コーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていない

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コーポレートカラーの決め方。色見本で選んだ1色は、まだ決まっていない

コーポレートカラーの決め方を調べると、手順が見つかります。候補の色を集め、会社に合うものを1つ選ぶ。その進め方で、色は選べます。

ただ、選んだ色で名刺を刷ると、画面で見ていた色と違って届くことがあります。サイトの色と、看板の色と、資料の色が、並べると少しずつ違う。その時点で、決めたはずの色が、実はまだ決まっていなかったと分かります。

この記事で書くのは、どこまで決めれば「決めた」と言えるかです。候補を絞るところから、次に作る人が同じ色を出せるところまでを順に書きます。

コーポレートカラーとは

コーポレートカラーは、会社そのものを指す色です。ロゴ、サイト、資料、名刺、看板、制服。会社が外に出るものに同じ色が使われていることで、見た人が「あの会社だ」と分かります。

会社の見え方を揃える決めごとを、VI(ビジュアル・アイデンティティ)と呼びます。色はその一部で、ロゴや書体と並んで置かれます。VI の全体はコーポレートアイデンティティとは。MI・BI・VIと、作れるものと作れないものに書いています。

似た言葉に、ブランドカラーがあります。呼び分けは会社によって違い、同じ意味で使うこともあります。この記事では、会社全体の色をコーポレートカラーと呼び、商品やサービスごとの色をブランドカラーと呼びます。

ブランドカラーの決め方を探して来られた方にも、この記事の手順はそのまま使えます。違うのは、誰を代表する色かです。会社全体を代表するなら、使う場所は会社の外に出るもの全部になります。商品を代表するなら、その商品が出る場所に絞られます。

そしてコーポレートカラーは、1色とは限りません。会社を指す色のほかに、それを支える色や、使わないと決めた色があります。その話は後の章で書きます。

選んだ時点では、まだ決まっていない

色見本から1色を選ぶと、決まったように感じます。ただ、その色は、ある1つの見え方でしかありません。

画面は光で色を出します。印刷はインクで色を出します。光とインクでは、出せる色の範囲が違います。画面では出せる鮮やかさが、インクでは出せないことがあります。画面で選んだ色をそのまま印刷に回すと、近い色にはなっても、同じ色にはならないことがあります。

印刷の中でも、紙が変われば見え方が変わります。表面がつるつるした紙と、ざらついた紙では、同じインクでも沈み方が違います。布に刺繍する、樹脂で成形する、金属に塗る。素材が変われば、また別の見え方になります。看板なら、照明の当たり方でも変わります。

画面同士でも、同じとは限りません。スマートフォンとパソコン、会議室のプロジェクターでは、同じ値の色が違って見えます。画面の色も、手元の1台で見て決めるものではありません。

色見本で選んだ1色は、このうちのどれか1つの見え方です。ほかの場所でどう見えるかは、まだ決まっていません。

決まっている状態とは、作る人が、どこで使っても迷わずに同じ色を出せる状態です。名刺を刷る人も、サイトを作る人も、看板を発注する人も、同じ色を指して「これがうちの色だ」と言える。そこまで決めて、はじめて決まったことになります。

会社の印象が、色だけで決まるわけではありません。ただ、色がずれていると、揃っていないことは伝わります。サイトと名刺と看板が、少しずつ違う色で並んでいる。見た人は理由までは分からなくても、同じ会社のものだという手がかりが弱くなります。

何から絞るかは、先に決まっている

色の候補を減らす手がかりは、色の側にはありません。その会社が誰に向けて何を約束しているか、のほうにあります。約束と合わない色は、見比べる前に外れます。

約束から見え方を導く考え方は、トーンアンドマナーとは。決めるのではなく、約束から翻訳するで書きました。約束そのものが言葉になっていないなら、色より先にブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方の話になります。

色と印象を対応させた一覧は、探せば見つかります。青は誠実、緑は自然、といった形のものです。候補を出す入口としては使えます。ただ、絞る理由にはなりません。同じ一覧を見れば、同じ業種の会社は同じ色にたどり着きます。

