていた場合にやるのは、資料を作り直すことではありません。何を約束するかを先に決めることです。決まっていないものを資料にすると、書いた人の解釈が入ります。人数分の解釈が、資料に載るだけです。

この作業は外向けの仕事に見えますが、中身は社内向けです。進め方はインナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方に書いています。営業の資料を作るより先に、ここが済んでいるかを見ます。

揃っているかを確かめずに制作を進めるのは、引き受けた側の落ち度です。三通りの説明がある状態でサイトを作れば、四通りめが増えます。確かめる場を提案に入れておくのは、受けた側の仕事です。

やってはいけないこと

一つめは、認知を広げるところから始めることです。知られていないから決まらない、と決めつけると、実際にどこで落ちているかを見ないまま予算が動きます。

代わりにやることは、直近で失注した案件で、誰が決めたかを確かめることです。会った人が決めていたのか、会っていない人が決めていたのか。会っていない人が決めていたなら、そこは認知の問題ではありません。又聞きの段で落ちています。

失注した案件を一件ずつ見ると、落ちている場所が分かれます。会う前に落ちているのか、会ったあとに落ちているのか。会う前なら認知の話で、会ったあとなら又聞きの話です。分けずに予算を組むと、起きていないほうの問題に寄ります。

二つめは、技術の説明を厚くすることです。作る側は、技術の精度で選ばれたいと思います。ただ、決裁する人はその精度を判断できません。判断できないものは、判断できる項目に置き換わります。置き換わった先が金額になることがあります。

代わりにやることは、何が解決するかを先に置くことです。技術は、それができる根拠として下に付けます。順番を変えるだけで、比べられる項目が変わります。

三つめは、個人向けの言葉づかいを持ち込むことです。短くて印象に残る言い回しは、個人が見た瞬間に思い出すために作られています。BtoBで要るのは、思い出すための言葉ではなく、他人に説明できる言葉です。

代わりにやることは、社内で復唱される言葉かどうかで選ぶことです。声に出して、そのまま伝わるか。整って見えるかより、そこを見ます。

三つとも、個人を相手にする商売では通る進め方です。通らなくなるのは、決める人が別にいる場合です。

効いているかを、どう見るか

BtoBのブランディングは、数字が出るまでに時間がかかります。ただ、測れないと言って終わらせると、続けるかどうかを判断できません。見るのは三つです。

一つめは、失注の理由です。「知らなかった」「聞いたことがなかった」が減っているか。減っているなら、候補に挙がる段までは効いています。

二つめは、決まるまでの打ち合わせの回数です。回数が減っているなら、又聞きの段で落ちていないということです。説明のやり直しが要らなくなると、回数は減ります。

三つめは、相手の社内で誰が推してくれたかです。会った担当者が推したのか、会っていない人が賛成したのか。会っていない人が賛成したなら、又聞きが機能しています。

三つめは、聞かないと分かりません。決まった直後に、なぜ通ったのかを聞いておきます。断られた場合も、何と比べて落ちたのかを聞きます。ここは聞きにくいので、発注側の宿題にすると出てきません。聞きにいくのは、引き受けた側の範囲です。

三つとも、社内の記録には残りません。失注の理由も、推してくれた人の名前も、聞かなければ出てこないからです。案件が決まった直後に一度聞く、という手順を先に決めておきます。手順にしていないと、忙しい時期に飛びます。

見ないほうがよい数字もあります。サイトの閲覧数や、SNSの反応です。増やせる数字ですが、増えたところで買う会社の数は変わりません。動かせる数字と、効いている数字は別です。混ぜて追うと、動かせるほうだけを見ることになります。

三つとも、月ごとに動く数字ではありません。年の単位で見るものです。短い期間で判定すると、効き始める前に止めることになります。見る時期と見る項目は、先に決めておきます。決めていないと、都合のいい時期の数字を選ぶことになるからです。

広げなくても、届く

BtoBブランディングで効くのは、広げることではありません。会っていない人に伝わることです。決める人がその場にいない以上、伝わり方のほうが先に効きます。

決めるのは、選ばれる理由と、それを一文にすることです。一文が決まっていれば、担当者は社内でそれを使えます。使われた一文だけが、自社のいない場所まで届きます。

決めるのは一度ですが、使われるのは提案のたびです。その一文が担当者の口から出ているかどうかを見ます。出ていないなら、決めた言葉が相手まで届いていません。

相手の数が限られていることは、不利ではありません。数が見えているぶん、一社ごとに手間をかけられます。広い面に向けて撃ち続けなくてよいのは、BtoBの側の条件です。

会社全体としてどこから手をつけるかは、企業ブランディングとは。何本の仕事に分かれ、どこから手をつけるかに、作業の分け方を書いています。

Tags: