商品ブランディングとは。共通にするものと、分けるものを決める
商品のブランディングで決めるのは、その商品の中身だけではありません。ほかの商品や会社と、どこを共通にして、どこを分けるかまでが、決める範囲に入ります。
見た目を決めるのは、要る作業です。色も、形も、名前も、いつかは決めます。ただ、その前に揃えておくものがあります。揃っていないと、色や形を選ぶときの基準が出てきません。
そして商品は、1つで終わるとは限りません。1つ目がうまくいけば、2つ目を出します。共通にするものを決めていないと、増えたところで社内の判断が揃わなくなります。
この記事で書くのは、その決め方です。何を共通にして、何を分けるか。決めた結果をどう残すか。そして、決まっていないまま進めると何が起きるか。
商品ブランディングとは何か
商品ブランディングとは、その商品が誰のどの場面で選ばれるかを決めて、それが伝わる形にすることです。決めるのは価値の中身で、形にするのは名前や見た目になります。
会社のブランディングとは、決める対象が違います。会社のほうは「何をしている会社か」を決めます。商品のほうは「この商品は何か」を決めます。同じ会社でも、商品ごとに答えが変わります。
小さい会社では、この二つが重なることがあります。商品が1つで、その商品で知られているなら、会社の説明と商品の説明は同じで足ります。分ける必要が出てくるのは、商品が増えてからです。
重なっているうちは、どちらの言葉で説明しても通じます。ただ、2つ目を出した時点で、会社の説明が片方の商品に寄っていることに気づきます。会社の紹介文が1つ目の商品の話で埋まっている、という形です。
販促と混ざりやすいところでもあります。値引き、キャンペーン、売り場での見せ方。どれも売るための工夫ですが、決めているのは売り方であって、選ばれる理由ではありません。選ばれる理由が決まっていない状態で売り方だけを変えると、その施策をやめた時点で元に戻ります。
会社ごと見直す話は、企業ブランディングとは。何本の仕事に分かれ、どこから手をつけるかに書いています。この記事で扱うのは、商品の側です。
商品が1つか、複数か

はじめに確かめるのは、いま扱っている商品が1つか、複数かです。ここで決めることが変わります。
商品が1つなら、会社の話と商品の話を分ける必要はありません。会社名で覚えてもらっても、商品名で覚えてもらっても、指しているものは同じです。決めることは少なく、迷う場面も少なくなります。
2つ以上あると、決めることが増えます。それぞれの商品に別々の顔を持たせるのか、同じ顔で揃えるのか。この判断が入るためです。揃えれば作る手間は減りますが、商品ごとの違いは伝わりにくくなります。分ければ違いは出ますが、そのつど作り直しになります。
商品が複数あっても、決めることが増えない場合もあります。売る相手が同じで、使われる場面も同じなら、商品の違いは中身の違いだけになります。容量の違い、味の違い、色の違い。この場合は同じ顔で並べるのが自然で、迷う場面は出てきません。
決めることが増えるのは、相手か場面が変わるときです。同じ会社が、業務用と家庭用の両方を出す。あるいは、既存の商品とは別の売り場に置く商品を出す。このとき、同じ顔のままでよいのかという問いが立ちます。
いま1つでも、増える見込みがあるなら、決めておく価値はあります。1つのうちに決めておくほうが、決める材料が少なくて済むからです。商品が3つある状態で「どこを揃えるか」を決めようとすると、すでに作ったものが3つあるので、そのどれに合わせるかという話から始まります。
扱っている商品を、相手と場面で並べてみると分かります。同じ相手に、同じ場面で使われるものは、ひとまとまりです。相手か場面が変わるところに線が引かれます。線が何本引けるかが、決めることの量になります。
この記事の以降は、複数ある場合、または増える見込みがある場合を前提にします。1つで終わる商品なら、その商品の価値を決めるところに集中して構いません。
共通にするものと、分けるもの

複数の商品を扱うとき、決めるのは3つの層です。名前、見た目、約束。この3つは、それぞれ独立して決められます。
業界に定まった分け方があるわけではありません。私たちは、作るときに手が分かれる単位で切っています。
| 層 | 共通にすると | 分けると |
|---|---|---|
| 名前 | 会社名や共通の冠がつく | 商品ごとに独立した名前になる |
| 見た目 | 色・書体・型が揃う | 商品ごとに世界観が変わる |