約束で候補が絞れたら、次は、その色をどこで使うかで、もう一度絞ります。

使う場所を、色より先に並べる

候補の色を見比べる前に、その色を使う場所を並べます。

画面なら、サイト、資料、SNS。紙なら、名刺、封筒、パンフレット。素材なら、看板、制服、車両、パッケージ、店舗の什器。会社によって、並ぶものは違います。店舗を持たない会社なら店舗の看板は要らず、製品を持たない会社ならパッケージは要りません。

並べると、候補から外れる色が出てきます。

画面では鮮やかに見えても、紙に刷ると沈む色があります。名刺の小さな文字や、SNS のアイコンのように画面の隅に小さく出る場所では、周りの色と見分けにくくなる色があります。白地の上で文字に使うと、明るすぎて読みにくい色があります。

色が使えない場所もあります。白黒で刷る書類、1色で押すスタンプ、紙に凹凸をつけるだけの型押し。そこでは色の手がかりがなくなり、形だけが残ります。色が無い場所でも会社だと分かるかを見ておくと、色に頼りすぎずに済みます。

同じ業種の会社と並んだときに、見分ける手がかりにならない色もあります。色で見分けてもらえるかどうかは、その色が単独でどう見えるかだけでなく、周りに何が並ぶかで変わります。

使う場所を先に並べておくと、候補を見る目が変わります。好きかどうかではなく、その場所で出せるか、その場所で見分けられるか、で見るようになります。好みで選んだ色が、使う場所で出せないと分かってから選び直すより、手戻りが減ります。

使う場所は、いま使っている場所だけでなく、これから使う予定の場所も含めます。この先、店舗を出す予定があるなら、看板の見え方も候補の段階で見ておきます。

使う場所は、依頼する側が一人で並べるものではありません。色を提案する側が、先に聞いておくものです。私たちも、色の相談を受けたときは、まず使う場所を聞いています。

1色では決まらない

会社を指す色が1色決まっても、それだけでは形になりません。

資料を作れば、見出しと本文と表の罫線で、色を使い分けることになります。サイトなら、ボタンやリンクや背景に色が要ります。会社を指す色だけで全部を塗ると、どこが大事なのかが分からなくなります。

そこで、会社を指す色(主色)のほかに、それを支える色(補助色)を決めます。補助色は、主色を引き立てたり、情報を分けたりするために置きます。主色より目立たないことが役割です。

補助色を選ぶときは、主色と並べて見ます。単独で見て良い色でも、主色の隣に置くと、主色より目立つことがあります。そうなると、会社を指す色がどちらなのか分からなくなります。補助色は、主色の隣で控えていられる色から選びます。

そして、使わない色も決めておきます。主色と並べたときに、別の意味に見えてしまう色があります。注意や警告の表示と紛らわしい色、別の会社を思わせる組み合わせになる色。使わない色が決まっていると、作る人が迷ったときの判断が速くなります。使わない色は、候補を並べていく途中で見つかります。主色と並べたときに、約束と逆の印象になる組み合わせがあれば、それが候補です。

組み合わせの決まりも要ります。主色の上に載せてよい文字の色、背景に敷いてよい色。主色の上に白い文字を置いて読めるかは、色を1色だけ見ていても分かりません。組み合わせて見て、はじめて分かります。

ただし、決めすぎると動けなくなります。撮影の小道具やイベントの飾りの色まで指定すると、指定した人が考えていなかった場面で、現場が止まります。決めるのは、組み合わせてよいか、いけないかまで。その線が先に引いてあれば、作る人は迷わずに済みます。細部の使い方は、そのときに作る人に任せます。何を決めて何を決めないかは、ブランドガイドラインとは。何を書き、なぜ使われなくなるのかで書いています。

値を、媒体ごとに書き分ける

色を決めたら、その色を数値で書き残します。数値にしておくと、作る人が変わっても同じ色を指せます。

画面で使う色は、HEX(#から始まる英数字の値)や RGB(赤・緑・青の光の強さ)で指定します。サイトや資料を作る人は、この値を見て色を入れます。

印刷で使う色は、CMYK で指定します。シアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色のインクを、どの割合で重ねるかの値です。もう1つ、特色という指定のしかたがあります。4色の掛け合わせではなく、色見本帳の番号で指定したインクを、その色のために刷ります。

