ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法

ブランドイメージとは。動かせる範囲と、ずれに気づく方法

ブランドイメージとは、その会社や商品に対して、相手が持っている印象のことです。自社の資料の中ではなく、受け取った人の記憶の中にあります。そのため、直接は書き換えられません。自社が決められるのは、何を約束するかまでです。

この記事では、では何を動かせるのかを書きます。向上させることはできます。ただ、手を入れられる場所が決まっていて、そこを外すと、変えたのに印象が動かないという状態になります。

ブランドイメージとは何か

言い換えを探すと、この語がどこにあるものかが見えてきます。

評判、印象、世間の見方、認識。辞書や検索で出てくるのは、この種類の言葉です。

どれも、相手の中にあるものを指しています。自社が作るものを指す言い換えは出てきません。ロゴやスローガンは自社の中にありますが、それらの言い換えとして「ブランドイメージ」が使われることはありません。

ここが、この語の扱いにくいところです。会社の資料に書けるものではありません。書けるのは、こう思われたい、という希望のほうです。実際にどう思われているかは、聞いてみないと分かりません。

私たちは、相手の側にあるものとして扱っています。業界で決まった線引きがあるわけではありませんが、こう置くと打ち手が決まります。手を入れられるのは自社の側にあるものだけなので、何を動かすかがはっきりします。

もう一つ。イメージは、一人ひとり違います。同じ会社に対して、取引先が持っている印象と、応募者が持っている印象と、辞めた人が持っている印象は、別のものです。一つに揃うことはありません。

「ブランドイメージが良い会社」という言い方も、誰にとって良いのかで中身が変わります。買う人にとって良いことと、働く人にとって良いことは、同じとは限りません。

コンセプトとの違い

コンセプトとの違い
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自社の中にあるものと、相手の中にあるもの。この二つを分けると、打ち手が決まります。

ブランドコンセプト ブランドイメージ
どこにあるか 自社の中 相手の中
決められるか 決められる 決められない
変え方 書き直せる 直接は変えられない
見え方 意図したもの 受け取られた結果

ブランドコンセプトは、誰に何を約束するかを決めたものです。自社で書けますし、書き直せます。ブランドイメージは、その約束が相手にどう受け取られたかの結果です。

この二つがずれること自体は、失敗ではありません。伝わり方には幅があるので、意図と結果が完全に重なることはありません。ずれているかどうかではなく、ずれの向きと大きさを知っているかどうかが問題になります。

ずれが出る理由は、受け取り方の側にあります。相手は、自社が用意した説明を全部読むわけではありません。サイトの一部、担当者の一言、見積書の書式。断片で判断されます。そろえた材料のうち、どれが目に入るかは選べません。

順番としては、コンセプトが先です。約束が決まっていない状態で印象だけを気にすると、何に近づけるのかが決まりません。良い印象を持たれたい、という目標は、打ち手に落ちないためです。

そして、コンセプトを決めていない会社にも、印象は付きます。決めていないから付かない、ということはありません。決めていない場合は、付いた印象を後から説明することになります。先に決めておけば、少なくとも何と比べてずれているのかが分かります。

コンセプトの作り方と、それが機能しているかの見分け方は、ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に書きました。

ここから先は、決めた約束が、どこを通って相手に届くかの話になります。

イメージはどこでつくられるか

イメージはどこでつくられるか
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広告や制作物だけで作られるわけではありません。

相手が会社に触れる場面を並べると、こうなります。問い合わせの返信、見積書の書き方、電話の応対、打ち合わせでの受け答え、納品後の連絡、断るときの伝え方。

広告は、見られる回数が限られています。一方で返信は、やり取りのたびに発生します。印象を作っている量で言えば、後者のほうが大きい場合があります。

そして、こうした場面は設計されていないことがあります。誰かが決めた対応ではなく、担当者がその場で判断したものが積み上がります。返信が遅ければ、遅い会社という印象が付く。誰も「遅い会社に見せよう」と決めていなくても、そう付きます。

意図していないものが入るのは、ここです。

売り場やパッケージは、少し性質が違います。説明のない状態で判断される接点だからです。手に取る前に、棚の前で数秒のうちに決まります。そこで何が起きるかは、パッケージを変えたら売れなくなる。その手前で、何が起きているのかに書きました。

接点には、会社が管理しているものと、していないものがあります。サイトや会社案内は管理できます。社員一人ひとりの受け答えは、管理というより、判断の基準が共有されているかどうかの問題になります。

