ブランディング会社の選び方。4つの型と、自社に必要な型の見分け方
まとめ記事を読んでも決められない理由
ブランディング会社とは、企業やブランドが「何者で、誰に何を約束するか」を決め、伝わる形にする会社です。ただし、どこまでをやるかは会社によって大きく違います。まとめ記事を読んでも決められないのは、その違いが書かれていないからです。
「ブランディング会社 おすすめ」で検索すると、何十社も並べた記事が出てきます。どれにも実績と得意分野が書かれています。候補を集めるには、あれがいちばん早い方法です。
ただ、集まった候補から選ぶ段になると、書かれている情報では足りません。
理由ははっきりしています。実績は、その会社が過去に何をしたかであって、自社に同じことが起きるとは限らないからです。得意分野も、粒度がばらばらで比べようがありません。
決め手になるのは、その会社がどの型かです。この記事では、ブランディング会社を4つの型に分け、自社にどれが必要かを見分ける方法をお伝えします。
ブランディング会社とは何をする会社か

やっているのは、決めることと、作ることです。この2つのどちらを担当するかで、会社は分かれます。
決めることとは、その会社が何者で、誰に何を約束するのかを定める作業です。事業の中身、顧客、競合、社内の実感。それらを調べて、言葉にします。
作ることとは、決めたものを目に見える形にする作業です。名前、ロゴ、色、写真、サイト、資料、空間、映像。顧客が実際に触れる部分をつくります。
ブランディング会社と呼ばれる会社は、この2つのどこを担当するかが違います。両方やる会社もあれば、片方だけの会社もあります。片方だけの会社が劣っているわけではありません。担当する範囲が違うだけです。
「ロゴを作る会社」と理解されていることも多いのですが、ロゴは作ることの一部にすぎません。決めることが済んでいなければ、何を表すかが定まらないままロゴが作られることになります。
まとめ記事にこの違いが書かれないのは、どの会社も「ブランディング」という同じ言葉を使うからです。看板は同じでも、中身は違います。
ここから先は、この2つの分担のしかたで、会社を4つに分けていきます。
会社には4つの型があります

分け方は単純です。決めることをやるか、作ることをやるか。私たちは、その組み合わせで4つに分けて考えています。
業界に定まった分類があるわけではありません。ただ、相談を受けるときにこの4つで見ると、話が早く進みます。
| 型 | してくれること | 向いている状況 | 起きやすい問題 |
|---|---|---|---|
| 戦略コンサル型 | 調査・戦略・言語化 | 作る体制が既にある | 作る段で、もう一社が要る |
| 制作会社型 | デザイン・制作 | 作るものが決まっている | 決める工程が抜ける |
| 広告代理店型 | 露出・キャンペーン | 認知を短期で取りたい | 中身より露出が先行する |
| 一体型 | 決める工程から実物まで | 両方が必要 | 規模の大きい案件は不向き |
戦略コンサル型
調査と戦略の立案、それを言葉にするところまでを担当します。作ることは含みません。
向いているのは、作る体制が社内か既存のパートナーに既にある場合です。決める工程だけを買えばいいので、すでに持っているものにお金を払わずに済みます。
具体的には、社内にデザイナーがいる。長く付き合っている制作会社がある。撮影や印刷の手配が自社で回っている。こうした状態なら、足りないのは決めることだけです。
M&Aや事業統合のあとで複数の会社の方針を一つにまとめる必要がある、取締役会を通す資料としての強度が要る、といった場面でも選ばれます。社内の人間が言っても通らないことが、第三者の調査と論理でなら通る。そういう場面は実際にあります。
ただし、構造としてこうなります。決める工程だけを買った場合、作る段でもう一社が必要になります。その受け渡しがうまくいくかどうかは、別の問題として残ります。
制作会社型
デザインと制作を担当します。決めることは、基本的に発注側が持っている前提です。
向いているのは、作るものが具体的に決まっている状況です。ガイドラインがすでにあり、それに沿って展開したい。サイトを作り直したい。写真を撮り直したい。目的と要件がはっきりしている場合です。
発注側に決める力があるなら、この型がいちばん速く、費用も抑えられます。決める工程を外に出さないぶん、そこにかかる時間と費用が丸ごと不要になるからです。
起きやすい問題は、決める工程が抜けることです。方針が決まらないまま依頼すると、判断の基準がないので、最後は誰かの好みで決まります。
広告代理店型
露出とキャンペーンを担当します。媒体の設計と、そこに載せるものをつくります。
向いているのは、短期間で認知を取りたい状況です。新商品の発売、周年、大型の催事。期限が外から決まっていて、それまでに知られる必要がある場合です。
媒体を持っている、あるいは媒体との関係を持っていることが、この型の本質です。同じ制作物でも、どこに、いつ、どれだけ出すかで結果は変わります。その設計が仕事の中心にあります。
起きやすい問題は、中身より露出が先行することです。知られたけれど、知られたあとの中身が追いついていない。期待だけが上がって、落差が生まれます。
一体型
決めることから作ることまでを、同じ体制で担当します。私たちはこの型です。
向いているのは、決めることと作ることの両方が必要な状況です。方針も定まっていないし、作る体制も社内にない。この場合、あいだに会社を挟むほど、決めたことが実物に届くまでの距離が延びます。
起きやすい問題は、規模の大きい案件に向かないことです。同じ体制で通す以上、抱えられる量に上限があります。全国規模の展開や、同時並行で何十本も動く案件では、分業のほうが速い場面があります。
私たちが他の型をすすめるとき
一体型がいちばん合う、とは限りません。次の3つに当てはまる場合は、他の型のほうが速く進みます。ご相談をいただいたときも、そう判断すればそうお伝えします。
作るものが完全に決まっていて、安く早く作りたい場合。決める工程が要らないなら、そのぶんの時間と費用は不要です。制作会社型のほうが速く済みます。
短期の露出量そのものが目的の場合。中身より到達数が先に来るなら、広告代理店型の領域です。
全国多拠点や、常時大人数の体制が要る案件。私たちは少人数の中核に、案件ごとに専門家を組む形で動いています。人数を張り続ける前提の案件には、体制が合いません。
自社にどの型が必要かの見分け方

どの型が要るかは、いま社内に何があるかで決まります。次の4つの問いで絞れます。
1. 自社が何屋かを、一文で言えるか
言えないなら、決めることが必要です。戦略コンサル型か一体型に絞られます。
言えるなら、決めることは済んでいます。制作会社型か広告代理店型を考えてください。ここで言う「言えるか」は、社長が言えるかではありません。社員が同じことを言えるかです。人によって違う説明が出るなら、まだ決まっていません。
2. 作るものが具体的に決まっているか
何を、いくつ作るのかが決まっているなら、制作会社型で足ります。
決まっていないなら、その前の工程が要ります。「サイトを作りたい」は要望であって、決定ではありません。誰に何を伝えるサイトなのかが決まって、初めて要件になります。
目安として、要件を箇条書きにできるかどうかを試してみてください。書けるなら決まっています。書こうとして手が止まるなら、その手前が残っています。
3. 期限が外から決まっているか
周年や上場、大型の催事のように、動かせない期限が外にある場合は、広告代理店型が向きます。その期限に向けて露出を設計する仕事だからです。
期限が自社の都合で決まっているなら、急ぐ理由を確かめたほうがいい場面もあります。もっとも、その期限が動かせるものかどうかを最初に確かめるのは、引き受けた側の仕事です。
4. 作る人が社内にいるか
これが最後の分岐です。いるなら戦略コンサル型で足ります。いないなら一体型を検討してください。
複数当てはまるときは、作る体制で決める
私たちが相談を受けるときも、複数の型に当てはまるほうが普通です。割り切れないから探しているのであって、それが普通です。
その場合に効く軸は一つです。作る体制が社内にあるかどうか。
決めることが必要な点は、戦略コンサル型と一体型で共通しています。差がつくのは作る側です。社内か既存のパートナーで作れるなら、決める工程だけを買えば足ります。そこも含めて任せたいなら一体型。この一点で分かれます。
もう一つ、判断を助ける見方があります。いま、どの工程で止まっているかを見ることです。何度も会議をして決まらないなら、決めることが難所です。決まっているのに形にならないなら、作ることが難所です。止まっている場所が、必要な型を教えてくれます。
型を間違えると、何が起きるか
型が合っていないと、仕事の質とは無関係のところで噛み合わなくなります。
戦略コンサル型に、作ることを期待した場合。方針はまとまり、資料も出ます。しかし顧客の目に触れる形にはなりません。決まったことが、いつまでも実物にならないという状態が起こります。
制作会社型に、決めることを期待した場合。きれいなものは出てきます。ただし何を基準に良し悪しを判断するのかが決まっていないので、最後は会議室にいる誰かの好みで決まります。
広告代理店型に、中身を期待した場合。露出は取れます。届いた人が来てみたら中身が変わっていなかった、という結果になりやすい。認知が先に伸びるぶん、落差が目立ちます。
一体型に、大規模な展開を期待した場合。同じ体制で通す設計なので、量が増えると進行が詰まります。速さが必要な局面では、分業に切り替えたほうが早く終わります。
