なぜ私たちは、ブランディングも空間も映像も分けないのか
10個並んだスキルは、たいてい誤解される
INTERPLAYのサイトには、10個のスキルが並んでいます。
ブランド立ち上げ、マーケティング、商品開発、Webサイト、グラフィック、コンテンツ、SNS、空間デザイン、映像制作、撮影。
正直に書きます。これを見た人の多くは、「何でも屋なんだな」と思うはずです。
デザインの世界では、領域を絞ることが専門性の証明とされてきました。
ロゴが強い会社、空間が強い会社、映像が強い会社。10個並べるというのは、その常識からすると逆の振る舞いに見えます。
そして私たち自身、この10個を「戦略として掲げている」という意識をあまり持っていません。
気づいたら、そうなっていたというのが実感に近い。
ただ、なぜそうなったのかを言葉にしたことがなかったので、一度書いてみます。
できるからやっているのではなく、分けられなかった
私たちは、10の領域ができるからやっているのではありません。
案件を進めていくと、領域を分けられなくなるからです。
会社の名前はINTERPLAYといいます。
相互作用、掛け合わせという意味です。創業者の草野は、創業の動機をこう語っています。
人々や文化、物事の様々な要素を組み合わせ、新たな価値を創出する場として
会社のビジョンにも、こう書いてあります。
互いの創造性と技術を掛け合わせ、新しい価値を共に作っていく。
つまり「組み合わせること」が先にあって、10の領域はその結果として増えていったものです。
スキルを10個揃えてから横断を始めたのではなく、一つの依頼に応えようとするたびに、必要な領域が一つずつ増えていった。
では、実際の案件で何が起きているのか。具体例を一つ出します。
ある食のイベントで、私たちが設計したものの一覧
レザーブランドMAISON de SABRÉが東京で開いた、招待制の美食インスタレーションを担当しました。限定版の「SABRÉMOJI™ ベジタブルチャーム」に着想を得た企画で、ブランド・クリエイティブ・ディレクターのオマール・サブレ氏、シェフの牧村克也氏との協働です。
依頼としては「空間&セットデザイン」でした。会場をつくる仕事です。
けれど、実際に設計したものを並べるとこうなります。
- 会場のコンセプトとセットデザイン
- サイネージ
- メニューのデザイン
- スタッフのユニフォーム
- フラワーアレンジメント
- 料理のプレーティング・ディレクション
軸にしたのは、4つのチャーム——スナップエンドウ、きのこ、にんじん、チリ——のキャラクターを、テクスチャー・色彩・形という空間の言語に翻訳することでした。
4品のコースが進むにつれて、その世界観が展開していく構成です。

ここで考えてみてください。
この6項目のうち、どれか一つを別の会社に任せたとして、体験は成立するでしょうか。
メニューの紙が、空間の色と合っていなかったら。
ユニフォームだけが別の世界観だったら。
皿の上の余白の取り方が、テーブルの余白と噛み合っていなかったら。
ゲストは、それを「メニューデザインの問題」として認識しません。
ただ「なんとなく散らかっている」と感じるだけです。
体験というのは、要素の合計ではなく、要素のあいだに宿ります。
だから、どこで切っても途切れる。私たちが領域を分けられなかったのは、そういう理由です。
「ロゴだけ作ってください」と言われたとき、私たちが考えること
ここまでは制作の話でした。もう少し手前の話をします。
ご相談の多くは、こういう形で来ます。
「ロゴを作ってください」
「Webサイトをリニューアルしたいんです」
もちろん、それ自体は自然な依頼です。
ただ私たちがいつも思うのは、ロゴもWebサイトも「手段」でしかないということです。
ロゴを作ることが目的の会社は、ひとつもありません。
本当の目的は、事業を成長させることのはずです。
売上を上げる、いい人を採用する、値下げ競争から抜け出す、新しい市場に入る。
ロゴもWebサイトも、そのための投資です。
投資である以上、本来こういう議論が先にあるはずです。
- それを使って、何をしたいのか
- 市場に対して、どういうイメージを持ってほしいのか
- 誰に、何を伝えたいのか
- どういう戦略で認知を獲得していくのか
- そして、どうやって問い合わせや購買まで繋げるのか
正直なところ、この議論をしないまま制作に入ろうとしているケースを、私たちは本当にたくさん見てきました。特定の会社の話ではありません。業種も規模も問わず、驚くほど多い。
その状態で作ると、どうなるか。
きれいなロゴができて、きれいなサイトができて、それで終わります。
数字は動きません。半年後に「作ったけど、何か変わりましたか」と聞かれて、誰も答えられない。
それは制作ではなく、ただの作業です。作業にお金を払ったことになる。投資だったはずなのに。
そして——ここが、冒頭の「10領域」の話に戻ります。
目的から逆算して考えると、必要な手段は案件ごとに変わります。
- そもそも知られていない会社なら、映像とSNSが要る
- 商品の良さが伝わっていないなら、体験できる場所が要る
- 知られてはいるが選ばれていないなら、Webの導線と言葉を直すほうが早い
目的が同じでも、打ち手はまったく違う。
だから手段を固定できない。手段を固定できないから、領域を固定できない。
私たちが10の領域を持っているのは、器用だからではありません。
毎回、目的から設計しているからです。
それでも、この進め方には代償がある
いいことばかり書いても仕方がないので、弱いところも書きます。
まず、時間がかかります。
目的の議論から始めるので、すぐには手が動きません。
もちろん、事情はそれぞれです。「展示会に間に合わせたい」「先に名刺だけ必要」といった状況もあります。
そういうときは、割り切ってその部分だけをお引き受けすることもあります。
ただそのときも、「これは全体のどこに当たるものか」だけは共有させてください。
あとから辻褄を合わせるほうが、結局は高くつくので。
次に、質問が多いと思います。
最初の打ち合わせで、事業の話や数字の話まで聞きます。
正直に言うと、その場で答えが返ってこないことも多いです。
「そこまで考えていなかった」「社内でもまだ決まっていない」。
それはまったく問題ありません。むしろ、言葉になっていないほうが普通だと思っています。
私たちの仕事は、答えを持っている人から答えを引き出すことではありません。
まだ言葉になっていないものを、一緒に言葉にするところから始まります。
そこを飛ばすと結局さきほどの「作業」になってしまうので、ここだけは譲れないところです。
そして、すべての領域で最高峰ではありません。
極めて高度な専門性が求められる部分では、その道のプロフェッショナルと組みます。
私たちが担保しているのは、個々の技術の頂点ではなく、全体を貫く一本の筋のほうです。
だから、私たちが約束できること
整理します。
INTERPLAYがお引き受けしているのは、手段の実行ではなく、目的からの設計です。
「ロゴを作ってください」と言われたら、まずなぜそれが必要なのかから一緒に考えます。
たとえば、ロゴを作る前にブランドガイドラインを先に整えたほうがいい、という結論になることがあります。
ロゴは、ブランドの考え方が定まって初めて「これでいい」と判断できるものだからです。
土台がないままロゴだけ先に作ると、あとから全部やり直すことになる。
順番を入れ替えるだけで、結果も、かかる費用も変わります。
そして設計が決まったら、そこから先は領域をまたいでも同じチームが持ちます。
戦略とロゴとサイトと空間と映像のあいだに、翻訳のロスが生まれない。
誰も「それはうちの範囲外です」と言わない。それが、10領域を持っていることの実質的な意味です。
私たちは、いいデザインを作りたいと思っています。
同時に、それが事業の役に立たなければ意味がないとも思っています。この二つは矛盾しません。
むしろ、目的がはっきりしているほうが、デザインは強くなります。
もし今、ロゴやWebサイトやブランディングを検討していて、「で、これを作って何がどうなるんだっけ」という問いが宙に浮いているなら、そこから一緒に考えられます。
お気軽にご相談ください。