接点のなかで、断るときの伝え方は見落とされます。受注しなかった相手なので、そのあとの関係が無いように見えるからです。ただ、断られた側は、その経験を人に話します。受けた仕事の話より、断られた話のほうが口に出やすい。発生する回数は少ないのに、外に広がりやすい場所です。

もう一つ、時間の要素があります。印象は、一度の接触では付きません。同じことが何回か起きて、そこから形になります。だから、一度良い体験があっても、次が違えば戻ります。逆に、一度の失敗で決まってしまうわけでもありません。

この性質があるので、接点を直しても、印象が動くまでには間があります。直した週に聞いても、何も出ません。

提案の範囲が広告と制作物に寄るのは、受注側の都合でもあります。日々の接点は納品物にならないので、提案から外れます。ただ、印象を動かしている量で言えば、外した側のほうが大きいことがあります。私たちも、提案書に書けるものから書いてしまうところがあります。

「向上させる」と考えると外れる

向上させることはできます。ただ、手を入れられる場所が決まっています。

動かせるのは、相手が触れる場所のほうです。イメージそのものには、手が入りません。

ここを混ぜると、打ち手が見せ方に寄ります。ロゴを変える、写真を替える、言い回しを整える。どれも接点の一部なので、無駄ではありません。ただ、見せ方を変えても、接点で起きていることが同じなら、印象は動きません。

返信が遅い会社が、サイトを作り直しても、返信は速くなりません。取引した人の中には、作り直す前と同じ印象が残ります。

この言葉には、ねじれがあります。定義としては、相手の中にあるものとされます。ところが打ち手の話になると、自社が作るものとして扱われます。定義と打ち手が、別の場所を指しています。

私たちも同じことをしています。提案書に「ブランドイメージの向上」と書くとき、何をどうしたら向上したことになるのかを、決めずに書いていることがあります。相手の中にあるものを目標に置いているので、達成したかどうかを判定できません。

もう一つ、向上という言い方には方向が入っています。良い方向に動かす、という前提です。ただ、印象が良いかどうかは、誰から見てかで変わります。取引先にとって頼みやすい会社であることと、応募者にとって働きたい会社であることは、同じ打ち手にならないことがあります。どちらも上げようとすると、言うことが増えます。増えた分だけ、受け取る側から見ると輪郭がぼやけます。

「ブランドイメージを作ります」と言って引き受けるなら、作れないものを作ると言っていることになります。作れるのは、コンセプトと接点までです。そこを分けずに受けるのは、引き受けた側の問題です。

数値目標を置く場合にも、同じ問題が出ます。認知度や好意度を調査して、その数字を目標にする。数字は動かせますが、動かしているのは調査に答えた人の回答であって、印象そのものとは限りません。調査のための施策が組まれ、数字は上がり、取引の場面では何も変わっていない、ということが起きます。

見る対象を数字に置き換えた時点で、置き換わったものが本当に同じかどうかを確かめる必要があります。

向上を目標に置くなら、何を見て判定するかを先に決める必要があります。次の章がその話です。

ずれに気づく方法

ずれに気づく方法
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数値にしません。聞きます。

測る方法はありますし、規模のある会社なら成立します。ただ、聞ける相手が数十人という規模なら、聞いたほうが早く、中身も濃くなります。

問題は、誰に聞くかです。

契約が続いている相手は、いいことを言ってくれます。関係が続いているので、わざわざ言いにくいことを言う理由がありません。ここで聞いても、ずれは出てきません。

出てくるのは、離れた側です。失注した相手、断った相手、辞めた人、取引を始めたばかりの相手。聞きにくい相手でもあります。

聞くことは一つで足ります。うちを人に説明するとき、何と言いますか。

説明を求めると、その人の中にある形が出てきます。良いか悪いかを聞くと、点数が返ってきますが、中身が出ません。

聞き方にも注意が要ります。誘導すると、誘導したとおりに返ってきます。「うちは丁寧だと思いますか」と聞けば、丁寧だと返ってきます。聞いている側が望んでいる答えが見えるからです。

だから、こちらから形容詞を出しません。相手の言葉で説明してもらい、そこに出てきた語を拾う。出てこなかった語のほうが、情報として重いこともあります。丁寧さを大事にしてきた会社で、誰も丁寧という言葉を使わないなら、そこにずれがあります。

聞く時期もあります。取引が終わった直後は、良い記憶も悪い記憶も濃く残っています。しばらく経ってから聞くと、残っているものだけが出てきます。どちらも要ります。直後の記憶は直す材料になり、時間が経ったあとに残っているもののほうが、印象に近いからです。