噛み合っていないことは、途中で気づけます。打ち合わせで出てくる話題が、こちらの関心とずれ続けるときです。こちらは決めたいのに制作の話ばかり進む。あるいは逆に、作りたいのに調査の話が続く。その違和感は、型のずれから来ています。
共通しているのは、どの場合も相手の仕事の質が問題になっていないことです。戦略コンサル型が資料しか出さないのは、そういう契約だからです。制作会社型が決めてくれないのも同じです。噛み合っていないのは期待と範囲であって、能力ではありません。
だからこそ、契約の前に型を確かめる意味があります。型を間違えたことが原因で起きた失敗は、外からはデザインの失敗に見えます。そうではないことを、実際の事例で扱った記事があります(リブランディングが失敗するとき、デザインは悪くない/パッケージを変えたら売れなくなる)。
発注前に必ず聞くべきこと

型の見当がついたら、候補の会社に確かめてください。なお、以下はいずれも、聞かれる前に示すのが本来は受注側の仕事です。そこも含めて、相手の姿勢を見る材料になります。
1. どこまでを自社でやるか
一社で完結するのか、制作や撮影は別の会社に出すのか。悪いことではありませんが、誰が何に責任を持つのかは変わります。
一社で完結する体制が優れているとは限りません。専門性の高い工程を外に出す判断は妥当です。確かめたいのは、外に出したときに窓口が一つに保たれるかどうかです。
これは、聞かれてから答えるのではなく、提案の時点で体制図として出しておくべきものです。
2. 誰が担当し、どれだけ入るか
提案に出てきた人が、実際に手を動かすとは限りません。担当者と、関わる時間の見込みを確かめてください。
進行中に体制が変わることもあります。変わったときに黙って差し替えないのは、受注側の最低限の責任です。
3. 決める工程にどれだけ時間を取るか
作る期間だけが書かれた計画は、決める工程が抜けているか、極端に短く見積もられています。
決める工程の長さは、案件によって大きく変わります。期間の目安を聞くより、何が終われば次に進むのかという条件を聞くほうが、実務では役に立ちます。
もっとも、その条件を説明せずに短い計画を出すのは、出した側の問題です。
4. 制作物の権利はどう扱われるか
作ったものを、後から自社で使えるのか。ロゴやイラスト、写真は、扱いが分かれることがあります。
契約前に書面で示すのは受注側の役割です。聞かれるまで触れないのは不親切です。
5. 納品後の運用はどうなるか
作って終わりなのか、使い方の共有まで含むのか。ガイドラインの有無、更新のしかた、相談窓口。
運用まで含めるかどうかで、体制も費用も変わります。含めない選択も普通にあります。ただし含めないなら、誰が引き取るのかを発注側で決めておく必要があります。
ここを設計に入れて提案するのは、本来は引き受けた側の仕事です。
依頼する側が用意しておくもの
揃っていれば話が速く進むものです。ただし、揃っていないことを理由に進行を止めるのは受注側の怠慢です。ない前提で設計するのが引き受けた側の仕事なので、そこは気にしないでください。
現状の資料。既存のガイドライン、過去の制作物、会社案内。ないなら「ない」で構いません。むしろ、過去に作ったきり使われていないものがあれば、そちらのほうが手がかりになります。使われなかった理由に、その会社の実際が出るからです。
決裁の経路と、最終判断者。途中で判断者が増えると、決まったことが戻ります。ここだけは先に確認しておくと、あとが変わります。
期限と、動かせない予定。展示会、決算、周年。逆算の起点になります。動かせるものと動かせないものを分けておくと、優先順位の相談が具体的になります。
社内にある反対意見。これがいちばん役に立ちます。反対の理由には、外から見えない事情が入っていることが多いためです。隠さずに出してもらえると、後で覆るリスクが減ります。
会社を選ぶ前に、型を決める
会社を探し始めてから、どの型が要るかを考える。その順番でも進みますが、逆にすると迷いが減ります。会社を比べる前に、自社がどの型を必要としているかを決めてください。型が決まれば、候補は自然に絞れます。
私たちは一体型ですが、一体型が常に正しいわけではありません。決めることだけが難所で、作る体制がすでにあるなら、戦略コンサル型のほうが速く、無駄がありません。規模が大きければ、分業のほうが確実です。
自社に必要なのがどの型かは、ここまでの4つの問いで見当がつくはずです。そのうえで会社を探してください。
それでも判断がつかないなら、候補の会社に「うちはどの型に見えますか」と聞いてみてください。
即答でなくてかまいません。むしろ「何を聞けば範囲が決まりますか」と返してくる会社のほうが、実際に範囲を決めた経験があります。範囲を決めるには、相手の事情を聞く必要があるからです。詰まるというのは、質問の意味が分かっていない状態を指します。
もっとも、聞かれる前に自分の型を説明するのが本来の筋です。