| 約束 | 会社として保証することが乗る | その商品だけの価値で立つ |
名前を共通にすると、新しい商品を出したときに、既に知っている人が気づきやすくなります。会社名を冠する形が分かりやすい例です。分けると、その商品だけで勝負することになります。前の商品の印象を引きずらない代わりに、ゼロから知ってもらう必要が出ます。
見た目を共通にすると、棚に並んだときに同じ会社のものだと分かります。作る手間も減ります。共通にするのは全部ではなく、色だけ、書体だけ、枠の形だけ、という決め方もできます。どこか一つ揃っていれば、同じ会社のものとして見えます。
約束を共通にするというのは、会社として保証していることを、どの商品にも乗せるという意味です。丁寧に作る、素材を選ぶ、といったことがそれにあたります。商品ごとの価値は、その上に乗ります。
3つのうち、見落とされやすいのは約束の層です。名前と見た目は決めないと作れないので、必ず誰かが決めます。約束は、決めなくても商品は出せます。決めないまま進むと、商品ごとに違うことを言う状態になり、あとから揃えるのが難しくなります。
3つは組み合わせられます。名前は分けて、見た目は揃える。あるいは名前は揃えて、見た目は商品ごとに変える。どれが正しいという話ではなく、何を優先するかで決まります。
決めるときに見るのは、次の商品を出す間隔です。短い間隔で出していくなら、共通にする層を増やすほうが回ります。1つの商品を長く売るなら、分けても手間は増えません。
そして、この3層のどれを共通にするかを聞かないまま見た目から作り始めるのは、引き受けた側の順番の問題です。色の候補を出す前に、揃えるものが決まっているかを確かめるところまでが、最初にやる仕事です。
増えると、基準が言えなくなる

決めたことを書き残しておかないと、商品が増えたところで判断が揃わなくなります。理由は、覚えている人がいなくなるからです。
1つ目を作るときは、決めた人がその場にいます。なぜこの色にしたのか、なぜこの名前にしたのかを、本人が説明できます。書き残していなくても困りません。
2つ目までは、1つ目を見ながら作れます。並べて比べれば、揃っているかどうかは目で分かります。決めた人が別の仕事をしていても、現物があるので追いつけます。
その次から変わります。担当が替わる、時間が空く、外に頼む相手が変わる。そのとき、現物は残っていても、なぜそうしたのかは残っていません。揃えるべきものと、変えてよいものの区別がつかなくなります。
区別がつかないまま進めると、その場の判断で決まります。新しい商品だから新しい見た目にしよう、という判断は、それ自体は自然です。ただ、それが続くと、棚に並んだときに同じ会社のものに見えなくなります。
防ぎ方は、決めたことを短く書いておくことです。長い文書は要りません。揃えるものはどれで、変えてよいものはどれか。この2行があれば、次に作る人が判断できます。
もう1行足すなら、なぜそう決めたかです。理由が書いてあると、事情が変わったときに見直せます。理由がないと、書いてあること自体が守るべき決まりになり、合わなくなっても動かせなくなります。
書く場所は、どこでも構いません。前の商品のデータと一緒に置いておけば、次に作る人が見ます。別の場所にきれいにまとめると、見に行かれません。
会社の名前を前に出すか
商品に会社の名前を付けるかどうかは、3層のうち名前の話です。ここは事業の形で決まります。
会社の名前を前に出すと、会社の信用がそのまま商品に乗ります。取引先が知っている会社なら、新しい商品も受け取ってもらいやすくなります。営業の場面でも、説明が短く済みます。
同時に、会社の評判も乗ります。ある商品で問題が起きたとき、会社名がついている商品には影響が及びます。扱う商品の種類が離れているほど、この影響は読みにくくなります。
逆の向きもあります。商品が知られると、会社が知られます。会社名を出していれば、その商品で覚えた人が、次の商品も同じ会社のものとして見ます。採用の場面でも、商品を知っている人が応募してくるようになります。
商品を独立させると、その商品だけで判断されます。会社が知られていない段階では、独立させても差は出ません。知られている会社ほど、独立させる意味が出てきます。
中小企業では、会社の名前を出す形のほうが手数は少なくなります。作るものが減り、伝える先も一つで済むためです。ただ、扱う商品が離れている場合は別です。食品と工業製品を同じ名前で出すと、どちらの説明も曖昧になります。