そして、社内でも同じことを聞きます。社員によって説明が違うなら、接点ごとに違うものが伝わっています。この状態をどう扱うかは、インナーブランディングとは。進め方と施策、効果の見方に書きました。

聞いた結果が発注側に都合の悪いものだったときに、そのまま渡せるかどうかです。都合のいい部分だけを報告するなら、聞かなかったのと同じになります。ここは、引き受けた側の姿勢の問題です。

ずれていたら、どちらを直すか

ずれていたら、どちらを直すか
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ずれが見つかったとき、直す先は自社の側にあります。相手の中は直せないので、そうなります。

自社の側は、コンセプトと接点に分かれます。どちらを直すかで、作業が変わります。

約束していることが、実態と合っていない。この場合はコンセプトのほうを直します。守れていない約束を掲げ続けると、接点で毎回ずれが出ます。

約束は実態と合っているが、接点で別のものが伝わっている。この場合は接点を直します。言っていることは正しいのに、受け取られ方が違うなら、通り道のどこかで変わっています。

見分け方は、社内に聞くことです。その約束を守れているかを、現場に聞く。守れていないと返ってくるなら、約束のほうが実態から外れています。守れているのに外に伝わっていないなら、接点の側です。

両方を同時に直すこともできますが、順番を決めておかないと、どちらが効いたのか分からなくなります。

接点を直す場合、どこから手をつけるかは、発生する回数で決めます。年に一度しか出さない資料と、毎週発生している返信では、届いている量が違います。見た目に手を入れやすいのは前者ですが、効くのは後者です。

もう一つ、言葉では直らない接点があります。返信が遅いという印象は、書き方を変えても直りません。遅いのは体制の問題なので、体制を変えないかぎり同じことが起きます。

接点を直すという作業には、見せ方を直すものと、実態を直すものが混ざっています。見せ方だけで済む部分と、事業のやり方に手を入れないと動かない部分。ここを分けておかないと、直したのに変わらない、という結果になります。

そして、コンセプトから作り直す判断になる場合があります。事業が変わった、扱うものが変わった、客層が変わった。そのときの進め方はリブランディングとは。意味・進め方・費用・判断のタイミングにまとめました。

直す前に、いま何が伝わっているかを持っておく必要があります。それがないまま作り直すと、直ったのかどうかが分かりません。

内側からは、古く見える

イメージが付いているということは、変えると失われるものがあるということです。

長く使ってきた要素ほど、内側の人間には古びて見えます。毎日見ているので、そうなります。外から見れば、それは古さではなく、その会社を見分ける手がかりになっていることがあります。

この錯覚が、作り直しの入口になります。内側の飽きなのか、外からの要請なのかを切り分けないまま、変える判断が進みます。そこで何が起きるかは、リブランディングが失敗するとき、デザインは悪くないに事例を引いて書きました。

ここでは、イメージの側から書きます。

付いている印象は、資産にも制約にもなります。手がかりとして働いているなら資産で、実態と合わなくなっているなら制約です。同じものが、どちらにもなります。

見分けるには、その要素が相手にとって何の役に立っているかを聞くしかありません。内側から見ても分かりません。古く見えるかどうかは、内側の人しか感じていない可能性があります。

手がかりになるのは、デザインだけではありません。名前、色の使い方、決まった言い回し、いつも出てくる担当者。相手の側では、それらがまとめて一つの目印になっています。どれを変えても影響が出る可能性があるので、変える範囲を決めるときは、外から見た手がかりを先に並べておくほうが安全です。

変えないという判断も選べます。実態と合っていて、手がかりとしても働いているなら、変える理由がありません。作り直す前に、変えないほうがいい部分を先に決めておくと、失うものが減ります。

決められるのは、約束するところまで

ブランドイメージは、決めるものではありません。約束したことが、接点を通って相手に届き、その結果として残ったものです。

自社が持てるのは、何を約束するかと、どの接点でそれを見せるかまでです。その先は、受け取る側の仕事になります。だから、思ったとおりに伝わらないことがあります。ずれること自体は避けられません。

できるのは、ずれの向きを知っておくことと、直す先を自社の側で決めることです。相手の中を直そうとすると、打ち手が見つかりません。自社の側に戻すと、動かせるものが見えてきます。

そして、動かした結果が出るまでには間があります。接点を直した週に聞いても、前の印象が返ってきます。何度か触れたあとに、少しずつ入れ替わる。そういう速さのものだと思っておくと、途中でやめずに済みます。

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