ここで、画面の値を印刷用に変換すれば同じ色になる、と考えると困ることになります。先に書いたとおり、光とインクでは出せる色の範囲が違います。変換すれば近い色にはなりますが、範囲の外にある色は、同じ色にはなりません。

そのため、画面と印刷の両方で使う色を決めるときの選び方は、3つに分かれます。

1つめは、画面と印刷の両方で出せる色を選ぶことです。候補の段階でこの条件を入れておけば、あとから差に悩むことが減ります。

2つめは、印刷では特色で刷ることです。4色の掛け合わせでは出せない色でも、特色なら近づけられることがあります。ただし、その色のためのインクを別に用意するので、費用がかかります。頼む印刷の種類によっては、特色を扱えないこともあります。

3つめは、画面と印刷で、どこまでの差なら同じ色とみなすかを、先に決めておくことです。完全に同じにはならないと分かったうえで、許せる差の範囲を決める。これを決めておかないと、刷るたびに「違う」「同じ」の話が繰り返されます。

布や樹脂や塗装のように、印刷以外の素材は、その素材の見本で確かめます。画面の値からも、印刷の値からも、素材での見え方は決められません。

こうして決めた値は、1か所にまとめておきます。画面用、印刷用、素材ごとの見本。どれを使えばいいかが1か所で分かれば、作る人は迷いません。まとめる場所は、ガイドラインの中が向いています。

印刷で使うと分かった時点で、印刷用の値を用意して渡すのは、色を提案する側の仕事です。

誰が、どこで確かめるか

値が決まっても、それで色が揃うとは限りません。刷ったもの、作ったものが、決めた色になっているかを、誰かが確かめる必要があります。

確かめる人によって、どこまでを同じ色とみなすかの基準が違います。会社の担当者、デザイナー、印刷会社。それぞれに見ている基準があります。前の章で書いた「許せる差」を決めておくのは、この基準を揃えるためです。

印刷物なら、刷る前に試し刷りで確かめます。色校正と呼ばれる工程です。本番に近い条件で刷ったものを見て、決めた色になっているかを見ます。色校正には、本番と同じ印刷機で刷るものと、別の出力機で簡易に出すものがあり、どちらを選ぶかで確かめられる近さが変わります。私たちも、刷る前には色校正で色を確かめています。画面で見ていた色と比べるのではなく、決めた値と見本に対して合っているかを見ます。

刷り直すときは、前に刷ったものと並べることも役に立ちます。1回ずつは許せる差の中でも、刷るたびに同じ向きへずれていくと、何度か刷るうちに別の色に近づいていきます。

看板や制服のように、刷り直しがきかないものは、実物の見本で確かめます。小さな見本でも、素材と色が本番と同じなら、判断の材料になります。

社内に、「これはうちの色と違う」と言える人がいることも要ります。作る人が毎回違っても、確かめる人が同じなら、ずれは早く見つかります。確かめる人がいないと、少しずつ違う色が、それぞれの場所で正しいものとして使われていきます。そうなってから揃え直すのは、最初に揃えるより手間がかかります。画面と印刷で差が出やすい色なら、色を提案する側が、刷る前・発注する前にそう伝えます。伝えてあれば、確かめる人が何を見ればいいか分かります。

決めたとは、次の人が同じ色を出せること

コーポレートカラーを決めるというのは、色見本から1色を選ぶことではありません。次に作る人が、どこで使っても同じ色を出せる状態にすることです。

約束から候補を絞り、使う場所で絞り、主色と補助色と使わない色を決める。画面と印刷の値を書き分け、どこまでの差を許すかを決め、誰が確かめるかを決める。

ここまで決まっていれば、作る人が変わっても、媒体が変わっても、同じ色が出てきます。1色を選んだ時点は、その出発点です。

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