中間の形もあります。商品の名前を前に出しつつ、会社名を小さく併記する。棚では商品として見えて、手に取ると作り手が分かります。どちらかを選ばなければならない話ではありません。
決め方としては、その商品を買う人が、会社の名前を知っているかどうかを見ます。知っているなら乗せる意味があります。知らないなら、会社名は情報として増えるだけです。
知っているかどうかは、聞けば分かります。既存の取引先に、うちの会社名を聞いたことがあるかを確かめる。答えが割れるなら、まだ乗せる段階ではありません。
見た目から入ると選べない

色や形を決める場面では、選ぶ基準が要ります。基準がないと、その場にいる人の好みで決まります。
基準は、これまでの章で決めたものから出てきます。共通にすると決めた層があるなら、そこは動かせません。分けると決めた層は、その商品だけで考えられます。決まっていれば、案を見たときに「揃えるはずのものが揃っているか」で判断できます。
決まっていない状態で案を見ると、判断の材料は見た目の印象だけになります。良いか悪いかで話すことになり、決められる立場の人の意見で決まります。決まったこと自体は問題ありませんが、その決め方だと次の商品でも同じことが起きます。
案を見る手順は決めておきます。まず、既存の商品と並べます。次に、揃えるはずの層が揃っているかを見ます。そのうえで、分けると決めた層が、この商品らしくなっているかを見ます。順番を先に決めておくと、好みの話は最後に来ます。
その商品が何を約束するかの決め方は、ブランドコンセプトとは。作り方と、機能しているかの見分け方に書いています。約束が言葉になっていれば、見た目の案をそこに当てられます。
すでに売っている商品を作り直す場合は、注意が要ります。いま買っている人は、色と形で棚から見つけています。揃えるために見た目を変えると、その手がかりが消えることがあります。この話はパッケージを変えたら売れなくなる。その手前で、何が起きているのかに書いています。共通化を進めるときに、既存商品をどこまで触るかは別に判断してください。
どこまでを誰に頼むか
商品が複数あると、頼み方も変わります。1つずつ頼むか、まとめて頼むかで、出てくるものが違います。
1つずつ頼むと、その商品に集中できます。ただ、共通にすると決めた部分は、頼むたびに伝え直すことになります。伝え漏れると揃いません。相手が変わればなおさらです。
伝え直す手間は、回数分かかります。1つ目で決めたことを2つ目でも説明し、3つ目でも説明する。説明する側が飽きた時点で、省略が始まります。
まとめて頼むと、共通の部分は一度で決まります。そのかわり、1つ目が遅れると全部が止まります。発売の時期がばらばらな商品を無理にまとめると、待つ時間が生まれます。
間を取る形もあります。共通にすると決めた部分だけを先に決めて、そのあと商品ごとに分けて頼む。共通部分は一度きりの作業なので、まとめる意味があります。商品ごとの部分は、発売の時期に合わせて動かせます。
ただ、この形は依頼する側からは出てきにくいものです。商品ごとの依頼として続けるほうが、頼む側には分かりやすく、引き受ける側も説明が要りません。その形のまま進むと、共通の部分は商品ごとに作り直されます。先に分けて決めましょう、と言い出すところが、引き受けた側の役割になります。
頼む相手が替わる場面も出てきます。そのときに渡すのは、前に作ったものではなく、決めたことのほうです。現物だけを渡すと、相手はそこから決まりを推測することになります。推測は外れることがあり、外れたまま作られたものは、並べてはじめて分かります。
どこまでを頼めるかは、相手によって違います。範囲の決め方はパッケージデザイン会社の選び方。依頼できる範囲と、決めておく条件に書いています。複数商品の場合も、範囲の考え方は同じです。
商品は1つでは終わらない
商品のブランディングは、その商品だけの作業ではありません。ほかの商品や会社との関係まで含めて決めることになります。
決めるのは3つの層です。名前、見た目、約束。それぞれについて、共通にするか分けるかを選びます。選び方に正解はなく、次の商品を出す間隔と、会社の名前が知られているかどうかで決まります。
そして、決めたことは短く書き残します。揃えるものはどれで、変えてよいものはどれか。書いていないものは、担当が替わった時点で失われます。
いま商品が1つでも、増える見込みがあるなら、決める材料が少ないうちに決めておくほうが早く済みます。決めるのは短い2行と、その理由だけです。